西成ホテル探訪・八日目
ホテルのスペースについて
ホテルの部屋でのスペースは大概死んでいる。ほとんど使わない。
ならば、西成スタンダードである「三畳一間」で十分である。というのが、このブログを始めてからの偽らざる気持ち。しかし、今日の宿は狭かった。その半分「一畳半」。果たして、どんな場所だったのか。
「20時までにチェックイン」は絶対ルールではなかった
いつも、昼の仕事を終えてから大阪メトロ堺筋線に乗り、小走りで西成に向かう。午後8時までで、その日の宿泊受付を閉じる宿が多いから。しかし、よくよくブラついてみると、そのスタンダードから外れた宿も多いことに気付いた。選択肢は狭められるし、満室の可能性も高まるけれど、なかには23時あたりまで受け付けてくれる宿もあるようだ。「8時を回ったから、今日は西成泊まれないよ、クッソ!(半笑い)」みたいなことはもう適用されない。ありがたい。残念。
今夜の宿
「ホテル ダイヤモンド」
も、23時半までは受付が空いているらしい。
大学の寮みたいな雰囲気の入り口、目の前にはエレベーターがあり、その隣にはソファと灰皿、ポットが置かれたテーブル。受付には紙コップがあり、自由に使える。
右側に受付がある。
これまでの安宿探訪を振り返れば、玄関入って右手もしくは正面にフロントおよび受付カウンターのある宿ばかりな気がする。これには何か心理的な要素が取り入れられているのだろうか。研究の余地がある。誰か!
長髪にカウチンセーターの女将さんが、
「1100円の部屋ね。じゃあコチラにご記入ください」
おお。一般的な、宿泊者情報を求められた。立派なホテル。今までが不立派と言いたいわけではありません、カジュアル、そう言いたい。
どうやら、「旅館業法・住宅宿泊事業法」の定めで、宿泊施設は宿泊者名簿を作成・保管する義務があり、泊まる側としては、氏名や住所、職業、パスポートの情報などを虚偽なく記入する必要がある。
虚偽記載ムニャムニャみたいなところは大変グレーなゾーンなので、触れずにおきましょう。パチンコだって、風俗だって、法に抜けは付き物です。
カギはデフォルトで、とくに説明されません。当たり前のように保証金1000円をプラスして支払う。翌朝、受付は5時から開いているとのこと。もらいっぱくれは無いでしょう。
「コレ、読んでおいてください」
部屋までの誘導や、設備の紹介はパウチされた「注意事項」のペライチで済まされます。英語表記もあったから、これで全ての宿泊客に対応しているみたい。ザっと流し読みしていたら、女将さんが、梅酒を漬けるビンみたいなのを出して、そのなかに束になった千円札が詰め込まれていて、驚いた。
ここの受付は、やりとりする間口も狭く、左側には鉄格子(アルミ格子かな)の頑強な扉、その上には監視カメラがありセキュリティが厚い。強盗するのはだいぶ難しそうです。女将さんがショットガンを持っているかもしれない。やめましょう。どことなく女将さんがダニー・トレホに似ている気もするし。
奇数階のみ停まります
エレベーターは停まる階が限定されている。「ホテル ダイヤモンド」は8階建て(あとで最上階にも行ってみたが、明らかに扉が1100円の部屋とは違うので、料金体系の異なるフロアかも)「728」に向かいます。奇数階で良かったね。
エレベーター内には「モバイルルーター貸出」の貼り紙。日あたり300円なら安いかも知れない。
7階に到着すると、1階とは違う「ドヤ感」に満ち満ちている。なにせ、部屋が小さいから、隣室との間隔が狭い。ドア前に下足が置かれているのも、お馴染みの光景。作業靴や廊下にはヘルメットなども散見される。
多分、観光客だと、この九龍城的雰囲気に「ワオ!」となるか「オゲー!」となるかだと思うが、僕の場合は「無」です。
住人さんっぽい、こなれた感のある玄関先を形作っている部屋に挟まれた今夜の寝ぐら「728」。
1.5畳の衝撃
スマホのワイドレンズで撮ると広く見える。しかし、実際に入室してみると圧迫感が凄い。左の壁にあるマットは横幅一杯なので、それを敷いてから畳まれた布団を重ねていくことになる。
こういうことですね。
一匹だけ南京虫の亡骸を発見したが、おおむね布団はキレイ。マットはきっとスチームアイロンとか、かけてないでしょうから、内部ではいろいろうごめいているかも知れないが、直接肌にふれないなら良し!
足を股割って一杯に広げれば、ズンズン上まで登って行ける気がします。サスケの種目にあったかも。
1.5畳でも天井までの高さは、190㎝くらいある。立ち上がって、上が詰まるような大柄な外国人などは厳しいかも。コンセントにハンガー、テレビ、ささくれたテレビ台兼テーブル、灰皿。以上、ザッツオール。
窓があるって偉大。これで、外の空気や色を感じられなかったら、やがて狂いだせそうな気がします。
そして、フローリングって偉大。畳と違って、暗い色調のフローリングは七難隠す。汚れも、毛も目立たない。見えないものは無いのと同じ。
女性が普通に居る
1階に降りて、風呂をいただく。たまたま、誰もおらず入浴を終えるまで人と会うことはなかった。備え付けの石鹸はない。持参のビオレUで全身洗う。浴槽に湯が入る曜日は限定されているようだ。
女性用シャワー室のある「ラウンジ」との貼り紙がある部屋には、若い女性がいました。カッコも小綺麗でブランドもののバッグを持っていた。やはり、ドヤというよりホテルよりの宿。
自室に戻ろうとエレベーターを待っていると、入れ替わりに50代くらいの女性が降りてきた。金縁メガネで痩せぎすの上品なひと。そのまま、受付に向かい
「ごめんなさーい!今日こそは、払わないと!と、思って持ってきました」
長期宿泊の住人だろうか。溜めていた支払いをしに来たようだ。彼女はどうしてココにいるんだろう。どういう事情があるんだろう。詮索する権利は僕にはない。
年の瀬のにおいを西成で
この宿も電気スイッチは外にある。どういうことなんだろうか?これには慣れないと思う。
他の階にはドアに「禁煙」と書かれた部屋もある。外から見た感じ、造りは喫煙室と変わらないと思う。
テレビをつけると「FNS歌謡祭」が流れて、東京事変が『群青日和』を演奏していた。椎名林檎がデボラ・ハリーみたいでイカしてた。
このあと、大阪府のコロナ対策赤信号を受けて真っ赤にライティングされた通天閣を見に、新世界まで足をのばした。そこで、出会った2人の男性については、改めて書きます。
マットの弾力のおかげで快眠できた。
着ていた服からほのかにファブリーズ臭がした。
今日も仕事だ。夜は西成だ。
ホテル ダイヤモンド
宿代:¥1100
1.5畳/テレビ/コンセント7口/トイレ共同/風呂・シャワー共同(時間制限)/布団/鍵有(保証金¥1000)/内鍵/喫煙(禁煙室有)/灰皿/一泊OK/夜間外出可/Wi-Fi(ロビーのみ)/モバイルルーター(¥300/日)/ハンガー/ハンガーポール/テーブル/フック/電気スイッチ(廊下)/自販機/翌朝10時まで/エレベーター(奇数階のみ)/漫画/門限無し/女性専用シャワー/ラウンジ/フローリング/監視カメラ多数/ファブリーズ臭/ウォーターサーバー/電気ポット共同/紙コップ
清潔度 ★★★
フロント★★★
サービス★★
価格 ★★★
総合 ★★★
食費
ヤマザキ・ランチパック 112円
バナナカステラ 110円
タバコ・アメリカンスピリット 570円
コカコーラ・爽健美茶 84円
コカコーラ・紅茶花伝 90円
西成に落とした金額
計:2066円