クリスマス気分を西成で高める
2020年12月25日。
メリークリスマスです!
MerryChristmasの「メリー」って、「陽気な・愉快な・楽しい・浮かれた」という意味があるのですね。「ハッピーメリークリスマス!」などと言ってしまうと、「朝の朝刊」みたいな重箱表現になってしまう。来年からは気を付けたい。
クリスマスという日に予定が入ったことのない人生を送ってきたので、今年こそは何か思い出に残るメリーなクリスマスを過ごしたい。
そう考えながら、今日も西成安宿に泊まりました。
コイン式瓦斯焜炉
今晩の寝ぐら「緑風荘」には共同台所があり、「ガス玉」という一枚20円で購入できるコインを投入し、火を点すコイン式ガスコンロが設置されている。
「ガスコンロ」と書くよりも、「瓦斯焜炉」と書く方がしっくりくるたたずまい。
少し、ロイヤルな雰囲気で王族の王冠にも似た風貌。ススだらけですが。
以前にも一度、着火をさせてみる、ことだけは試したがまだ料理をしたことがない。ここは宿の住人や宿泊客たちが、火と戯れ、思い思いの食事を作り、その日の腹を満たすためのアペリティフのお供をこしらえる場。火を使うようになって、人類は文明生活を手に入れた。ドミトリースタイルのゲストハウスならば、ここで恋とか友情が生まれる。のでしょ?
果たしてコイン玉一枚は、何分持つのか?
宿の受付で、宿泊料金を支払う際にコイン玉も購入したのだが、コイン玉一枚あたりの燃焼時間が不明。
「これコイン一枚で何分持ちます?」と受付の女性に聞いたら、
「はっきり、わからないね!5分?ラーメンは作れるから3分?わからないね!」
とハッキリ言われた。わからないのか!
なので、念のため二枚購入。
「ダイソー」で買い出す
西成あいりん地区から、JR新今宮駅の方に向かうと、ドン・キホーテのはす向かいに僕らの味方「ダイソー」がある。
はたして100均にフライパンってあったろうか。
袋麺の焼きそばを、ふた玉いっぺんに作れるようなサイズのフライパンは500円もする。マーブルコートとか要らない。しかも、コレ持って帰るのか。要らない。
最小サイズ14cmのフライパンなら200円。
こんなサイズのモノ買ったことがない。14cmといえば、ナイススティックの半分にも満たない。しかし、このサイズなら持って帰るのもギリ許容範囲。
蓋も必要だ。
鶏肉の内部まで確実に短時間で火を通すためには、密閉するべきだ。しかし、14cm用の蓋などない。あきらめる。
宿に戻ってから、持ち手にくくられたポップみたいなのを見たら「品質を見直しました」とある。200円で得られる安心感。
「スーパー玉出」で買い出す
地下鉄で職場から西成に向かっているときには、「クリスマスケーキ」を作ろうと思っていたのだが、さすがにハードルが高い。安宿の共同台所で、粉こねて生クリームをホイップするのか?何時間かける気か。
「ローストチキン」を焼くか。七面鳥を仕入れるのか?下味とかどうするのか?そもそもガスコンロで作れるのか?何時間かける気か。
という訳で、ただ「鶏肉を焼く」ことにする。
宿から歩いて数分。いつもの「スーパー玉出」で若鶏ムネ肉。
油はどうする?
ごま油が安価だが、ここはオリーブオイル。
味つけはどうする?
塩コショウで十分だ。塩とコショウがいっしょになってるヤツ。
フライパンの蓋がわりになるモノはないか?
アルミホイルにする。フライパンに巻き付ければ上手くいくだろう。
今夜の宿代が1100円なのに、食材や調理器具で1000円近く使ってしまった。バランス!
ただ鶏肉を焼く
トイレや洗面場とガスコンロ設置場所が隣接しているのが西成安宿のスタンダード。
しかし、「緑風荘」は別!これだけでも調理意欲が増す。
電子レンジと調理場があるスペースがあり独立しているので、集中できそうだ。
シンク下にガスメーターがあり、ガス玉の投入口があるので投入物と書かれたコインを投入。
0〜5までの目盛りが刻まれている。
ガス玉を入れると1のところまで針が触れる。おそらく、この針が左回転していき0に達するまでガスが放出されるのだろう。しかし、単位がわからない。もし、1分だったら終わりだな。
ガス栓をひねり、オレンジのレバーを倒すとガス臭が漂いはじめる。
これまでコイン式ガスコンロを設置している宿には、チャッカマン的だったり、マッチだったりが付近に置いてあったので容易にスタートできたのだが、「緑風荘」にゃない!
仕方なく手持ちのライターで着火。火の勢いで右手親指を負傷したので、水にさらして冷却。ヤケドも料理の醍醐味。
14cmフライパンを載せて、オリーブオイルを。
一応、フライパンは洗いました。手持ちのハトムギ洗顔料で洗って、手持ちのポケットティッシュで拭く。水滴を飛ばすために貴重なガスコンロからの火を使うわけにはいかん。
鶏ムネを入れる。
少しはみ出す。けど、肉って焼くと縮みますから。きっとジャストになります。
昔、毎日見ていた『郁恵・井森のお料理BAN!BAN!』で、鶏肉を焼くときには皮目から!と言っていたのを思い出して実行。知識が人を助く。
塩コショウで味をつける。
しかし、デカい塩コショウだ。西成安宿探訪を5年くらい続けないと使いきれない。
アルミホイルで蓋をする。
内部まで効率よく火を届けて欲しい。
ただ鶏肉が焼き上がる
どの程度ほったらかしておくべきなのか、わからないので度々アルミホイルをはがして、焼き色を見てしまう。絶対にキャンプで飯盒炊爨をしくじるタイプである。
メーターの目盛りを確認しつつ、焼き色を見つつ、5分が経過。ガス玉一枚でけっこう持つ。
気付いたら火が消えていた。目盛りが0にはなっていない。目安かな、この目盛りは目安かな。
予熱に期待して、放置。
なんか宿中に匂いが回ってしまった。横の窓を開けて必死に換気。すみません。
焼き上がりです!
ただ焼かれた鶏肉を食らう!メリー
しっかり中まで火が通っていました!
美味しくいただきました!
この言葉を使うと、そう言っといてじつはゴミ箱に放り投げたかのように、この後スタッフが美味しくいただきました感が出てしまいますが、実際美味しかったです。
数週間前まで、西成安宿の空気にやられてこの空間で食事をすることも、あまつさえ眠ることすら出来なかった自分がいまや、肉を焼いて食っている。
みるみる成長している自分を感じます。成長と言わせて欲しい。
余ったガス玉は次の調理で、別の安宿で使います。
多分、どこの宿でも共通。フライパンとか油とか持って歩くのか。また荷物が増えた。
よく外国に行った時に、使いきれなかった現地のコインを持ち帰ることあるますよね。あの感じで財布にガス玉が入っていると、旅の上級者みたい。ぜひ、皆さんも西成観光したら実践してください。