西成ホテル探訪・十五日目
うぃうぃっしゅあめりくりすます。世界中のすべての人が楽しくクリスマスを迎えられることを祈念しながら、今晩も西成。
大阪の繁華街である梅田にも難波にも、キタにもミナミにも、出かけていない。昼の仕事を終えて、いつものように「動物園前」駅で降りただけなので、街場のクリスマス感がわからない。
西成あいりん地区は、いつもの景色。
めんどくさそうな人
今夜は、宿でクリスマス調理もしたいので、なる早で宿を決定したい。
「緑風荘」
は、アパートめいた名称で実際隣接するアパート、コインランドリーとつながったつくり。さっそく、一泊交渉。
「今晩、一泊お願いします!」
「え?あー、大丈夫。105ね。1100円ね」
受付には、中国人とおぼしき40代くらいの女性。後ろには老齢の男性の姿もある。
名前を告げ、当たり前のようにカギはくれない。保証金制度自体がないのか。館内の説明もまったくされない。かなりめんどくさそうに対応される。
1100円の売上では、その程度のホスピタリティしか期待できない。
とは、思わない。これまで、たとえ1000円を切る宿であっても従業員の方の対応が一様に悪いわけではなかった。
西成安宿を評価する基準は、清潔さや設備など多くの要素があるが大きなポイントは「人」。客として扱ってもらえる、丁寧に説明してもらえることはなにより大切だ。ホテルや宿に求められるのは、その誠実さではないか?受付の人の対応しだいで、その夜気持ちよく眠れるかどうかが決まる。この説明のなさでは、僕がドヤ初心者なら困惑しまくっただろう。
まあ、実際は、眠れるかどうか?は、畳と布団のキレイさのコンビネーションなんですけどね。
珍しかったのは、土足で館内に入れること。
これまでの西成安宿は、館内土足厳禁であった。考えればほとんどのホテルは、土足で個室内まで入れる。この地に宿に土足という概念が残っているのは、日本的な旅館文化の名残りなのかも知れない。
思わず、いつものクセで靴を小脇に抱えてしまったが、よく見ればスリッパもない。
「土足のままでいいんですね?」
中国人の女性には完全に無視される。なんかイヤなことあったんかい?負のオーラを振りまきなさんな!
なんらかの匂いに苛まれる
「じゃ、コッチ」
と、女性にうながされ部屋まで案内される。入口から伸びる通路沿い。扉の高さは180cmに満たない。
畳みの色のくすみ方!い草パワーゼロ!
室内の天井はある程度の高さが設けられていて、三畳あるし圧迫感はない。
しかし、この香ばしい匂いはなんだろう。
汗臭さとも、加齢臭とも、アンモニア臭とも違う。その全部をかきまぜて濃縮したような淀みきったヘドロチックな香り。ある程度、この空間に身を置いておけば慣れるのだが、一度トイレなどに立って部屋に戻ると、一瞬「ウッ」となってしまう。まあ、慣れるけど。
ウンコが臭いときには、思い切ってウンコを鼻に詰めると臭くなくなるよー!的な。往年のツービートのネタである。完全に思考がオッサンである。
窓を開けても、すぐ隣の壁。喚起だ空気の入れ替えだ、と言ってもおそらくはこの匂いは消えないだろう。積年こびりついた香り。
地上波のみが写るテレビ、布団、小机、灰皿、ハンガー、ゴミ箱。
最低限の備品。机があるだけ良心的か。
しかし、こんなに所有者を主張するテレビがあっただろうか。あらゆる場所に「緑風荘」。
床の黒ずみがスゴい。
お酢や重曹を用いた自然派の掃除ではもう、おっつかない。畳表ごと変えるべき。
ただ、意外なほどホコリや毛はない。掃除はキチンとされている。
布団もキレイ!動物たちがさまざまにポージングするにぎやかお布団。そして、西成安宿で絶対にやってはイケない「布団の下チェック」も合格。汚く見えるかも知れないけど、掃除してる感はすごくあるんです。
今回は合格したからいいけど、コレやってさらに落ち込むパターンもある。いつだって、己が試される場、それが西成。
汚いが、キレイ。というパラドクス
気になったのは、やたらコンバットやホウ酸団子みたいなゴキブリ対策グッズがスタンバっていたこと。このあたりは、土足宿の弊害かも知れない。しかし、幸いなことに奴らを見かけることはなかった。南京虫系も、いなかった。
畳みの縁がガムテ―プで補修されている。せめて、紙ガムテではなく、布ガムテにして欲しいところではある。
そして、暖房がガンガンに効いている。
壁のつまみも生きていて、夜中も動き続けていた。暑すぎて、切ったくらい。冬にはありがたい、夏場もこれぐらい冷房を効かせてくれるのだろうか。
「写真撮ったでしょ?」
いつものごとく、館内を巡る。
この共同手洗い場を撮ったあと、
受付から女性が飛んできて、
「あなた!写真撮ったでしょ?あなた、105でしょ?なにしてるの?」
と責められる。
「泊まった記録。記録用です」
と返す。
「キロク?何のため?105でしょ?部屋にいなさいよ!ウロウロ禁止!」
「思い出ですよ」
「はー?ま、いいわ。静かにしといてよ」
と去っていった。廊下の真上を見ると、ドーム型の監視カメラ。受付でチェックしているのか。
たまたま、その場に居合わせた仕事帰りらしき男性が、
「こんなとこ写真撮っても、しゃあないやろ(笑)」
とひと言残してエレベーターで消えていった。
という訳で、今回は画像少なめです。シュンとしてしまったので。共用スペースはあんまり撮ってません。
はじめてのガス玉クッキング
「緑風荘」では、コイン式ガスコンロを使って、はじめての調理から食事を体験しました。クリスマスだから鶏肉を焼いた。
詳細は、以下で。
明日に備えて。早めに眠、れなかった夜
土曜日に「どろぼう市」をのぞいたりしていると、平日でなくても日雇いの仕事はありそう、ということがわかってきた。
なので、明日、土曜日は「西成の日雇い仕事」を経験してみる。つもり。
早く寝よう。
と考えて、22時には布団に入った。
ただ、眠れない。
試験の前日に、眠れないパターン。
でも、よく言います。「緊張して眠れなくても、横になっているだけで、休息にはなっていますよ!」みたいな受験生へのアドバイス。
確かに緊張していたんだと思う。
天井を見上げて、ため息をついてしまう。
なんで、こんなことしているんだろう…
部屋の壁には、誰かの手形が残っていた。
はたして、翌朝、無事に起きて西成初仕事ができたのかどうか?
次回を待て!
(結局、2時頃寝ました)
緑風荘
宿代:¥1100
三畳/コンセント4口/トイレ共同/風呂無/布団(キレイな動物園)/鍵無/内鍵/喫煙/灰皿/小机/一泊OK/夜間外出可(0:30まで)/ハンガー/棚/下足で入館/自販機(ジュース)/エレベーター/電子レンジ共同/ガスコンロ共同(コイン式)/TV/カーテン/個別空調/ゴミ箱/なんらかの匂い強め
清潔度 ★★★
フロント★
サービス★★
価格 ★★★
総合 ★★
食費
若鶏ムネ肉 135円
味の素・オリーブオイル 308円
ハチ食品・塩こしょう 171円
コカコーラ・爽健美茶 84円
雑費
フライパン14cm 220円
アルミホイル 75円
ガス玉×2 40円
西成に落とした金額
計:2133円