引き続き、
「女装とは何か?」
というテーマに向かって、現役バリバリの女装さんに、女装さんの聖地・天王寺「通天小町」にて、お話を伺ってまいります。
<第1回はコチラ>
件の
「通天小町」
コチラには、その場所ならではのローカルルールや注意点が存在する。
例えば、今回僕はあゆみさんの導きで、受付の左側の入口から、この「談話室」へ入った。
しかし、右側入口から入店すると、ゲイさん専用(サービスルーム)に入ることになり、女装目当てで訪れた人が「女装に会えないやんけ!」と彷徨う光景がよくあると言う。
また、この「談話室」のほかに、「アネックス談話室」という喫煙可能な部屋に関しては、完全に休憩場所としての機能しかないため、ナンパしても無駄。
一方、この「談話室」のソファが置かれた部分や、上階のVIP棟という喫煙所、談話室、本棚があるゾーンにはナンパ待ち勢が居て、交渉が可能。
難しいな!
しかし、異世界には、それなりのルールがある。
何より外形的には「通天小町」はビデオ試写室であるので、出会いを求めない層にとっては知らぬ存ぜぬでかまわない。
もし、女装さんをチェイスしたいなら、分からないことは、先人やネットに聞こう!
聞くはいっときの恥、キアヌはカンフー映画好きである。
女装とは何か?第2回
1981年は、「ニューハーフ」という言葉が定着した年でもある。
その語源は1980年(1981年説もあり)に桑田佳祐とショーパブ「ベディ」のママとの会話の中で生まれたという説が有力だ。それまで、女装者やゲイの男性は「オカマ」「おねえ」「ゲイボーイ」「シスターボーイ」「ブルーボーイ」などと呼ばれ、しばしば混同されていた。
団鬼六の名作SM小説『花と蛇』(1962年~1975年)にも、春太郎と夏次郎という名のシスターボーイが登場し、「全然、女にゃ興味はなく、野郎の方にだけ興味を…」と言われると「あら、失礼ね。そういうのはゲイボーイ。つまり、オカマよ。私たちはシスターボーイ、女性的男性てわけよ。十分、女性を満足させる能力だってありますわ。人並以上よ」と反論している。実際彼らは物語の中でヒロインたちを犯している。男性を相手にすることもあるので、両刀使いのようだ。
B面とA面
年齢は44です。
だから、カワイイ系の服は全然似合わないんですよ。キレイ系に振っていますね。
とにかくお金がかかるんで、工夫して。今履いてるジーパンとかユニクロですしね。メルカリとかセカンドストリートとか利用して。B面の服はもう、下着しか買ってない(笑)
次は、いつ整形に手を出すか?ですね。
結構やってる人は多いし、ヒゲはだいぶ減らしてますし、脱毛は安いし。あとは、目と目の下のクマ。加齢で落ちてくる部分。ほうれい線も減らしたいけれど、肌を引っ張るのはメチャクチャお金かかるんですよねぇ。
若さを追求すると、B面の方もイイ感じになるので直しておきたいかなぁ。整形は突き詰めていくと、骨切り始めるんで。ガチ勢は日本でやると高いんで韓国に行ってますね。
普段は自営業。一般企業に勤めたこともあります。
月に2回の頻度で、新世界には来ています。
コレ(女装は)遊びですよね。でも、今はコレが一番楽しいですね。月2回でも毎回メッチャ、エネルギーを使ってます。
B面=普段の姿
A面=女装した姿
という区分けになる。
どちらが「本当の自分」なのか?
という観点で見れば、女装=金のかかる趣味、とすればB面の生業が成立しているからこそ、A面を維持できる。という構図が成り立つ。
ただ、あゆみさんにとってのもっとも楽しい時間は、A面の女装時であることは確かなようです。
女になるために「課金」する
今は、ネットがあるので女装に関する情報はたくさんある。
それとお金を出せばいくらでも、メイクの練習とか女装専門のレッスンを受けられるんですよ。レッスン自体は昔からあったみたいですけど。
メイクって本当に積み重ねなので、自分に似合うものを探していく感じになるんですけど、そこをプロの人に教わると過程をすっ飛ばしていけるので、「課金」でなんとかなるんです。
新世界の女装さんは割と年齢層高め。
ミナミとか新宿二丁目とかの20代や10代の若い人はスゴいカワイイ子が多いですよ。そこに行くときは、かなり気合いを入れて。
ウチらとか、もっと上の世代にとっては女装とハッテン行為の距離がかなり近い。今の若い世代はファッションの一環として女装している人も多いんです。ハッテンへの意識がない人もたくさん。
女装はお金がかかるので、学生さんとか若い人はしんどいと思います。
部屋の中で楽しんでいる分には靴も買わなくてもいいですけど、外に出ようと思ったらカバンも絶対いるし。着替え場所とバーが一緒になっているような女装系の呑み屋さんって安くないんです。だから、共同でマンション借りたりする人もいます。家に置いて置けない人はトランクルームを借りたり。
メイクや衣装に使うお金は、もう数えるのやめてます(笑)
女装への目覚め
ーあゆみさんが女装に目覚めたのは?
女物を着てみたいと思ったのは、25歳とかそのくらいかなぁ。
その時はそんなにのめり込まなくって、こんな風に全身真面目に、真面目に(笑)着替えようと思ったのはこの2年くらい。
せっかくやるんだったら、突き詰めた方が楽しいな、と思って「課金」して自分を磨いて。
ー女装して家から出る。のはハードルが高そうですね
それは、高いですよ!
でも一旦、外に出てしまえば慣れですね。とくにこの新世界とか、コロナ前はインバウンドのお客さんもいらっしゃって、紛れてしまう。
意外と「誰も見てない」んですよね。すごくイイ感じに女装している人でも、ウチらはなんとなく気付くんですけど、普通の人って意外と見てないものですよね。ちょっと派手かな、くらいで。
ー「女装かよ!」みたいな感じで絡まれることは?
ありますよ。
道頓堀のひっかけ橋のあたりとか飲み終わって歩くとメチャクチャ、ナンパ多いんですよ。靴が靴なんで走って逃げられないし、結構怖いです。
でも、たまに面白い人もいて、
「お姉さん!お姉さん!」って声かけられて、「いや、お兄さんなんで…」って言ったら、「あ!おネエさんですね!」ってほっぺに手の甲を当てて返されて(笑)
ーその辺の奴らに「オカマだ!」みたいに言われるのは?
仕方ないですね。もともとが男性なのは仕方ないので、どうやって弄っても女性にはなれないので、そこは諦めるしかない。
ー性自認は男性なんですよね?
うん。
ー性対象は?
私、両方なんですよね。
ー男性も好きかも?というのは昔から?
特に男性が、っていう訳ではないです。どっちかって言うと、って言う感じ。
よく芸能人とかのテレビ的なストーリーでは「子どもの時から男が好きで」とかありますけど、いろんな人と話していると、相当幅があります。最近聞いたのは、結婚している男性が性自認が女性の方に振れ始めたらしくって。
ー「目覚める」タイミングっていうのは…
(遮って)目覚める、っていうか何かのきっかけでハッキリ変わるのではなくって、グラデーションみたいな感じなんです。
ーあゆみさんも性対象に男性が入ってきた?グラデーションで?
そうですね。女装し始めてからだと思います。
これまでお付き合いしてきたのは女性だけ。男性とは「付き合わない」です。
女装で付き合うっていうのは難しいんです。純男さんからしたら、女装さんの男の方の顔っていうのは見たくない、見たいとは限らない。
でも、女装さんからしたら、そうでもないかも知れない。
でも、付き合って同棲すれば、両方見えちゃう。
そこに恋愛感情が成立するか?ですよね。
ハッテンカップルではない、ガチのカップルはスゴいと思います。
ハッテンカップルは、ハッテン場ではカップルですけど、一度遊んだらそのあと別の人と遊んでもいい!って感じなんですよ。ガチカップルでちゃんと同棲して、A面B面も見てるなかで成立するのはなかなか難しいと思います。
「女装への目覚め」
という一大イベントを耳にしたかった僕の期待は裏切られた。
確かに、これがあったから転向した!みたいなエポックがある方が不自然かも知れない。
それは、何気ないきっかけとも言えない出来事や、環境の変化や心情の起伏でもたらされるのかも知れない。
どこかに線を引いて属性を明らかにした方が、理解しやすい。
しかし、簡単に理解できるように世界は出来ていない。
曖昧な部分が多い方が世界は豊かで面白いのかも知れない。
全てはグラデーション。
あゆみさんが、女装以前にもっともハマった趣味はミリタリーコレクター。
ミリタリーも女装以上にお金がかかる趣味だったと言う。
ミリオタにもコスプレ要素があり、変身願望を満たす要素がある。
とか、それらしくまとめてみたが、きっと全てはグラデーション。
ミリオタを経て女装に至ったあゆみさんの遍歴は、この先もグラデーションを描いて変化していくのかも知れない。
あゆみさんのご近影は、ご自身に自撮りしていただきました!
流石!絶妙なアングル。
僕が撮んなくて正解です。
みのりさん登場!
1時間ほどお話を伺った頃合い。
談話室には、どんどん老若男女が出入りして、また去って行く。
時には、あゆみさんの顔見知りの女装さんも現れ、
「田園さん開いてないわね」
などと話が咲く。
と、突然、僕も60代くらいのオッチャンに話かけられる。
「このLINEの画像を消したいんやけど、わかる?」
と、スマホのカメラロールを延々見せられる。居並ぶ画像はちょっとアレな見たくない名状しがたい画像群。
めんどくささ丸出しで対応していると、またあゆみさんのお知り合いの女装さんがやって来た。
「前に会った時には、完全に純男さんだったんですよ。20日くらい前?女装デビューの、みのりさん」
花柄のドレスに身を包んだみのりさんにも同席していただけることに!
少し失礼な言い方になってしまって申し訳ないが、みのりさんはまだ「男っぽさ」が見え隠れする女装さん。当たり前だが、その骨格などにゴツさを感じる。
ただ、それもそのはず、みのりさんは女装デビューしたて。
これから、より女装道を極めていかれるのだろう。
ので、ここからはみのりさんもインタビューに参戦していただきます。複数プレイ。
表記は、
あゆみさんは、「あ」
みのりさんは、「み」
タロウくんは、「タ」
となります。タロウ君は一生登場しません。
女装沼
ーなぜ女装を?
み 暇やったから(笑)
単純に変身して、(今までの純男と)逆っ側の光景っていうのがすごく楽しいですね。
ドップリはまった。女装始めてから、B面でハッテン場に行ったんですけど、イマイチでしたね。コッチの方が楽しいですよ〜、是非!
ーそれはキレイになっている自分を見られるのが楽しい?
み このカッコしてウロウロしてるだけで楽しい!
私、女装した初日から外出てますもん。夜中ですけど。この新世界界隈だったら、余裕でコンビニ行けます、日常。
ーこうやって出会って、女装さん同士で話するのも楽しいんですね?
み メイクの話とかね。(費用は)愛人ひとり囲うくらいかかりますよ。でも、自分がカワイイと感じるんでガンガン自分に貢ぐ!
ー突然女装を始めたってことは、突然終わることもあるんでしょうか?
み どうでしょうね、でもこんだけ楽しかったらドップリでしょうね。まさに沼
あ 結構、純男だった人がいつの間にか女装になってる人いるんですよ。
み 私の場合、今45歳ですけど、純男として20年くらいこの業界に居て、いきなりコッチですからね。
自己評価は、それは「自分カワイイ!」と思って女装しますけど、他人からの評価は「そうでもないやろ」と思ってますんで、自己評価は自己満足でいいんです。前の日に出来たメイクが翌日には出来なくかったり、女装し始めたのが遅いんでメイク動画とかを参考にして、コンシーラーで斜めのラインを入れて、視線のいく先をコントロールしたり。女装してる人のメイク動画も結構あるんで、女装開始するひと月前から毎日動画を見て、良さそうな道具を一気に買って。
私もともと老若男女全部食えるんですよ。だから、別に女装して男の人と遊んでも、今までやってたことを女装してやってるだけ。
ーじゃあ、なんで女装なんだろう?と思ってしまう
み カワイイから。
あ 最近私もハッテンするのめんどくさくって。
み 確かに!だんだん女装するだけが楽しくなりそうな予感がしてる。ハッテンしなくてもいい。
あ 女性ってすごいですよね。メイクしなくても女性なんですから。
み もったいないって思いますよ。アナタちょっとメイクしただけで、すっかり女性やん!っていう。私らは下着で補正しつつ、メイクして、ウィッグ被って、それでも偽物なんですから。
ー女に産まれたかった、って思います?
み 思いません、そこまで思う人やったら、ホルモンやら性転換やってると思うんです。
あ 全然思わない。ただ、女装しているうちに性自認が女性に振れていく人はいます。ウチの知り合いでも、この前タマ取って多分あと3年くらいで切っちゃう人もいるけど、でももう結婚してるから戸籍は変えられない。
日本の法律上、最終的に戸籍の性別を変えるには、切らないといけない。でも条件があって結婚してたり子どもがいると無理なんです。
ーボーダーは引けない、やはりグラデーションなんですね
み 「通天小町」に来る若い子で多いのは完全に趣味女装。自分が可愛くなって完結。ファッションの一部です。別に男の人と絡まなくてもいい。
あ 逆にね(笑)
み そう。絡むの?みたいな。
ー例えば、お二人が女装の世界に誰かを引き込もう、と思ったら1番の口説き文句は「楽しい!」?
み そもそも口説かないです。本人がやりたがらないと。「すごい似合いそうやな」っていうことはあるけど、その程度。(仲間は)普通に増えますもん。今は時代もあって『男の娘』って存在が認められていますから。隠れてコソコソやってる趣味ではなくなりましたから。
(20年前は)新世界界隈は女装もそこそこ居たけど、ここから飛び出すなら、夜中にどこかの公園でひっそり、みたいな世界やったから。
新宿二丁目は、ゲイはゲイ、女装は女装、ニューハーフはニューハーフって棲み分けがハッキリしてるっていう話なので、新世界みたいな街は東京にもない。日本一女装に優しい街、新世界は。
という訳で、みのりさんにもお話を伺いつつ、2回で収まらなかったでっす!
世間的なコラムみたいに、かいつまんで、まとめてしまうことは辞めました。
このブログは商品ではないので、せっかく聞かせてもらったことは書きます!
とはいえ、次回で最終回な気はします。多分ですけど。
乞うご期待!
※ お話は、2021年5月26日に伺いました。