暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。12日目 ②「木偶の坊」

2021年3月12日。②

 

前回からのつづきです。

nishinari-lives.com

 

会社のある場所からさらに移動する。

途中、コンビニに寄って昼メシを購入。今日の現場は昼メシは出ないようだ。

「お屋敷」
という形容がしっくりくる邸宅。広大な面積。何棟もの上物に大きな庭。
すでに、解体作業はいくらか進んでおり敷地内にはユンボが二台スタンバっている。

屋根瓦の下に大量の藁が仕込まれた旧日本家屋の骨組みがむき出しになっている。
作業員は僕、ユンボを操る監督、その他解体物をトラックに積み込む&仕分け作業をする職人が2人。

道具の置かれたまだ取り壊しが始まっていない家屋に荷物を置き、8時前に作業がスタート。
解体時には、ホコリが舞うのを防ぐため、ホースによる放水を行うわけだが、

「とりあえず、その藁の塊に水かけ続けて!」

との指示で延々放水を続ける。
放水作業は、消防作業に似ている。
消防作業をしたこともない、僕が言っているから信用性は著しく低いが。

ユンボで家屋の柱や壁をぶち壊す際、粉塵が大きく舞う。
この時、瞬時にホコリの発生元を見極めピンポイントで放水を当てねばならない。
また、崩落物が地面に落ちた際にも、第二陣でホコリが立つ。その場所にも的確に放水しなければ、ホコリを抑えることができない。

以前の解体現場では、放水専従の人間はいなかったので、放水したのち解体物の仕分けをする必要があったのだが、今日はズーッと放水。

「ソコ水かけな!もっと右」

など、指示を受けたり、

ホースのジェットノズルを直接ホコリの発生元に当てるのではなく、ノズルを上向きにし、左右に揺らしながら、雨を降らすようにするテクニックも教わる。

10時半の休憩までは、ズーッと放水。
「手がダルいがな」程度の疲労しかない。
ありがたい!最高!解体、最高。

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一転してハードワーク

しかし、そうは問屋が卸さない。おろす訳がない。

休憩後は、放水をしながらも、ユンボの動きを読みながら、木(職人さんは『シバ』と言っていた)・アルミ・ゴミを仕分けていく。

静止から行動、ストップアンドゴーを繰り返す。
「これは、ハムストリングに来るな…」

しかも、午後からは雨も降り出した。
雨中の中、泥まみれで作業する。

冷静に指摘される

今日の現場の職人さんは皆、寡黙に淡々と作業をこなす。
そして、指摘が鋭く的確。

「ソコ、右から水当てろ」

「シバは運ぶより、投げた方が早いやろ」

「そんな持ち方するな。まとめて持て」

など、解体作業の効率化においては至極真っ当な指摘をされるので、そんな当たり前のことが出来ない自分が情けなくなる。
ならば、とにかく動くことで経験の無さをカバーしようとするが、下手に立ち回ってかえって他の職人の動きをジャマしてしまう。裏目裏目
「一体、僕に何が出来るんだろうか…」
落ち込んでしまう。

 

放水オンリーなのかしら!
とタカをくくっていた初っ端から一転、精神的にも肉体的にもキビしい時間が過ぎていく。

昼休憩の頃には、雨は本降り。
天気予報を見て、雨具は持って来ているが、すでに汚れまくった作業着のままでいい。
動きまくって汗はかいているのだが、寒さも募ってくる。
コンビニで買ったおにぎりと菓子パンを食べて、ただただ雨に霞む眼前の壊されゆく大邸宅を眺める。

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グッチャグチャです

雨と泥まみれ。

今日も仕事が終わる。

被害者意識が強いクセに、承認欲求意識も旺盛な人間は厄介。
僕がそれなのです。

各職人さんに

「ご迷惑おかけしました。上手く動けませんでした」

と声をかけたら、

「何のこと?全然OKよ」「とんでもない。お疲れさん」

と返してもらい。自分が情けなくって、泣けてしまう。

 

雨によって、疲労が大きく増したように思う。
キビキビした動きの職人と、明らかに空回りしていた自分の差を思い知らされた。

加えて、それぞれの職人さんが終始僕を呼ぶ際に「土工さん!」と呼称していたのも印象的だった。そう呼ばれる度に、「ああ!僕は土工だった」と再確認するんだけど。「土木さん」という表現はかろうじて自分がこのチームの一員だと感じさせてくれた。見下されていないと感じられた。優しい人たちだった。感謝したいです。

「西成は楽しそうやん!」

帰りは最寄りの駅まで監督さんに送ってもらった。

「すみませんでした。動きが鈍くて」

「いや。大丈夫やったよ。お疲れさん」

すでに、もうこういう返事が貰いたくて聞いている自分がいる。イヤな奴。程度の低い人間である。

 

外の雨は激しさを増している。

「土砂降りですね。すっかり」

「そうやな。どうせ濡れてるから、いいわな」

 

はっきりとした場所は分からないのだが、相当郊外まできていたようで、最寄りの地下鉄の駅までは30分ほどを要した。車内で少し監督さんと話す。

「西成に住んでるん?」

「そうです。ドヤ暮らししてます」

「なんか面白い街なんやろ?結構、YouTubeとかで見るよ」

「行った事ないですか?」

「もう20年くらい前かなぁ。その時は、路上で覚醒剤売っとるかどうか?確かめに行ったんよ。ホントに売人だらけでビックリしたけど」

まあ、本当のところはまだ西成ペーペーの僕には分からない。あからさまでなくなった分、地下に潜っているだけなのかも知れない。

 

「でも、本当におじいちゃん位の年齢の人が、働いてるんでスゴいなぁ、と。僕は多分、明日筋肉痛で動けないです」

「ははは。まぁ、慣れよ。慣れ」

仕事のキツさを嘆くと、皆異口同音に「慣れ」である、と言う。
僕も少しは「慣れ」てきただろうか。

 

その後も、お互いの地元の話などをして、和やかな車中であった。

「お疲れさま。ありがとー」

報酬の入った茶封筒を渡され、駅で降ろしてもらう。
今日のチームは「仕事人」と言う形容がピッタリな人たちであった。
それに引き換え…、もういいですね。
しつこい、こんな人間好かれる訳がない。

 

途端、猛烈に腹が空き、地下鉄に乗る前にコンビニに入りホットスナックを求める。
こんな感じでしっかり食って、しっかり寝ていけば、「慣れ」ていくだろう。

 

西成に戻るには乗り換えて40分ほどかかった。
「ビジネスホテル スバル」は本来なら、明日出ていくことになっているのだが、明日は動けないかも知れない。受付で一泊延泊を申し出て、洗濯して眠った。

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仕事内容
日付:2021/3/12(金)
場所:大阪市
現場:旧日本家屋
内容:解体
時間:4:15~16:55
待遇:朝飯アリ
給与:¥11,000

西成で得た金額
11,000円

使った金額
宿泊代:1300円
交通費:330円
コインランドリー(洗濯):200円
烏龍茶:108円
マイルドいちごオーレ:150円
白バラ抹茶:173円
クーリッシュxカルピス:163円
ヨーグリーナ&天然水:126円
鶏つくね串:145円
ごぼうと蓮根サラダのパン:149円
大きいウインナーパン:138円
チーズクリームのハムパン:146円
金ちゃんの唐揚げおにぎり:162円
おにぎり・エビラー油:162円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二箱)

所持金

9,196円