暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。176日目「冷凍都市の憂鬱」

2021年9月10日

久々の現場仕事に行く。ことにする。

早起きさんとしては法外なほどの時間に起き出して、ヘルメットや長靴、手袋を抱えて、あいりん地区を彷徨い、「何をするのか?どこに連れて行かれるのか?何時に終わるのか?」も判然としないまま時間を蕩尽し、肉体を痛めつける。という完全謎ムーブ。
行くのかー。行くんだね。
それが、「西成で暮らす」ということ。

というのも、昨日、福岡の友人に
「もちろん!現金仕事にはしょっちゅう行ってるよぉ!」
と息を吐くように嘘をついたからである。
自慢ではないが、「息を吐くように嘘をつく」のは僕にとって当たり前の、常識的な仕草。
不誠実に生きることが僕の正論である。
辻褄を合わせないといけない。ので、仕事しよ!

ちなみに、アウダースの痴女モノAV傑作シリーズ『女の口は嘘をつく。』を全巻揃えていたのは大学生の頃であった。懐かしいなぁ、仕事したくねぇなぁ…
マスかいて、ただ寝て、またマスかいて、寝ていたい。

 

久々だったので、暗いうちにホテルを出奔し、万全の体勢で仕事探しをすべきだったのだが、一度3時に起きてから、二度寝かましたので、スタートが5時近くになってしまった。

しかし、運良くあびこ筋沿いで、マイクロバスを停めていた手配師に声をかけられ、仕事獲得。

「何系の仕事ですか?」

「港湾で、荷運び荷上げやね。船から荷物が来るから、コンテナに詰め替える。簡単なもんや!安心しときや!」

安心の仕事か。
そんな訳ねーんだよな、大概。

バスに乗り込み、明るさを増していく車外の景色を眺めながら、もう不安でいっぱい。
護送船団方式の同僚たるオッチャンたちのタバコの煙が目に沁みる。
と、

「〇〇!車内禁煙って言ったやろ!出てけ!出ていってや!出禁や、アンタ」

と、怒られている。

「あんなぁ、ここは車の中で吸ったらいかんねん。みんな、シートとか床を焦がすやろ。やから、禁煙になってもうてん。アホくさい!」

前の席のオッチャンが教えてくれた。
調子こいて、タバコに火を点けなくて良かった。
注意されたオッチャンは言われるまま、肩を落として去っていった。
まだ、5時前。
あぶれずに、仕事見つかったらいいね。

寒いし、暑いし

コチラの会社は、朝飯なし。
そのまま、マイクロバスに乗った僕を含めた10人ほどが、大阪の港まで、埋立地まで運ばれていく。
広い港を巡回しながら、一人また一人と車を降ろされる。

「ここで待っとって!7時半くらいになったら、人来るんで、そいつに指示もらってや!」

時間はまだ、6時15分。
見渡す限り、コンテナがうず高く積まれ、人っ子ひとり見当たらない、特撮モノの撮影場所みたいな空間。
不安しかない。
あるのは、まだ夏の香りがする空気と優雅に舞うカモメの姿だけ。

便所も、当然コンビニエンスストアもない。
朝飯食っておけば良かった。
もう、帰ってしまいたいが、どうやって鉄道が敷設されたような文化的な地帯まで辿り着けるのかすらも分からない。
Google先生によると、最寄りの駅までは徒歩で30分かかるようだ。
腹を決めて、海を眺めながら横になり眠る。

なんだこの放置っぷり。

8時近くになって、いよいよ不安が過ぎて情緒が不安定さを極めんとしていた頃合いに、フォークリフトに乗った作業着の人がやって来る。

「竹下さんやね、今日冷凍庫の作業ね。これ着ておいてや」

ファー付きのドカジャンを渡され、移動。

「ここのコンテナから、台車使ってもろて、トラックに荷物移していってや」

「コンテナも冷凍庫なんですね」

「そら、そやろ。中国から来とるからな。ワシは定期的に見にくるさかい、サボらんとやってな。積み方は、トラックの運ちゃんと相談して、ええようにして」

 

冷凍コンテナと冷凍トラックの距離は、50m。
その束の間は夏だが、ほぼマイナ20℃のコンテナ内とトラックの荷台の中での作業。
冷凍エビだ、冷凍イカだ、を触りまくるので、くっさいし(臭)。
中には、電子機器もある、コレはおっもいし(重)。
ゴム手袋は張り付くし(張)。
とにかく、さっぶいし(寒)。
でも、50mはあっついし(暑)。

しかし、間もなく震えるほど凍えていく。
ドカジャンの内側でかいた汗が凍っていくような感覚。

 

何台もやって来ては、荷台をいっぱいにして去っていくトラック。
その運転手さんの当たり外れもある。
積み込みを手伝ってくれる天使もいれば、
「その辺に積み上げてくれたら、僕が奥持って行きますわ。ゆっくり、ケガせんようにね。一個20キロはあるからね、落とさんことね」
全くロンリーに作業させて、タバコを吸いながらスマホゲームをしている悪魔もいる。
「早よしてや、そっちもや!横詰めてくれる!時間ないで!タラタラすんなや、オッサン!」

 

昼休憩に入る。
腹は減っても、その腹を満たす食料を買い求める場所もない。

「弁当持って来てないの?準備不足やな、どっこも買いに行かれへんで、この仕事は」

監督役の方に、暖かい缶コーヒーと、コンポタ缶をもらう。

「なんも聞いてないんかいな(笑)〇〇は弁当付いてないからな。これ飲んどきや」

ありがとうございます。
けれど、休憩中の気温は30℃近い訳だから、冷たい麦茶とビシソワーズが飲みたいです。

 

寒さで、肩が上がらなくなり、荷物を高く上げる動作が鈍くなっていく。
もう、このまま『シャイニング』のジャック・ニコルソンの末期のように凍って絶命してしまいたい。ニコルソンは笑いながら死んでたしな!

 

悪魔多めのトラックの運ちゃんと闘いながら、ノルマを16時には終了。
残りの時間は、空になった運搬用のパレットや台車を倉庫に運んでいき完了。

途中、寒さと空腹による倦怠感でかなり逃げ出したかったが、逃げ出すにも徒歩で30分かかるのよ。隔離された区域での強制労働。僕は、労働者。君は傍観者。

「お疲れさん!また、頼むわな」

いえ、もういいです。

 

仕事が久々すぎて、現場の写真も、報酬の万券の画像も撮り忘れた。

18時過ぎに「パークイン」に戻って、煎餅布団に突っ伏す。
お昼過ぎにはあんなに空腹だったのに、飯が喉を通る気配なし。
食欲不信、西成不信、人間不信©︎坂口征二
一応、『女の口は嘘をつく。』の動画を探してみたのだが、いにしえすぎて発見出来ず。発見不信。
マスかく気力もなく、風呂にも入らず眠る。精力減退。
息を吐くように嘘をつく、のが信条の僕ですが、今日の「疲れた」は本当です。
嘘つき不信。

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仕事内容
日付:2021/9/10(金)
場所:大阪市
現場:港湾地帯
内容:冷凍物運搬
時間:8:00~17:15
待遇:昼食なし
給与:¥10,000

 

収入

10000円

 

使った金額

交通費:420円
麦チョコ:108円
小さなチョコの木:108円
森永・ラムネ オレンジソーダ:152円(二個分)
烏龍茶:100円
明治・ココア:80円
ブルボン・牛乳でおいしくホットなココア:140円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール5mm:800円(二個分)

 

所持

77,750円