暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。37日目 「友人とは誰か」

2021年4月9日。 

期待感を持って、その期待を裏切られることは切なくツラい。

本日も、西成は快晴。
フラれてバンザイするのが億劫で、今日も早朝の西成現金仕事求職活動は、せなんだ。
「だって、今日は友達と会うから」
それが表向きの理由で、本心からの希求でもある。
表裏なんかもう僕にはないのだよ。

 

ただ、「なぜ西成に居るのか」という己が目的やゴールがブレまくっている。
3月いっぴから、この生活スタイルをスタートさせた時には、「西成で暮らしていくうちに、きっと何がしか見つかるであろう」であろうぞ、とタカをくくっていた。
しかし、どんな幸甚も向こう側から、千切れるくらいに手を振りながら近づいてきてはくれない。

日雇い仕事が得られないのだとしたら、少しでも「イマの西成」を体感し、それを自分なりの回路で伝えねばならない。

「ねばならない」とか本当はイヤなんすけどね。
強制されて生まれるものなんてない、もしくはろくなもんじゃねぇ、ぴいぴいぴいだと。

でも、きっとこのままじゃ埋没します。
生みだせる可能性も閉じてしまう。

100本でいいですか?

「千本ノック」
ていうヤツありますよね。
照明設備も整っていない荒れたグラウンドで、そのユニフォームを目一杯汚しながら、自身のプライドを傷付けながら、それでも自分のポテンシャルを信じながらの守備練習。
高校球児のイメージですね。

青空球児・好児のイメージはカエルですね。
ああ、そうか!
イマの今気付きましたが、U字工事って球児・好児のパロディなんじゃないですか?
西成に来たから、こその気付きである。

ので、何が「ので」なのか回路が乱れているが、
なので、これから西成の人々にぶち当たって、メチャぶつけで話を聞いていく(インタビューとかいうと大仰ですが、)シリーズを始めたいと思う。

1000本、1000人、となると始める前から挫けちゃうんで、100人目標。
「ある!ある!ある!」、『クイズ100人に聞きました』ですね。
相変わらずモチーフがクソ古い。いにしえ。

 

東京でテレビ番組のバイトをしていた頃に「街録」という作業をしていましたが、インタビューって断られると、ガクッと心が痛み、断られ続ける果てに精神力がマイナスを叩き出すんですよね。

 

大体が、社交的でも陽性でも話好きでもないタチだ。もちろん妖精でもない。妖精なら良かったのに。
学校でも、仕事場でも己が心を開いて、相手の心を開かせるのに楽勝で最短で2年はかかる人間。
これがWEB制作会社でクライアントとか、採用サイトのための取材とかする際にはズケズケいけていた。ライターで取材していた時にも。
不真面目だからでしょう。聞きたいことだけ聞いて、あとは捨象して、作る前から結論を設けて、そこに落とし込む言葉だけを待っていたから。
サイン通りに投げてくれるピッチャーとしかコミュニケーション出来ないキャッチャー。
今日は、野球例え多め。
野球の話するのも旧人類感ある。いにしえ。

これから始める
「西成100本ノック」
は、気合い入れて、しかしサラッと話を聞かせてもらおう。
「この街で暮らすこと」「この街で暮らして来たこと」「この街で暮らして行くこと」
そんな市井の声を拾っていきたい。

 

という訳で、まずは投宿中の「ビジネスホテル ちとせ」のラウンジからスタート!
ラウンジ?っていう感じじゃあないかも知れないが、このホテルの一階の一角には宿泊客や福祉アパートとしてこの場所で生活する人たちの集う場所がある。

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ここで、しばし一服していると70がらみのオヤジさんがやって来て、スポーツ新聞を広げ始めた。

「今話しかけちゃあ、競馬の予想に差し障るかなぁ」

とか躊躇しているうちに、ラウンジ内はテレビを見る人、ボーッと外を眺める人、爪を切り出す人、らで混み合い出す。

それぞれが、それぞれの時間を過ごしており、やすやすと話しかける間隙が見つからない。
思い切って、

「今日は、割とあったかいですね!」

と隣でタバコに火を点け、虚空を見つめていたオッチャンに話かけたらば、ガン無視された。
しかも、この発言きっかけでラウンジ全体に
「お前、なんでココにおんねん」
的なムードが漂い始める。

いたたまれなくなり退散。


街へ出る。
あいりん地区の路上には、うんこ座りをして日向ぼっこしているオッチャンも多くいる。

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その中のお一人に、

「今日は、割とあったかいですね!」

と声をかけてみる。

「そうやな」

「日向はいいですね。日陰は寒いですかね、まだね」

「何が言いたいんや」

「…そうですね。すみませんでした」

 

第一、本日の陽気に関する第一声が間違っている気がする。

“インタビュー時のアイスブレイクテクニック”
みたいなハウツー記事は会社員時代いくつも読んだがなぁ。
誰も「西成100本ノック」のコツは教えてくれなかった。当たり前。

 

心折れた!
でも、頑張った!

二打席立った。
凡退した。

だから、野球例え流行んないってよ。

もちろん、今日の二打席は「100本」のうちには入らない。
しっかり、まとまったインタビューを100本こさえたい。
20年くらいかかるかもね。
でも、これから恒常的にやってみます。

友人と会いに行く、というか奢られに行く

友人とは何であろうか。
武者小路実篤でも読めば分かるのだろうか。
中原中也小林秀雄の関係を眺めれば理解できるのだろうか。

 

小学生の時。
安藤という名前のクラスメートがおり、彼の外見的特徴がいわゆる“ギョロ目”であったことから、「きよし」や「ギョロっぺ」といったあだ名で呼称されていた。
僕と安藤は、時おり教室で話す程度で、竹馬の友でも親友でもなかった。
彼の実家は食堂を営んでおり、その事で安藤が給食係になったりすると「安藤食堂!不味そ〜う」みたいな揶揄に晒されていたものだ。

小学校の卒業式。
もっと、ドラマチックなイベントを想像していたのだが、特段、落涙させられたり、想いを打ち明けられたりするようなメイクドラマは起こらず、僕はいつものように一人で帰路についていた。変わったことと言えば、卒業証書の紙筒をシュポンシュポンさせたくらいのことであった。

その帰り路。
たまたま、安藤と会った。
彼もいつものように一人実家の食堂まで歩いていた。

なんとなく僕たち二人は近所のドブ川のへりに並んで座り、小学校生活をダイジェストで振り返ったりし、自分たちの卒業という一大イベントの終了をいたずらに引き伸ばしてみていた。

その時、安藤が言った一言に僕は驚かされた。

「竹下って、俺のことあだ名で呼ばなかったよね。食堂のこともバカにしなかった。すごく嬉しかった」

正直言って、それは僕の安藤への興味の無さから発していた振る舞いでしかなかった。
しかし、安藤はそのことを持って、僕を「友だち」だと認識してくれていた。

僕はズルいから、もう小学生にして小狡い人間だったから、

「ああ、安藤は“あんどう”だよね。あだ名で呼ぼうとかなかったよね」

みたいな返答を確か、したはずだ。

そうしたらば、安藤は泣き出し、僕のその興味の無さから発していたに過ぎない態度に感謝の言葉を重ねてきた。

安藤にとっては、僕は誠実に向き合ってくれる友人であったのだ。
意外であったし、よく理解も出来ていなかったが、その時僕は「友人」とは一方通行でも良いのだと思った。向こうがどう思っていようと、ボタンの掛け違いがあろうと、勘違いだろうと友人を定義するのは、友であってくれたと感じる己なのだと。

それからも、僕と安藤の関係は極端に深まるようなことはなかったが、節目節目にお互いの近況を報告する関係であり続けた。
もう20年近く連絡を取っていないが、今でも僕と安藤は友人関係だと思っている。

 

畢竟、今日僕に会いに来てくれた友人も、僕が一方的に友人だ!と感じていれば良いという話。
梅田で待ち合わせ、曽根崎の「居酒屋 松屋」で2時間ほど痛飲。

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僕が西成暮らしのあれやこれやを愚痴っていると、彼が、

「会社辞めて良かったと思います?後悔はない?」

と聞いてきたので、その質問にはハッキリと

「ない!」

と即答できた。
今も、日々の仕事やお金の奴隷のような生活かも知れないが、会社員時代も仕事やお金の奴隷でしかなかった。ただ、自分の選択肢がある奴隷であることに自由さは感じるのだ。

「ある!ある!ある!」は、『クイズ100人に聞きました』の話。

ただ、彼の宿泊先の梅田のホテルのロビーを見て、いつもの西成安宿とのギャップは感じたが。

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その後も、これからの西成生活および当ブログの展開などについても意見をもらい、大変有意義であった。

そして、何より有意義であったのは、その居酒屋のお会計を彼が負担してくれたこと。
ただ、丸々奢られたわけではないことを、ここに表明しておきたい。
全5,500円くらいのうち、200円だけ出しました!

つまり、結論めいたことを書けば、

「奢ってくれる人、みんな友だち!」

金銭の奴隷にとっては、金銭からの解放の一助をもたらしてくれるのは、良き友の存在である。
また、奢って欲しい。それは切実に。

別れがたく、春だというのに肌寒い大阪駅周辺をウロつかせてしまった。
別れがたい。とか言うのも一方通行で良い。それが友人だもの。

「お土産買ってなかったんで、コレを…」

と、タバコをワンカートン渡してくれる。
いやぁ、やっぱり君は友人だ。
最低。

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ちなみに、「西成100本ノック」と「友人に200円奢ってやる」の間は、ウーバーイーツしてました。10時半〜15時まで稼働で、¥3,502也。

オイ!
そんなにやったのかよ。
もっと、100本ノック頑張れよ!
分かってる、頑張る。

 

使った金額

交通費:180円
居酒屋 松屋(夕食および飲酒):200円
明治・ガルボバナナミルクポケット:143円
お惣菜・一口ハッシュポテト:176円
2種類のクリームたっぷりシュークリーム:52円
鈴の屋・きなこ棒:149円(二個分)
菓子パン・バナナチョコ:95円
パリッテストロベリー&ショコラ:106円
伊藤園お〜いお茶濃茶:181円
miuレモン&オレンジ:100円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円
 

所持金

12,696円