2021年4月14日。
3連勤。
こんなに働いていいんだろうか?
こんなに働くべきなのか?
そもそも、もっと気ままな西成ライフが良いんじゃねー!のか?
べき論とそも論が己の胸中でせめぎ合うなかで、今日も3日連続の集合場所へ行く。
ただ、仕事があるだけありがたいことに変わりはない。
天候は昨晩から続く雨模様。
天気予報ってホント信用できない。
ごめんなさい、昔日から比較すればとっても頼りになります。
西成現金仕事にしろ、ウーバーイーツにしろ、外で身体をフルテンで酷使する環境になってから、「その日の天気」に異常に敏感になる生活に突入しているからこその不満です。
晴耕雨読を気取りたいけれど、今は文化に触れることも無く、ずぶ濡れ上等で働くのが、西成暮らし。
「コレ、今日仕事無くなるかもな!」
滋賀から、奈良。と毎日に移動時間が膨大に膨らんでいた土壌改良スコップぶん回し作業だが、今日の現場は大阪府内。
土壌改良は当然、基礎やウワモノに取り掛かる前に行われるので、建設予定地の更地で実施される。今日の現場も、住宅地の奥、宅地造成区画がいくつも並ぶ場所。
隣の建物への影響を抑えるために、「タンカン」と呼ばれる金属製の単管パイプをジョイントしていき防音シートを貼っていく。
「アスファルトやるの!?」
突如、大きな声が田舎町の朝の空気を切り裂くように響き渡る。
今日の作業区画に面した道路はまだ舗装されていないのだが、コチラの土壌改良作業と並行してアスファルトを敷くことになっているという。
アスファルトは完全に固まるまでには数日から一週間ほどかかり、そうなれば土壌改良のための重機や4トン車が行き来出来なくなる。まして、敷きたてのホヤホヤアスファルトが作業区画に面している状況では、無理。
アスファルト業車vs土壌改良業者
の構図がにわかに立ち上がり、揉めてる。
揉めてるーーーー。
揉めないで、私のために争わないでーー。と、きっと現場のあの娘は言っている。
社長を残して、職人と僕は付近のコンビニで待機。
「こんなこともあるんですね」
「まあ、あるよ。どうなるかなぁ。今日はバラしかもな」
建築の現場は正しい工程を踏みながら円滑に進められねければ、こうやって滞る。
基礎も出来上がっていないのに、大工が作業することは不可能なのだ。
ウチは「杭屋」ですから
業界にはそれぞれ、〇〇屋といういくらか自らを卑下したような表現で己を呼称する職業呼称がある。
ITまわりはウェブ屋、記者はブン屋、おでんはおでん屋、圧力かけるのは総会屋、映画製作は活動屋、おでんはおでん屋、スラッシュメタルならスレイヤー。
現場における土壌改良は、ドリルで地面をうがっていくことから
「杭屋」(くいや)
と呼ばれるらしい。
杭屋の竹下です。よろしくお願いします。
セメントを液状化したものは「ミルク」と呼ばれる。
穴を掘って、ミルクを加えるわけである。
少し卑猥。
中学生の頃ならオカズに出来ていたかも知れない。旺盛な想像力が懐かしい。
「ミルク」は土壌の土と混ぜ込まれるので、セメントのグレー色から茶色く濁る。
カルアミルクっぽい色になる。
カルアミルクも、カルーアミルクも要らないけれど、今日もビキビキに染み渡る缶チューハイを飲ませて欲しい。
仕事なくなったら、報酬はどうなるんだろうか。
正直、限界が見えてきた二日連続での身体の痛みを感じながら「流れるなら流れてくれ」とも思いながら、審判を待つ。
なくなったので、ヘルプに行く
結果、仕事は流れた。
「仕方ないから、〇〇のところ手伝いに行こか!」
一度こしらえた養生を外し、車で30分ほど移動。
この時点で時刻は10時前。
ほぼ何もしていないので、トクしたとも言える。
従前通り11,000円貰えれば、だが。
70代と思しきオッチャンが手元を受け持ち、その息子さんがドリルを操る現場に到着。
社長とは、旧知の仲のよう。
朗らかに、明らかに人数過剰な状態で作業。
ここから、社長のスコップ使いと穴を整えていく手際を観察したのだが、流石に手練れ。
上手いなぁ。早いし、キレイだ。
「やっぱ凄いですね」
「そりゃそうやろ(笑)。何年やっとると思うか」
社長は、40年選手。
僕は、現場4回目。トウのたった4回戦ボーイの仕事と、往年のチャンプでは比ぶべくもない。
「毎日勉強です」
途中、70代のお父さんに話しかけられる。
「私はね、この仕事5年目」
冗談だな。現場ジョーク。面白くねーぞ。
「ウソでしょ(笑)。超ベテランでしょ?」
「違う違う。ホンマ!65まで運転手しとったん。こうやってスコップ使うのは、爺さんになってから」
「ええー!凄いですね!僕なんか一日やったらバテバテですよ」
「まあ、親子やから。ゆっくりペースでね。でも、70になっても学ぶことばっかり。毎日勉強ですわ」
…。
お疲れ様です!
こんな言葉、70になって言えるのか。
46でくたばりかけている自分。
お見それしました。
尊敬でしかない。
連投の果て
杞憂でしかなかった、報酬は通常通り貰えた。
時間はいくらか押したが、身体的負担という意味では楽させてもらった。
そして、缶チューハイ。
きクぜ!。加納典明。
西成に来て、初めて3日連投に成功した。
初見ではないメンバーと、少しは慣れた作業という限定条件はあったがなんとか乗り切れた。
この感じならば、例えば10日間の飯場に行くといったような試練にも耐えられるかも知れない。
「慣れる」
現場作業に身体が慣れていく。
なんて、あり得るのか?
と感じていたけれど、なんとかヤレたんだ。
この先も、西成で生きていくための最低限の資格は得られたような気がする。
毎日、勉強。オッチャンの言葉を噛みしめる。
ベッドメイクされとる!
暗くなって「パークイン」に戻ると、散らかり状態の部屋がキレイに掃除され、布団のシーツが取り替えられていた。
西成の安宿にも。ベッドメイクという概念が存在したのか!
ありがとうございます!
福岡の友人にもらった、まだ開封していなかったタバコが一箱捨てられてしまったような気がする…、が気のせいだろう。気のせいだと思う。
今度から、日中外に出るときは、ちょっとキレイにしておこう。
ありがとうございました!
泥まみれの安全長靴を洗い、溜まっている洗濯物を持参してコインランドリーへ。
君は3日連続で汗と雨に打たれ、ミルクと泥濘にまみれたゴム手袋の香りを嗅いだことがあるか?
僕は今日、嗅いだ。
洗ってください。もう限界です。
洗濯の画像、多い。
芸がないなぁ。
しかも、働いたからって言って、ガキみたいにお菓子食い過ぎ。
アイス美味い。
味覚が幼すぎ。
今日は何も考えずに眠る。
アラームなんか、かけないんだから。
真っさらなシーツに横たわる。
ささやかな幸せと充足感に包まれる。
仕事内容
日付:2021/4/14(水)
場所:大阪府下
現場:更地
内容:土壌改良・湿式柱状改良
時間:6:30~18:25
待遇:缶チューハイ
給与:¥11,000
収入
11,000円
使った金額
交通費:390円+480円
コインランドリー(洗濯):200円
チケット+手数料:3940円
おむすび・チャーシュー煮卵:237円
ハムサンド:251円
大きなおむすび和風ツナ:157円
おにぎり・味付けのり焼鮭:135円
パン・たっぷりコーン:86円
吉野家・肉だく牛丼:549円
ブルボン・ルマンド:95円
森永・大粒ラムネ:168円(二個分)
クーリッシュXカルピス:85円
BIGスイカバー:64円
ゴールドキウイミックススムージー:149円
パインジュース:106円
お〜いお茶濃茶:149円
セブンプレミアム烏龍茶:149円
レジ袋:3円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二個分)
所持金
37,326円