暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。4日目 ②「高所で震え、ユンボで殴られる」

2021年3月4日。②

 

前回からのつづきです。

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現場は住宅街の一角。
敷地内には上物が3棟あり、家財道具がギッシリ詰まったまま。

「瓦やろか」

30代の現場監督がユンボを操り、そのシャベル部分に乗っかった僕を、屋根に上げてくれる。
これがちょっとしたアトラクションのノリがあり、「もう一回!もう一回!」とコールしたいくらい楽しかった。のだが、屋根の上は、高い。当たり前ですね。

陶器製の瓦を一枚いちまい外して、トラックの荷台にぶん投げていく。
足を踏み外して、落ちたら…。
もし、雨天の折であればより危険だろう。慎重に、しかし機敏に動かねばならない。
二棟分の日本家屋の瓦屋根を外し終える。
そして、地上に降りるときは再びユンボで運んでもらえる
「もう一回!もう一回!」

地上では、残されていた家電や食器を大きく「一般ゴミ」「アルミ金属」「木」に分けて捨てていく。こののち、ユンボのシャベル部分をカギ爪に付け替えて、家屋自体を解体していく。

 

すると、20代の青年に呼ばれる。

「おっちゃん!こっち来て!」

現場には、僕とロバートの二人のおっちゃんが居るので、「おっちゃん」という呼称ではにわかに判別できない。
ただ、より外見的な特徴を反映した呼称、「メガネデブ!」みたいな呼び方をされるのは御免こうむりたいので、仕方ない。

おっちゃん。高い所、得意やろ?さっき、瓦やってんの見てわかったわ」

「そうですか!怖いですけどね…」

 

高所得意なメガネデブ認定を受けてしまったので、もう一棟残った3階建ての「スレート屋根材」を取り外す作業を任されることに。

屋根材には、いくつかの種類があるが「スレート」というものがあるようで、

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現場の方たちは「カラーベスト」と呼んでいたが、その呼称は商品名のよう。
セロテープとかサランラップのパターンですね。

このスレートが、それぞれ重なるように釘付けされているので、バールを使って一枚いちまい剥がしていく。
登った屋根には、一部地階まで貫く穴が開けられており、剥がしたスレートはその穴に落として溜めていく。
穴に落ちたら小怪我、屋根から落ちたら大怪我。

先ほどより、数メートル高い屋根の上で、しゃがみこんでスレートを外し、何枚か外したら、穴に落としていく。一度に全部外してしまいたいが、屋根には当然傾斜があるので、幾枚もストックしておくわけにはいかない。
この屈伸運動の連続。ほとんど連続したヒンズースクワットの嵐が、翌日以降の筋肉痛となって、僕の身体を苦しめることになるのだが。

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この高所作業中に10:30休憩。

地上では、ロバートと他のみなさんの活躍で解体が進行しているので、もうユンボで屋根に運んではくれない。2階の窓から出て、3階の屋根には立てかけた脚立で移動。
当たり前だけど、誰も脚立を支えてくれる人はいない。怖いのね。脚立を立てているのは傾斜した屋根部なのだから。怖いわね。

監督さんからコーヒーをもらう。

「今、どの辺?」

「三分の一くらいですね、まだ」

「わかった。なるべく早くな。落ちんようにな」

すでに日差しが痛い

この日は春にもならないというのに、太陽の力は恐ろしい。

屋根の上は、スレートを剥がした下地の黒いシートからの照り返しもあり、すでに暑さを感じる。夏場は本当にどうなるんだろうか。朝の「夏はぶっ倒れる」という言葉が脳裏に蘇る。

ただ、この作業は単独だったので、マイペースでやれた。
すでに疲労困憊ではあったが、途中屋根に寝転んだりして、いい気分。つかの間。

昼休憩

また、足場が不安定な脚立を降りて、地上へ。

ロバートと一緒にコンビニを探す。

「この辺なんかありますかね?」

「どうやろ」

「あ、アレ!セブンじゃないすか?」

「ああ、俺メガネないから見えんのやけど。そうやな多分」

とにかく、喉が渇いていたので2本ペットボトルを買う。
食欲が湧かず、残りの時間はただただ廃屋の中でボーッとしていた。バックパックには、事務所でもらった弁当が入っていたのに。
これは、後で猛烈に後悔した。
明らかに、午後の作業でのバテ方が違う。
食べられる時間に、しっかり食べておかねばダメだ。

そして、解体へ

午後からもスレート屋根材の撤去を続ける。

腰とふくらはぎの悲鳴が鳴り止まない。
2時ごろだろうか、20代の彼が屋根に上がってきた。

「おお!進んだな。頑張ったな、おっちゃん!」

どこにいても、どんな時も、誰かに認めてもらえるのは無条件に嬉しいものだ。

残りを2人で片付け、今度は地上戦へ!

 

解体の手順はこうだ。
カギ爪の取り付けられたユンボが、家屋の壁を少しづつ引き倒していく。
その際、ホコリが舞い上がるので、ホースから水を出して飛散を抑える。
壁材の中の、木材とアルミや金属(サッシや樋)をより分ける。

その作業は、断続的に行われるので、ユンボがガンガンに首を振っている直ぐそばを、その動きをかわしながら、読みながら、僕もロバートも作業する。

途中、現場監督から

「水、早くやれや!」

「木!まだ残っとるやろ!動けや!」

と、怒号を浴びせられながら。

 

ホコリと、水をふんだんに浴びながら、あっという間に泥まみれ。
そんな時、ユンボの首の動きがトリッキーに動いた。

バシッ!

ユンボのカギ爪に横っ面をひっぱたかれた。。。

ぬかるんだ地面にぶっ倒された。
ただ、瞬間的に右腕で顔を防御したので、顔面への損傷はまぬがれた。

「あれ?当たったんか?」

「…大丈夫です」

ファインプレー。
数日経ったが、右腕はかすかに痛む程度。
なんとかなっている。

 

カギ爪のつけられたユンボは、さながらダイナソー
現場監督の操る爪は器用に木材を破壊し、生き物のように駆動する。
お子様をお持ちのご両親は、一度解体作業を見学されると、USJとかロボットレストラン行かなくても、『ジュラシックパーク』気分を味わえるのでオススメ!
ただ、ユンボに殴られないようにしましょう。

 

間断なく続く作業。
ヘトヘト。ドロドロ。無残。
気付いたら、3時休憩がすっ飛ばされていた。

「休憩ないんですか?」

「そうみたいね」

ロバートに聞くと、そんな現場もあるらしい。

最終的に、昼に僕が剥がしたスレート瓦をトラックに積み込んで、終了。
その時間帯には、ほとんど虫の息。へたり込んで作業していると、

「キツくても、中腰でやった方がええ。座り込んだ方が疲れっぞ」

と、事務所に迎えに来てくれたおっちゃんにアドバイスされたが、ロクに返事もできないほど疲れていた。

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終わった。
何もかも、終わった気がするが、この場合の「終わった」は解体作業の終わり。

「どうやった?疲れたろ?続けられそうか?」

20代の青年に声をかけられる。

「いや、もう。キツすぎました」

「はよ、違う仕事見つけや」

満面の笑みで話す彼に、近くの駅まで送ってもらう。

駅前から動けない

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報酬は、手配師に聞いた通り
¥10,000

しかし、ここからあいりん地区までの電車代が¥500かかるので、実質¥9,500

 

ロバートと一緒に、電車で戻ろうと思っていたのだが、喉の乾きと疲労でトラックから降りた駅前広場から一歩も動けない。「先、行ってください。お疲れ様でした!」とロバートに告げる。
本当は、もう少し西成の話などをしたかったのだが、無理。すみません。

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ふと、足元を見やると安全靴が裂けている。
おそらくスレートを外す作業中に、屋根に残った釘の頭で破れてしまったのだろう。

¥980の作業靴、終了。

また、買うのか…。
ここ数日、作業靴で日常も動いていたのだが、やはり鉄板の入った爪先が痛くて歩きづらい、今日のようにしゃがみ込むような作業時には、親指の付け根あたりに鉄板の角が当たって鈍痛が続く。無理があるのかなぁ。
でも、普段使いの靴を持ち歩く余裕はない。
明日、なんとかしよう。

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新規の宿を探る余裕ナシ

ほうほうの体で、新今宮駅を降りる。
とにかく、もう安静にしていたいので、宿探しのギャンブルはやめて以前宿泊した
「パークイン」へ投宿。

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 前回は、エアコン無しの1000円の部屋に泊まったのだが、今回は暖房のあるワンランク上の1300円の部屋に。3泊したかったのだが、土曜日は一泊1800円に料金が跳ね上がるとのことで、二泊を確保。

「パークイン」は、風呂と清潔な布団があることがハッキリしているので安心。

しばし、床の上で身体を休め、風呂に。

風呂場に行くと先客がいたので、

「ココって石鹸とかありましたっけ?」

と尋ねると、

「あります!あります!全部あります!」

と全部入りを保証してくれた。

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リンスインシャンプーと固形石鹸があり、前回泊まった際には、「誰かの使った固形石鹸」への抵抗があって使わなかったのだが、もうそんな衛生観念は消え失せた。誇りと泥を洗い流す。

なんていう風呂のありがたさ!
全部入りだ。

ガキみたいなエサ

二泊あれば、洗濯物も乾く。
「パークイン」には設備がないので、近くのコインランドリーへ。お湯洗いだ!ありがたい。壁に貼ってある「地下タビ禁止」が目に入った

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洗濯の時間を利用して、ドン・キホーテへ。

冷たい甘いモノへの欲求が高じて、アイスを買う。
駄菓子で知られるオリオンのラムネが入ったソーダかき氷が¥50!
ハリボーのグミが¥100!
ジャイアントカプリコのグレープジュース味ってなんですか!

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宿に戻って、昼に食べ損ねた弁当を食べる。

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明日は、完全に休養日にせざるを得ない。

この時点では、自分の身体がどこまで痛めつけられているのか理解していなかったのだが…。

とにかく、就寝です。
お疲れ様でした!

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仕事内容
日付:2021/3/4(木)
場所:近畿地方
現場:解体
内容:屋根撤去・解体
時間:4:30~17:10
待遇:朝昼飯アリ
給与:¥10,000

西成で得た金額
10,000円

使った金額
宿泊費:2,600円(二泊分)
交通費:500円
コインランドリー(洗濯):300円
ヨーグリーナ&天然水:118円
完熟ピーチオ・レ:138円
巨峰&カルピス:100円
あなたの香ばし麦茶:100円
香りごこち ほうじ茶:84円
オリオンミニサワー氷:108円(二個)
ハリボー・ハッピーグレープ:324円(三個)
グリコ・ジャイアントカプリコ<グレープジュース味>:41円
ブルガリア飲むヨーグルト:138円
タバコ・KOOL:530円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

所持金

8,632円