2021年5月10日。
結局、ぐっすりというわけにはいかなかった。
「ぐっすり」の語源は、「good sleep」だと思っていたが、そうではないようだ。
日本語「名前」が英語の「name」から来ているとか、日本語の由来が英語であるというモキュメンタリックなタッチで書かれた清水義範の小説があった。着想が面白かったことだけを覚えている。
好きな小説の傾向や、好きな作家は年を経るにつれて変わっていく。
僕はと言えば、30代を過ぎた頃からフィクションをほとんど読まなくなった。
映画なら、思い切っり振り切った絵空事を観たいと思うのだが、字面や行間からフィクションの絵空事っぷりを読み手が補強しなければならない小説というジャンルでのフィクションをバカバカしいと感ずるようになった。
ノンフィクションが、フィクションよりもフィクショナルであることもあるのに、馬鹿げた線引きだとは思うが。
そして、最近は若い頃には見向きもしなかったハードボイルド小説などを少し囓っている。
なぜって、ハードボイルドの主人公は無駄に前向きで、常に状況を改善する努力に励み、諦めるべき時は即断し、こだわるポイントに自覚的だから。
自分の現状と重ね合わせて、「なりたい自分」をフィクションに求めているのだろう。
ハードボイルドな探偵さんに憧れる46歳というのは、なんとも滑稽だが、それが僕のノンフィクションである。
ぐっすり出来ずに目を覚まし、漫画喫茶ブース内のパソコンを開き、メールの返信など。
漫画喫茶「快活CLUB」のトップ画面には、利用者に向けたお得な情報が満載。
なんとなくバカにされているような気がするのは被害妄想だろうか。
「婚活」ね。
結婚したいもんね。
クリックすると、
「出会いがない」のが20代、30代が婚期で、孤独な40代、over45になるとパートナー不在が課題らしい。決めつけも甚だしい、が次に進む。
入会したくてたまらなかったのだが、定職も定収入もないので終了。
ネットカフェから出来る出会いは僕にはなかった。
結婚したいもんね。したくないもんね。
西成暮らしの週末を「快活CLUB」で過ごし続けたことによって、ポイントが貯まっていたので、今回の支払いは全額ポイントで補填できた。
ウーバーイーツの新料金システム
今日から、ウーバー配達パートナーに向けて新料金体系への同意が求められた。
アプリに同意事項が送付され、了承しないと配達業務に入れない。
大きな改善点は、
・これまで表示されなかったピックアップ地点(レストラン)とドロップ地点(お客さんの住所)が配達前に表示される
・「見積もり金額」という名目で、報酬が事前にわかる
この二点は、配達員にとってはありがたい改訂。
昨日も気が付けば、吹田市の新興住宅地まで飛ばされていた。
どこなんだ、この牧歌的な土地は!
配達先が事前にわかることで、自分の稼働したいエリアで仕事が続けられる。
しかし、これまで固定の「(お客さんへの)受け渡し料金」「(レストランからの)受け取り料金」に、配達ごとの「(配達にかかった)距離」で報酬が決まっていたところ、今回の改訂により「配達調整金」というウーバー側しか分からないブラックボックス状態の金額の多寡によって報酬が決まるようになった。
どっちにしろ、僕たち配達員はウーバーの作ったシステムの奴隷。
配り続けるしかないのだ。
か、すっぱり辞めるか。
ぐっすり眠るか。
定職を見つけて、結婚相手を探すか。
先行して新料金体系が導入されていた、福岡・京都の両地域配達員のtwitterやブログでの報告によると、
「短い距離はすべて300円!=スリーコインズ!」
「だいたい、報酬は三割減!」
らしい。
結婚したいはやる気持ちをなだめながら、早速配達を開始。
本当にスリーコインズであった。
僕のフェイバリットムービーである『サボテン・ブラザース』の原題は、『three amigos』である。『サボテン・ブラザース』は『七人の侍』のパロディでもあり、“虐げられた民衆のために、自らを任じて動く人”の物語。
ウーバーイーツの、スリー・コインズ・ストーリーは、“富裕層が空腹を満たすため、そして運営会社が手前勝手なシステムで、配達員を虐げる”物語であるのだが。
この日は、9時〜15時半まで稼働し、¥4,253也。
体感としても確かに「三割減」と実感。
ダブルの案件(ひとつのレストランから、ふたつの配達先の料理を一度に受け取る)でも400円にしかならなかったり、同じ距離の配達でも報酬が異なったり、ウーバーの設定した「配達調整金」が乱高下し、(主に乱下だが)
「どんな基準で配達報酬が決められているのか、さっぱり分からない」
もう、ぐっすり眠りたかった。
まあ、三割減なら、三割減の働き方をすれば良い。
何より、自分の任意の地域で配達を続けられるので、その後の予定は組みやすくなる。
こうやって、前向きに考えるのがハードボイルド小説の主人公である。
そして最終的には悪玉を拳銃でブチ抜けばいい。
フィクションは素晴らしいなぁ。
自転車を手放すか
以前の転倒からこっち調子の悪い自転車。
前輪の歪みはいかんともし難いが、チェーンの異音が激しいので、老舗っぽい自転車屋に相談。
「これは、ベアリングの交換が必要だねぇ。結構かかるよ」
と6000円を提示される。
「なるほど!ベアリングですか!やっぱりそうか!ベアリングか!」
と応じたが、ベアリングについての知識が皆無。
あの頃、『バンゲリングベイ』もクリア出来なかったのに。
「そんなに保たないよ」とは忠告されたが、とりあえず2500円でチェーン交換をしてもらう。
4000円を引き出し、扇町公園で日ごとに鮮烈さを増しつつある太陽を浴びながらボーッとする。
稼ぐのは大変。生きていくのも大変。
生きていく価値のある毎日を見つけるのも大変である。
「パークイン」に投宿。
風呂に入らねば、と思いながら荷物を解くのも面倒で、そのまま横になったら、いつの間にか眠っていた。ぐっすりと。
収入
4253円
使った金額
貯金:253円
宿泊代:6400円
駐輪場代:150円
自転車店(チェーン交換代):2500円
歯ブラシ:194円
ふっくらバーガーてりやき:125円
菓子パン・ブレビアン:117円
バナナカステラ:106円
かるえだまめ・枝豆味:158円(二個分)
アカギ・オツカレモンヨーグルト:151円
チェリオ。レインボーウォーター:100円
メロンオ・レ:117円
カルピス・濃いめのカルピス:84円
伊右衛門・濃い味:160円
コカコーラ・アクエリアス1日分のマルチビタミン:160円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール1mm:400円
所持金
5,064円