暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。79日目 「杉作ミーツたけしに感動する」

2021年5月21日。

ほとんど床に付していた。
旅先で病に襲われることの心細さたるや筆舌に尽くし難い訳であるが、いま僕は西成で暮らすという死出の旅の真っ最中であり、生き方の転換に挑まんとする人生の分岐点を旅している。つまり、大変に不安なのである。

昨日から続く、頭痛や手足の痺れは、その勢いを保ち続け、どんよりと曇った外に出向くこともままならず。

当初は、本日で「パークイン」を出る予定であったが、一泊延泊を受け入れてもらい、ずっと横になっていた。

茜さす部屋の壁。
何も考えたくない時ほど、何かを考えてしまう。
その思考をより具体にすればするほど、さっぱりパッとしない明日しか思い浮かばない。

偶には怖がらず明日を迎えてみたいのに

作詞・作曲:椎名林檎
『茜さす 帰路照らされど…』

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Jの語り

「J」といえば、誰だろうか。

千原ジュニアか、ジェームズ・イハか。
僕にとっては、杉作J太郎。その人である。

 

夜になって、いくらか体調がましになったので、タバコを買いに外に出て、radikoのタイムフリー機能で聴き逃していた『杉作J太郎のファニーナイト』を聴取。

5/20の放送では、杉作さんが、『笑っていいとも』の前番組にあたる『笑ってる場合ですよ!』に、友人とコンビを組みコントでオーディションを通過、生放送に出演したエピソードを話されていた。

書かれた物としては読んだことのある逸話であったが、杉作節で聞くのは初。
まったくの素人であった杉作と相方のいた部屋に、タバコを吸いに突然現れ、出ていく際にビートたけし
「がんばれよ」
と声をかけた話。

その後の生放送での展開、後年杉作さんがたけしさんとテレビで共演した際の出来事も含めて、大変に感動。

乙女パスタに感動。
ブサメンたけしに感動。

同番組で自分のメールが読まれた回以来、その部分を録音し、何度も聞き返す。

 

仮に杉作J太郎が、著名にならず世に出なければ、ビートたけしが素人にかけた言葉など埋もれたままのはずである。
「一回性のビートたけし
を見たことが僕にもある。

あれは、『キッズ・リターン』の初公開時であるから、1996年。
東京に住んでいた友人の家に世話になりながら、僕は大学の夏休みの2ヶ月を花の都で過ごしていた。

ちょうど、新宿で友人とともに『キッズ・リターン』を鑑賞し、その強がりの美学に痺れ、翌日に「たけし巡礼」を決め込み、足立区から浅草、四谷などビートたけしゆかりの地を探索しようとしていた時だった。

「この辺の球場で早朝野球とかしてるはず」
神宮外苑を彷徨い、
「まあ、そりゃやってねーか」
と、かつてたけし氏が住んでいた四谷に向かおうとしていた折、青山通りの地下にある喫茶店からユニフォーム姿のビートたけしが姿を表したのである。

キャップを斜めに被ったビートたけしは、周囲を見渡し誰かの到着を待っている風であった。
通りに目をやりながら立っているその人を見ながら、
「本当にいるんだなぁ。野球やってるんだなぁ。カッコいいなぁ。顔面麻痺もカッコいいなぁ」
と固まってしまっていた。

隣の友人は、「オイ!たけしじゃねーか!サインもらってこいよ」と、急かしたが、僕にはそんな大それたことを申し出る勇気などなく、ただただ憧れの存在が目の前に居る現実に呆けていた。

時間にして数分であったと思うが、やがてたけし氏は待ち合わせていた人物を見つけ「遅いよ、バカやろう」と笑顔を見せながら地下への階段を降りていった。
その時、たけし氏はバカっ面の大学生約2名に気が付き、軽く会釈をしてくれた。
あの、たけしと目が会い、しかも挨拶したぞ、たけしが!

その記憶だけで、50年はメシたらふく食べられる。
と、当時は思った。今も鮮明な記憶である。
時は流れ、メシはたらふく食ってないけれど、大切な思い出である。

驕らない奢り

「いい人たけし」
みたいな逸話は、それこそ山ほど語られているが、もっともポピュラーな、後輩芸人が食事先で会計をしようとしたら、
「もう、お代はいただいております。たけしさんから」
という奴。

後輩への愛情や芸界でのしきたりが滲み、たけし氏自身の「自分はたまたま売れた人間であり、その裏には死屍累々の芸人がいる」という想いの直接的な表明、同時に「もし、俺が売れなくなったら、アンちゃんの番組で使ってね!」というけして驕らない奢り方の逃げ口上までを包摂した鉄板のお話。

一方、僕はといえば、この「お代はいただいております」をこれまで一度も遂行したことがないし、遂行する器でもないし、遂行する財力もないし、遂行するべき仲間もいないし、これからも一度も遂行しない、できないような気がする。
ああ、だらしのないことよ。

 

Jとたけし、という自分にとって大好きな人同士の邂逅に触れて幸せな1日であった。

それが、ただ、寝ていただけの今日の出来事である。

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使った金額

宿泊代:1300円
コインランドリー(洗濯):200円
ハッシュドポテト:80円
ミミガー:240円
サンガリア・まろやかバナナ&ミルク:90円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二個分)

 

所持金

12,867円