2021年8月1日〜8月5日
早朝5時半にフェリーを降りる。
同乗していた数組の旅客は、迎えの車で去って行ったり、思い思いの方向に散っていった。
当たり前だが、誰のお迎えもないので、しばし途方にくれる。
暇にあかせて、フェリー乗り場のクレーンゲームに課金しなかった自分を褒めてあげたい。
まだ、バスも動いていない時間帯なので、レンタサイクルを行使する。
ちなみに僕は、30の時に合宿で普通自動車免許を取得したが、免許はあっても鉄の塊を衆人環視のなか、老若男女を殺害する危険を犯しながら、公道を走らせる能力と気概がない。
マンションを引き払う際に、トランクルームまで荷物を運ぶ際に、コーナンで無料貸し出しの軽トラを借りて運転してみたのだが、左折だけして駐車場に戻り、「ちょっと時間ないんで返します!」と宣言して退却した。
どうしても、バックする際の右左がわからなくなるし、ハンドルを不必要なレベルで切りまくるし、何よりも運転途中に、もうどうでも良くなる瞬間がある。何が出来るんだろうか、マジで。
温泉街・別府の実力に服従する
一生、自転車を漕ぐのだな…と独りごちながら、別府駅まで移動し、街中にある温泉をハシゴ。
これが想像以上に楽しかったので、別に書きます。
画像だけ。
途中、八幡潮見神社に参拝。
とかしないで、一直線に社務所に行き、交通安全ステッカーを購入。
基本に忠実なオーバルスタイルだが、この丸形ステッカーにはオレンジ色ベースのものが多いので、朱色なら即買い。まったく、タメにならない情報。
別府〜中津
鉄道により、別府駅から中津駅まで移動。
駅のホームで、「鶏めしおにぎり」を食らう。
博多でやわっやわのうどんを啜る際には、そのお供として「かしわめし」および「かしわめしおにぎり」を食うのがマナーであるが、大分では「鶏めし」。
「鶏」と「かしわ」は同義なので、結局は鶏だしで炊いた甘めのお米をふんわりと握ったものである。
結構、このふんわり感が重要なので、全国的にコンビニで売られているようなおにぎり版・かしわめしは、どっしり感が強いのでいただけない。ので、いただかない。
コチラの「鶏めしおにぎり」はふんわり名人であった。ふんわり名人は、きなこ餅がいただけける。お分かりいただけただろうか。
東中津駅近辺に住む、天才クリエイターと合流。
今回の大分県訪問は、彼女と一緒に動画を撮影することが目的である。
小柄で、やや面倒くさいタチの女であるが、才能は確かである。
若さと才能、才能を持て余す若さ、行き場を求めて彷徨う才能、眩しい限り。
撮影のために、彼女がまとう衣装を買い求めに「ゆめタウン中津」へ。
「この自販機だったら、絶対リアルゴールドですね!」
若い感性はよく分からない。
「ゆめタウン中津」は、なかなかの人出。
ド暑い路上には人っこ一人いないが、モールに来ると地元民が全員集合しているという郊外都市のモデルケースは、ここ中津市でも常識である。
ここに来れば、場外馬券場はあるし、
有害図書ポストはあるし、
なんでも揃うはずなのに、衣装がなかった。
その後、ホームセンターなどを巡り、それらしい衣装を手に入れる。
「暑い、暑い!もう、アンタのアパート行こうや!」
「盛籠」の謎
ところで、「ゆめタウン中津」のエスカレーター下の一角には、慶弔時の花飾りとは一味違う明るい色調の花輪が並んでいた。
この「盛籠」。
お盆時期にお中元的な意味合いで、贈答品を花で装い送る、大分県の風習であるようだ。
知らなかった。
ゆめタウンが教えてくれることは多い。
紙コップで飲むリアルゴールドの旨さと、盛籠の存在である。
「盛籠」と聞くと、なんとなく「置鮎龍太郎」を思い浮かべてしまったが、出身地は北九州市のようなので、ニアピン。
東中津へ
「何にもないんで。ど田舎なんで、期待しないでください」
と事前に釘を刺されていたが、確かに東中津は絵に描いたような田舎町であった。
彼女は、絶対的ラバーと同棲しているので、愛を育む二人の居室にお邪魔するのは気が引けたが、これは仕事である、朝から温泉をハシゴしまくったが、あくまでお仕事として来ているのである。
駅からしばし歩き、彼氏と合流。
申し訳ないすね。お邪魔しますわね。すみませんです。
腹減ったな、ということで、二人が行きつけの、巨大なパフェが美味しいお店「ウォーターバレー」へ移動。
まさかのタクシー移動。
「こんな昼間に、歩いてたら、死にます」
若い才能は、優しく育てなければならない。
当たり前のように彼氏がタクシー代を払ってくれる。
ただし、これは声を大にして言っておきたいが、帰りのタクシー代は僕が払った。
流石にね。
しかし、この栄養過多なパスタと、ヨーグルトドリンクのお代は、当たり前のように奢ってもらった。
流石だね。
食事をしながら、3人で歓談。
明日からの撮影の段取りと、これからの案件の展開などを話す。
彼氏は才能も含めて、丸ごと彼女を愛しているようで、眩しい。
目が潰れそうである。
途中、
「それ、もらっていい?」
とか、イチャついた感じも表出してきたので、眩しい。
耳を潰したい。
アパートは居室内は一応禁煙指定であったので、ベランダで煙草を吸いながら、取り留めのない話などして暑い午後をやり過ごす。
こうやってヤニを介してでしか話せないような気楽さもある。
やりたいことと、やれること。
そのための時間、時期など、若い頃は無駄に焦燥感に追い立てられるものだ。
僕も30になった時に、何者でもない自分を確認して、眠れなかったものである。
今や、一生何者にもなれないことを確認して、ぐっすり眠る訳である。
以前に彼女は『ウォレスとグルミット』好き、彼氏は「昆虫食」好き、という情報を掴んでいたので、前者はオークション系で探し、後者は西成のホテルで出会うGなどを捕獲してお土産として持参したかったのだが、前者は良さげな物が見つからず、後者は捕獲する瞬発力と勇気に欠けていたので叶わなかった。
「松山あげ」食うてください。
あわよくば、このアパートの片隅にでも泊めてもらえたら…
と画策していたのだが、彼氏にあっさりと、
「イヤです!」
と却下される。
なんだよぉ。
ただ、僕でも断るだろう。なんで、このオッサン、ブタ面してここにいるんだよ。
若い二人を尊重せねばならない。
こうやって、ハッキリした物言いをするべきなんだよな。僕も昔からそうしていればよかった。
夜まで東中津に滞在し、慌てて確保した「中津サンライズホテル」に投宿。
明日は、朝イチで再びここに戻って、撮影である。
「朝早すぎるのイヤなんで、ゆっくり来てください」
若い才能は、時に甘やかして育てていかねばならない。
仕事した感じを装う
早朝に起き、ホテル併設のコインランドリーで洗濯。
中津駅そばにある、「中津サンライズホテル」は楽天トラベルから3000円で、朝食付。
現場仕事に出かける装いをした方も多く、それなりの人数が朝食会場にはいた。
和食or洋食の選択で、「和で!」と頼んだら、調理のおかあさんが、
「ハイ!和ー!ワー!」
と、勝どきをあげ、良心的和食朝食をいただく。「おかわり自由」とのことで、白米をせびったら、
「ハイ!おかわりー!」
と、再び勝どきをあげてくれたので、なんだか僕もワッショイな気分の朝を過ごせた。ワー。
ホテルのエレベーターには、長期宿泊客への注意書きがあり、よれば
「保健所の衛生管理規定による5日に1回の清掃」
とある。西成安宿では、そんなに清掃入んない。簡易宿泊所とホテル旅館では規定が異なるのかも知れない。
中津駅から、一駅電車に乗り、東中津へ。
駅から10分程度歩いて、クソ田舎という形容がふさわしい景色をやり過ごしながら、しかし、自分の故郷もこんな場所で、そしてけして嫌いではないのだということを確認しながら、天才クリエイターのアパートに到着。
呼び鈴を押しても、まったく玄関ドアが開け放たれる気配がない。
LINEを送ったり、チャイムをびっくりするほど連打して、ようやく、びっくりするほど不機嫌な起き抜けの才女が現れる。
おはようございます。
料理の様子を撮影するのに、ブロック肉を購入するのを失念していたので、再びド暑い、ぬるたい空気に飛び込んで、往復30分かけて買い出し、など。
かなりいい加減な仕事ぶりだったような気もするし、暑いから仕方がない気もする。
天才クリエイターにはご迷惑をおかけした。
「天才クリエイター」とか、小馬鹿にしているみたいな書きぶりだけれど、本当に天才的だと思っているので、承知しておいてもらいたい。ちょっと、撮影素材に不備があるかも知れないが、その天賦の才で成果物は上手くやっておいてください。
料理動画の成果物でカレーが出来上がったので、美味しく食べる。
食べたら、ヤニる。
二人して、ダラダラとダベっていると、愛しの彼氏が帰ってきたので、一人でできる構成作業などに勤しむ。お前らは、乳繰り合ってろや。
やがて、本当に寝室へ二人して行ってしまって帰ってこなくなったので、本当に乳繰り合ってしまったのではないか?と、出歯亀しに覗いたら、並んでスヤスヤと眠っていた。
21時過ぎまで、サイトの構成をそれなりにまとめ、置き手紙をして帰った。
「中津といえば唐揚げ」のはずだ
翌朝も、少し残っている撮影をするべく、東中津に移動。
昨日にも増してブーたれた寝起き面で現れた才女をモデルに、近所で撮影。
「暑いから20分しか屋外にはいられません」
という注意事項を頭に入れ、昨日来、軽くロケハンしていた箇所を捨てて、ド近所でシューティング。
お疲れ様でした。
本日は、彼女も含めたオンラインMTGの開催日。
せっかくなので、何が「折角」で「なので」なのか判然とはしないが、中津まで出てカラオケボックスに入り、二人して大声を張り上げ、メローイエローとカルピスを混ぜた飲料などで、潰れかけていく喉を潤す。
お互いがお互いで、全くジェネレーションの異なる曲群を歌い上げる訳だが、時々、ピントが鮮明に合う楽曲などもあり、声を合わせてシンガロング。
にしな『ヘビースモーク』がうろ覚えで、しっかり歌えなかったのが大変悔やまれる。
「あれ、そこ?カラオケですか?」
と秒でバレる。
「違います。コワーキングスペースだと思います!」
福岡へ
ところで、
中津
といえば、
唐揚げ
が有名である。
はずなのに、市中を歩いていても、そんなに唐揚げを扱っている商店を見かけない。
名ばかり唐揚げタウンか?そうなのか。
「私も意外と唐揚げ食べてないんですよ、まだ」
と、天才クリエイター。
まあ、君は中津ではなく、東中津に住んでいるから、東中津はからあげタウンではない。
ただ、せっかくなので「からあげグランプリ金賞」店で、テイクアウト。これは正真正銘、「折角」な行為である。
駅前のベンチで、唐揚げを頬張りながら、これからの生き方などについて話す。
こういった機会に、人生という行路の先行者として、タメになる、或いは徳を積んだヒトとしてのアドバイスなど出来れば良いのだが、一切無内容な返信しかできなかった。
まあ、アナタには、アナタを信じている、アナタを必要としている人生の伴走者がいるから大丈夫。絶対に、僕のような無内容な人生にはならない。安心してくれ。
昼前には、彼女の元には上質な牛肉が定期的に送られてくるという話になり
「食わせてあげますよ!」
的な展開になったのだが、嘘をつかれた。
この喪失感は、金賞からあげでは埋められない。
また今度会えたら、食わせて欲しい。アナタが忘れても、僕は忘れない。
3時間ほどかけて、鈍行で福岡へ移動。
目の前の座席の足元にカット野菜が転がっていた。
ゆっくり、食べればよかったのにね。
昼間のオンラインMTGで、参加者のお一人に、今夜の宿泊を懇願したら、快く応じてくれたので、お邪魔する。
家庭持ちの同い年のおっさんであるが、入れ違いで、奥さんと子どもさんが部屋を出奔する様子に出くわす。
「なんか、人が泊まる話になったら、今晩は実家に行くって」
全然、「快く」「応じてくれた」訳ではなかった。
すみません。
宿代をケチるから、こういう事になる。
ごめんなさい。
と本当に思って、本当に申し訳なく思っていたのだが、彼の奢りの缶ビールを空けまくり、なかなかに進捗せず、逃げている西成暮らしの愚痴などを聞いてもらう。
まったく、申し訳なさを態度にあらわさない所業であった。
名古屋の会社の企画案件が上手くいっていたので、調子こいて「俺、天才す!」みたいな話に終始。よく、呆れずに耳を傾けてくれていたものだ。
すみませんでした。
彼は、同い年で、福岡の会社では机を並べて仕事していた。同じ時間モニターに向かっていても、僕はAVgleしか見ていなかったのだが。
まともに、家庭を作り、生活を編んでいる人と話すと、それが自分に跳ね返ってくるので落ち込む訳であるが、家庭を育んでいくのは、それはそれで当然気苦労は多いようで、ガキんちょとかと向き合うのは大変だよね。
でも、楽しそうです。頑張ってくれ。
深夜になって、布団を並べて就寝。
福岡二日目
昼メシを近所の中華料理屋で奢ってもらう。
はなから、財布を持参せずに外に出た。確信犯にも程がある。
昼間からビール。
彼はたいがい、瓶ビール。おっさんだな!
コロナで制限下だが、
「酒出して大丈夫なの?」
「大丈夫!大丈夫!」
豪快な女将さん。
適当に、酒のアテにと頼んだ「舞茸の天ぷら」が存外に美味であった。
夕方近くまで、東京オリンピックの女子バスケなぞを眺め、出発。
お世話になりました。
また、奢ってね。
知人に連絡を取り、一宿を求めたところ、帰りがかなり遅くなるので22時頃で。とのこと。
レンタサイクルを借り、東区まで移動する途中、中洲で「元祖長浜屋」でラーメン一杯放り込む。
時間があるので、志賀島まで自転車を漕ぎ、愛媛の「松山あげ」をそっとドアノブにかけて、そっと去る。
結局、40キロばかし自転車を漕いで、汗だく。
知人と合流し、一宿どころか一飯、一風呂、多量の酒類を掠めとることに成功する。
お世話になりました。
大阪へ戻る
しっかりと「青春18きっぷ」五日分を使い切って、小倉や下関、糸崎で途中下車し、糸崎の駅前で名古屋の会社のzoom打ちに参加する。
「なんで、外からなんですか(笑)」
と一斉にツッコミが入ったが、
「そんな日もあるんですー」
とやり過ごし、移動中にまとめた新しい企画案を提出。
西成に戻り、自転車で天満に移動し、南天満公園にて野宿。
明日は、ウーバーイーツで稼がにゃならん。
使った金額
交通費:420円
レンタサイクル代:1943円
宿泊費:6000円
雑費:4206円
食費:3021円
所持金
4,027円