暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

最後の、今週のナンバーズ4報告

3/10

購入番号「2410」

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当選番号「2925」

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 3/11

購入番号「2411」

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当選番号「6030」

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3/15

購入番号「2415」

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当選番号「3557」

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まとめ

 

という訳で、思いっきしタイトルに「最後の」と題してしまった。

いつもコメントをくださるmoccheeさんのアドバイスもあり、宝くじなんぞに身をやつすのは辞めます!

www.mocchee.com

 

実際、売り場に行って宝くじを買うのが億劫になっている自分と、なんのワクワク感も見出せていない自分に気付いた。

ちなみに「ワクワク感」って、WEBまわりの人たち大好きですよね。
プレゼンの時、「ワクワク感が足りないんですよ!」ってほざいておけば何とかなった。
そんないい加減な仕事してるから、今西成にいるのかも知れないけども。

横道行きましたが、この心持ちでナンバーズを買い続けても、当選した時に何の感慨も得られないように思う。
少なくとも、汗を流して働いて、食べて、寝る、という生活を希求している今の自分にとっては価値を見出せなかった。

始めたからにはやり抜け!という向きもあるとは思いますが、辞めたかったら辞めろ!という向きもあろうと存じます。

ザ・企画倒れ

また、なんか考えます。

さようなら、ランダムな数字を記させて、胴元が絶対に損をしないシステムで、夢という名目を掲げて、小銭を使わせる貴方。

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西成で暮らす。15日目 「お得情報いっぱい」

2021年3月15日。

週が明けて月曜日。

漫画喫茶で7時に目を覚ます。
無料の朝食のフライドポテトでまた胸を焼く。
無料だからしょうがない。

自転車を漕ぎすぎて、ケツと太ももが痛むが、午前中はウーバーイーツを稼働する。
やはり平日は依頼の来る頻度が薄い。
3時間半で、¥2,821。
北浜のオシャレなカフェには行列が出来ていた。

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ランクルームからバックパックを回収し、西成に戻る道中、腰が痛くなり公園でしばし寝そべる。ほぼほぼリアルにホームレス街道まっしぐら。
もっと暖かくなれば、野宿でもいいス。

 

すっかり保守的になってしまったので、安パイの「パークイン」を楽天で予約。
楽天トラベルから予約した方が、現地決済よりもお得である。
とっても重要な情報を発信した自覚があります。

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金曜日まで5泊分の宿代を払う。

少しばかり懸念していたことだが、部屋の両サイドに“フック”が1個しかなく、洗濯ロープを引っ掛けられない。棚の中のハンガーポールに巻きつけるしかない。

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結果、こうなりました。
部屋の中で、リンボーダンスをするが如し。

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 「パークイン」で2階に宿泊するのは初めて。
トイレが非常にキレイであった。禁煙だし。
この宿は、女性の利用も可能なので、淑女のみなさん!近代的なトイレスペースのある2階へどうぞ。

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 洗濯をするために近隣のコインランドリーへ。
コチラはなんと!洗濯用洗剤を無料で提供!
もう、なんでも無料に飛びつく。貧すれば鈍す。

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この時気が付いたのだが、どうやら「ビジネスホテル スバル」に、なけなしのビオレuを忘れてきたらしい。
今さら、

「ビオレuの詰め替え用なんですけど…、僕あれで全部まかなってたんですけど…、落し物ないでしょうか?」

とか聞いて回るわけにはいかないので、洗濯時間を利用して、新たな「ビオレu詰め替え」を購入。高けーなぁ。これは無料にならんのか。ならんか。

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スーパー玉出」で夕食を買い、洗濯が終わるまで、ガリガリ君リッチほとばしる青春の味レモンヨーグルト味を嗜む。検索すると、この商品は2015年に発売されたようだが、絶対現行商品ではないだろう。なぜ、今西成で手に入るのか?謎にして、大発掘である。

とっても有益な情報を発信した自覚があります。

www.akagi.com

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商店街では、山下清画伯の作品が売っていた。
五万円は破格なのでは?真贋は、わからない。

とっても貴重な情報を発信した自覚があります。

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宿に帰って、大浴場で髭を剃りました。
西成に来る前は、無精髭伸ばし放題だったのに、なぜか最近は毎日のように髭を剃る。
荒んだ生活のなかで、少しでも身ギレイさを保ちたいと思うようになったのは、自分にとっての発見である。

明日は4時前には起床して、仕事に行くぞ!

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使った金額
宿代:6,175円(5泊分)
ナンバーズ4:400円
コインランドリー(洗濯):200円
ビオレuさらさら詰替:316円
ランチパックメンチカツ&焼きそば:160円
ごぼうの天ぷら:324円
クリスピーチキン:324円
イケダヤ・玉ねぎせんべい:138円
イケダヤ・青しそせんべい:138円
果汁グミ・マスカット:84円
果汁グミ・ぶどう:84円
ガリガリ君リッチほとばしる青春の味レモンヨーグルト味:106円
食事の脂にこの1杯。プーアル茶×烏龍茶:171円
チェリオ・ミックスフルーツオ・レ:100円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

10,527円

 

西成で暮らす。14日目 「終日ウーバーイーツ」

2021年3月14日。

日曜日。
今日は、ウーバーイーツの日。

ウーバーをやる!と決まっている日は、西成現金仕事への恐怖がなく、しかも日曜なんだからウーバーイーツやるしかないんだ!と自分を納得させることが出来る。

 

朝8時には、「ビジネスホテル スバル」を出奔。
30分かけて天満のトランクルームへ。
この自転車移動が地味にしんどいんですよね。

用意をし、9時前から稼働し、途中適宜休憩を挟みながら13時間稼働。
今日は、¥20,464の上がり。
西成労働よりも割りが良い。身体的に。
けれど、ウーバー周りの体験談を語っている人は沢山いますから。僕の任ではない。

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水曜、木曜の稼働分と併せて、総額¥29,622。

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今月締めで請求があるはずの、トランクルーム代・携帯料金のために¥13,000を残して、¥16,000を引き出す。

ウーバーで商品を受け取りに行ったサラダ専門店のお姉さんから、

「コレどうぞー!いつもご苦労様です!」

と、チョコレートをいただいた。

「ホワイトデーですよ!今日は!」

と可憐極まりない笑顔を見せてくれた。
誰が男から女とか、女から男とか、チョコとか、クッキーとか、バレンタインとかホワイトとか決定しているんですか?
とにかく嬉しかったんだからどうでもいい。
こんな瞬間、西成労働にはないよ!
ありがとうございました!

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ソフトクリームの味わい

終了時間が0時を回ったので、先週泊まった漫画喫茶『快活CLUB』へIN。

もう、ウーバーイーツの後半はココでソフトクリームを頬張ることしか考えていなかった。

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 僕にとってのソフトクリームのランキングをつけるとすれば、

  • 120点・幼少時に地元の丸越百貨店の屋上で食べたソフトクリーム(思い出補正20点)
  • 90点・ミニストップのソフトクリーム
  • 75点・観光地で食べるプレミアム生ソフトクリーム『クレミア』
  • 50点・『快活CLUB』の食べ放題ソフトクリーム

ということになる。

正直、『快活CLUB』のソフトクリームは、なめらかさや繊細さに欠ける。
しかし、である。
50点のソフトクリームを二回食べたなら、もう100点である。
三回食べたなら、四回食べたなら、倍々ゲームでもう他のソフトクリームなんてバイバイ。
ごちそうさまです。

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漫画喫茶で眠るのは、しっくりこないが仕方ない。
西成安宿がしっくりきていると言いたいわけでもない。

デブの図体から発せられる、いびき問題があるので、鼻にかます「いびき軽減クリップ」をして眠ったのだが、当の本人のいびきが如何ほどだったのか?確かめる術はない。 

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収入
29,000円

 

使った金額
ランクルーム(月額):10,000円
携帯料金(月額):3000円
漫画喫茶宿泊:2,000円
駐輪場代:150円
マグドナルド・倍チーズバーガー:240円
白あん入りメロンパン:138円
チーズナン:324円
麦の粗挽きソーセージパン:130円
乳酸菌ドーナツ:100円
ファミチキ:174円
おにぎり・手巻きシーチキンマヨネーズ:134円
ごぼうと蓮根サラダのパン:149円
鶏レモンから揚げ棒:138円
不二家・ルックホワイトラバー:127円
ヨーグリーナ&天然水:95円
サントリー・天然水はちみつ梅:100円
サンガリア・素晴らしい烏龍茶:100円
キリン・小岩井ミルクとココア:80円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二箱)

 

所持金

19,647円

 

西成で暮らす。13日目 「西成タバコ事情」

2021年3月13日。

今日はお休みです。
体はじょじょに西成労働に慣れてきた気がする。
多分です。

昨日、「ビジネスホテル スバル」を一泊延泊したので、ゆっくり。
ゆっくりしてる時間的余裕も金銭的余裕も、本当はないんだけどな。

まずは、昨日しっかり洗えなかった安全長靴を洗面場で洗う。

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しっかり洗っておかないと。
また、バックパックにしまいこんで持ち歩かねばならない訳で。

じつは「ビジネスホテル スバル」昨日は少しトラブルがあったようで。
22時過ぎに、下の階から「ウエー!ふざけんなぁ、オイ!!」と叫び声がとどろき、防火シャッターがガチャガチャと音を立てていた。
「ふざけんなぁーーーーー」と思うことは、感じることは多い。けれど、物にあたってはいけません。壁掛け時計が壊される等の被害があったようだが、一夜明けて、何事も無かったような土曜の朝である。

直接の関係はないだろうが、泊まっている4階の洗面場とトイレが使用禁止になっていた。
長靴も5階まで階段を上がって洗った。

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そのため、用を足したり、西成水を補給したり、歯みがきする際には他の階に階段で移動せねばならない。

地味にしんどい。
この程度の脚部の上げ下げでしんどい。

この際、まず1階上がってから後で下るのか。
まず、1階下がってから、その後登るのか。
という大問題が発生することに。

僕は、比較的「美味しいおかずを後で取っておく派」なので、最初にツラい登りをやっつけてから、後で楽をするスタイルで過ごす。
給食の時も、クジラの竜田揚げは最後に食べました。

大箱のアメスピは西成に残っている

午後になったが、働かざる者食うべからずの理を遵守するため、今日は絶食。

途中、激安自販機で、広島カープ公式スポーツドリンク『スポリカ』が、¥50で販売されていた。カープファンは買い溜めすべきだろう。賞味期限は過ぎ去っているが…。僕はカープファンではない。なら、なぜ取り上げた?
甘い飲料が飲みたかったからだ。でも忍の一字。

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タバコ屋に寄って、いつものアメリカンスピリットメンソール9mmを買い求める。

アメスピのメンソールの。ソレの横の9ミリの、イヤその上の」

店番のおばちゃんに所望の品を伝えるのに苦労する。
アメスピは同じ緑色の色味の濃度を微妙に変えて販売しているので、「黄緑!」とか「モスグリーン!」とか「ビリジアン!」とか伝えても、うまく伝わらない。「ビリジアン」の捉え方も千差万別。

 

「大きいのもあるけど。どうする?」

アメリカンスピリットはメンソール銘柄だけ、昨年から20本入り¥570売りを辞め、14本入り¥400のパッケージに移行。しかしこのタバコ屋には20本入りが残っていると言う。

「20本入りあるんですか!じゃあ、ソッチください。アメスピはあんまり売れないんですか?」

「イヤ、違うんよ!いつもコレ買っとった人が吸う銘柄変えたんよ。だから、余っとる」

「ああ、なるほど。そういうことがあるんですね」

「そーう。それが一番私らは困るんよ。でもね、『まだ大きいのあるん!』って喜ぶ人もおらすよ」

ああー、その喜ぶ人って僕です。

 

「ちなみに、西成ではタバコって何が一番売れます?」

「そうやねぇ。どれも変わらんよ」

「『エコ』ーとか『わかば』が売れる訳でもないんですね」

「そうでもないねぇ。タバコにはお金かけるっていう人も多いと思うわ」

「タバコって最近売れますか?」

「ここでは、ずっと売れますよ。そら昔よりは減ったけどね」

 

という訳で、アメスピの大箱を買いたい方は今すぐ西成へ!

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西成のゲームセンター

萩之茶屋本通商店街でゲーセンにも寄ってみる。

ゲーセンには、「中坊が溜まって騒いでいる」という昭和のイメージしかないのだが、西成では昼間っからおっちゃんたちが麻雀や将棋の筐体に向かい合っている、あとパチンコ台が多数。

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春は近づいて

三角公園では、猫VS鳩のバトルで盛り上がっていた。

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西成警察に面したメインストリートの植栽が花を開かせていた。

コレは…、モクレンで合ってますか?
花の名前がわからない無粋な男です。

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夜は、唯一残しているサブスクサービスであるNetflixで、映画を一本観る。

www.netflix.com

『モキシー 〜私たちのムーブメント〜』

 

余裕があったら、今度感想でも書こうと思います。
映画を観ている間は、何もかもを忘れられる。
ただ、西成安宿では「音を立ててはダメ!」イヤホン必須。

リアル『クワイット・プレイス』だココは。

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使った金額
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:570円

所持金

8,626円

西成で暮らす。12日目 ②「木偶の坊」

2021年3月12日。②

 

前回からのつづきです。

nishinari-lives.com

 

会社のある場所からさらに移動する。

途中、コンビニに寄って昼メシを購入。今日の現場は昼メシは出ないようだ。

「お屋敷」
という形容がしっくりくる邸宅。広大な面積。何棟もの上物に大きな庭。
すでに、解体作業はいくらか進んでおり敷地内にはユンボが二台スタンバっている。

屋根瓦の下に大量の藁が仕込まれた旧日本家屋の骨組みがむき出しになっている。
作業員は僕、ユンボを操る監督、その他解体物をトラックに積み込む&仕分け作業をする職人が2人。

道具の置かれたまだ取り壊しが始まっていない家屋に荷物を置き、8時前に作業がスタート。
解体時には、ホコリが舞うのを防ぐため、ホースによる放水を行うわけだが、

「とりあえず、その藁の塊に水かけ続けて!」

との指示で延々放水を続ける。
放水作業は、消防作業に似ている。
消防作業をしたこともない、僕が言っているから信用性は著しく低いが。

ユンボで家屋の柱や壁をぶち壊す際、粉塵が大きく舞う。
この時、瞬時にホコリの発生元を見極めピンポイントで放水を当てねばならない。
また、崩落物が地面に落ちた際にも、第二陣でホコリが立つ。その場所にも的確に放水しなければ、ホコリを抑えることができない。

以前の解体現場では、放水専従の人間はいなかったので、放水したのち解体物の仕分けをする必要があったのだが、今日はズーッと放水。

「ソコ水かけな!もっと右」

など、指示を受けたり、

ホースのジェットノズルを直接ホコリの発生元に当てるのではなく、ノズルを上向きにし、左右に揺らしながら、雨を降らすようにするテクニックも教わる。

10時半の休憩までは、ズーッと放水。
「手がダルいがな」程度の疲労しかない。
ありがたい!最高!解体、最高。

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一転してハードワーク

しかし、そうは問屋が卸さない。おろす訳がない。

休憩後は、放水をしながらも、ユンボの動きを読みながら、木(職人さんは『シバ』と言っていた)・アルミ・ゴミを仕分けていく。

静止から行動、ストップアンドゴーを繰り返す。
「これは、ハムストリングに来るな…」

しかも、午後からは雨も降り出した。
雨中の中、泥まみれで作業する。

冷静に指摘される

今日の現場の職人さんは皆、寡黙に淡々と作業をこなす。
そして、指摘が鋭く的確。

「ソコ、右から水当てろ」

「シバは運ぶより、投げた方が早いやろ」

「そんな持ち方するな。まとめて持て」

など、解体作業の効率化においては至極真っ当な指摘をされるので、そんな当たり前のことが出来ない自分が情けなくなる。
ならば、とにかく動くことで経験の無さをカバーしようとするが、下手に立ち回ってかえって他の職人の動きをジャマしてしまう。裏目裏目
「一体、僕に何が出来るんだろうか…」
落ち込んでしまう。

 

放水オンリーなのかしら!
とタカをくくっていた初っ端から一転、精神的にも肉体的にもキビしい時間が過ぎていく。

昼休憩の頃には、雨は本降り。
天気予報を見て、雨具は持って来ているが、すでに汚れまくった作業着のままでいい。
動きまくって汗はかいているのだが、寒さも募ってくる。
コンビニで買ったおにぎりと菓子パンを食べて、ただただ雨に霞む眼前の壊されゆく大邸宅を眺める。

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グッチャグチャです

雨と泥まみれ。

今日も仕事が終わる。

被害者意識が強いクセに、承認欲求意識も旺盛な人間は厄介。
僕がそれなのです。

各職人さんに

「ご迷惑おかけしました。上手く動けませんでした」

と声をかけたら、

「何のこと?全然OKよ」「とんでもない。お疲れさん」

と返してもらい。自分が情けなくって、泣けてしまう。

 

雨によって、疲労が大きく増したように思う。
キビキビした動きの職人と、明らかに空回りしていた自分の差を思い知らされた。

加えて、それぞれの職人さんが終始僕を呼ぶ際に「土工さん!」と呼称していたのも印象的だった。そう呼ばれる度に、「ああ!僕は土工だった」と再確認するんだけど。「土木さん」という表現はかろうじて自分がこのチームの一員だと感じさせてくれた。見下されていないと感じられた。優しい人たちだった。感謝したいです。

「西成は楽しそうやん!」

帰りは最寄りの駅まで監督さんに送ってもらった。

「すみませんでした。動きが鈍くて」

「いや。大丈夫やったよ。お疲れさん」

すでに、もうこういう返事が貰いたくて聞いている自分がいる。イヤな奴。程度の低い人間である。

 

外の雨は激しさを増している。

「土砂降りですね。すっかり」

「そうやな。どうせ濡れてるから、いいわな」

 

はっきりとした場所は分からないのだが、相当郊外まできていたようで、最寄りの地下鉄の駅までは30分ほどを要した。車内で少し監督さんと話す。

「西成に住んでるん?」

「そうです。ドヤ暮らししてます」

「なんか面白い街なんやろ?結構、YouTubeとかで見るよ」

「行った事ないですか?」

「もう20年くらい前かなぁ。その時は、路上で覚醒剤売っとるかどうか?確かめに行ったんよ。ホントに売人だらけでビックリしたけど」

まあ、本当のところはまだ西成ペーペーの僕には分からない。あからさまでなくなった分、地下に潜っているだけなのかも知れない。

 

「でも、本当におじいちゃん位の年齢の人が、働いてるんでスゴいなぁ、と。僕は多分、明日筋肉痛で動けないです」

「ははは。まぁ、慣れよ。慣れ」

仕事のキツさを嘆くと、皆異口同音に「慣れ」である、と言う。
僕も少しは「慣れ」てきただろうか。

 

その後も、お互いの地元の話などをして、和やかな車中であった。

「お疲れさま。ありがとー」

報酬の入った茶封筒を渡され、駅で降ろしてもらう。
今日のチームは「仕事人」と言う形容がピッタリな人たちであった。
それに引き換え…、もういいですね。
しつこい、こんな人間好かれる訳がない。

 

途端、猛烈に腹が空き、地下鉄に乗る前にコンビニに入りホットスナックを求める。
こんな感じでしっかり食って、しっかり寝ていけば、「慣れ」ていくだろう。

 

西成に戻るには乗り換えて40分ほどかかった。
「ビジネスホテル スバル」は本来なら、明日出ていくことになっているのだが、明日は動けないかも知れない。受付で一泊延泊を申し出て、洗濯して眠った。

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仕事内容
日付:2021/3/12(金)
場所:大阪市
現場:旧日本家屋
内容:解体
時間:4:15~16:55
待遇:朝飯アリ
給与:¥11,000

西成で得た金額
11,000円

 

使った金額
宿泊代:1300円
交通費:330円
コインランドリー(洗濯):200円
烏龍茶:108円
マイルドいちごオーレ:150円
白バラ抹茶:173円
クーリッシュxカルピス:163円
ヨーグリーナ&天然水:126円
鶏つくね串:145円
ごぼうと蓮根サラダのパン:149円
大きいウインナーパン:138円
チーズクリームのハムパン:146円
金ちゃんの唐揚げおにぎり:162円
おにぎり・エビラー油:162円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二箱)

所持金

9,196円

西成で暮らす。12日目 ①「西成は、金があれば天国」

2021年3月12日。①

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早朝というには早すぎる。
深夜というには遅すぎる。
時刻は午前3:30

おはようございます!
いつもは4:30あたりに仕事探しを始め、結果的になんとか現金仕事を与えてもらっていた。
しかし、それは「なんとか」という雰囲気もあり。確実に仕事を得るには前倒して動き出さねばならないのかも知れない。

3時半ね。イカれてるな。

洗面場で顔を洗う時にも、誰とも会わなかった。こんな時間に仕事探してる人いるのか?
宿を出て通りに出ると、人はいた。作業着姿のおっちゃんたちはいる。
しかし、手配師の姿はない。

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誰かいますか?エニバディホーム?
仕事をください

少し待っていると、ワゴン車が停まるがすぐに人を乗せて去っていく。

「もう、決まってますか?現金?」

「そうやねん。ごめんな」

 

別の手配師にも尋ねてみる。

「今日は現金ないですか?」

「ないな。あそこが現金ちゃうかな」

「ありがとうございます、聞いてみます」

尋ねる。

「悪いわな。ないねん」

何度もフラれる。

 

マイクロバスが停車したので近付いてみる。

「現金ありますか?」

「土木と解体どっちがいい?」

解体仕事で疲労困憊した記憶がよみがえり、

「土木でお願いします!」

「ほな、ちょっと待っとって。4時くらいに呼ぶわ」

 

良かった。仕事に行けそうだ。
シャッターの閉まった商店の前に幾人か同じように待っている人たち。
その隣に座りタバコを一本。
やがて、先ほど声をかけた手配師がやってきて、

「ごめん。今日ないわ」

「わかりました」

「解体」を希望しておけば良かったのかなぁ。

 

僕と同じように「今日はない」と告げられたおっちゃんに、

「解体ならあったんですかね?」

「そうかもな。ワシ解体嫌いやねん」

「僕もです。今日まだ現金ありますかね?」

「わからんなぁ。それは誰にもわからんわなぁ(笑)」

おっちゃんは諦めたようで、酒の自販機の前で立ち止まった。

「もうちょっと探してみます」

 

いつものゾーンを何周かしてみたが、現金仕事はなさそう。
一度、宿に戻って5時頃出直そうか。そう思って足を早めだした時、

「お兄さん!仕事決まった?」

「いえ、まだです!現金仕事ありますか?」

「本当は、寮に入ってくれる人探しとるんやけど。どう?」

「すみません。まだ寮に入るつもりはなくて。今日だけは難しいですか?」

「まあ、いいですよ。乗ってください」

「どんな仕事ですか?」

「解体で、11,000円。〇〇市まで行ってもらうわ」

結局、「解体」かい。キツそうだなぁ。しかも、仕事先は大阪市を外れてしまう。
とは言え、背に腹はかえらない。まだ、先客のいないワゴン車に乗り込む。

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10分ほどして、もう1人おっちゃんを乗せ、車は〇〇市を目指して走り出した。

いつもながら、この車中は不安感でいっぱいになる。
何をするのか?どんな苦行が待っているのか?
ドナドナドーナドーナ。人足を運んで走るよ、どこまでも。

卵かけご飯と、もやしスープ

工業地帯から数本外れた路地の先に車は停まり、手配師のあとを進む。
建設会社の看板が掲げられた建物のシャッターが開けられ、チラチラと明滅する待機場所に入る。

コンクリート敷きのその場所は寒々としていた。
ダイニングテーブルに椅子が数脚置かれている。客足が途絶えて久しい場末の食堂という雰囲気。調理人も、他の作業員も誰もいない。

手配師のおっちゃんが(と言ってももうおじいちゃんという年齢に見えるが)、大鍋が乗ったガスコンロに火を灯す。その横には炊飯ジャー

「じゃ、食べて。〇〇さん、もやしスープ食べたことある?」

「ないな。美味いんか?」

「結構、イケるよ。さあ、お兄さんも食べて!」

西成から同乗してきたおっちゃんと肩を並べ、白米ともやしスープという最も質素な朝食をいただく。

「おかずは、そっちから取ってな」

おかず?あります?
タッパに入った、らっきょう、たくあん、昆布、その並びに卵!
卵かけご飯でいいです!もう、それが最強です!

もやしスープは、純粋な塩味にもやしがぶっ込まれた代物。
でも、美味しかった。なぜか、フォローしてる気もするが…。

「西成は金があれば天国」

時間はまだ5時過ぎ。ひたすら待ちである。

「待っとるだけで、半日やな」

もう1人のおっちゃんに話しかけられた。

「そうですね。これが無駄ですよね。今日は3時半に行ってみたんですけど、そんな時間に行くもんですか?」

「早よ起きて行っても、仕事あるときはアル。無いときはナイ。そんなもんや」

そんなもん、らしい。入寮や通いでなければ確実に仕事を得られないんだろう。

「やっぱり、どっか寮に入った方がいいんですかね?」

「仕事欲しければな。ただ、寮費を3,000円だか取られるやろ。あれは、その日仕事無くても取られるからな。そこやわな。自由は、のうなる。もし入るんなら、ようけ人足のおるところ行ったらアカンで。デカいとこは全員に仕事が回ってけーへん。15だか20人くらいのところに入らんと、仕事ないで」

勉強になる!

 

「とにかく、ここから4月5月6月くらいまでは、仕事のうなるよ。もう、解体くらいしかなくなるんちゃうかな」

「毎年そうですか?」

「そうやな、大体そのパターンやわ」

それまでに、ある程度仕事先を固定しておかねばならないのかも知れない。
勉強になります!

 

「仕事なかったら、みんなどうしてるんですか?」

「どうしとるんやろな(笑)。ただ、あの街はいまほとんど、90%生活保護やろ。そんで金のうなったら働くいう感じやろな」

「そうなんですね」

生活保護いうても、せいぜい7万そこらしか貰われへん。そんなもん、みんなパチンコで一日で溶かしよるからな」

「みんな何に金使うんですかね?」

「そらギャンブル。7割ギャンブルで3割酒」

賭け事+アルコールで10割。

 

「とにかく仕事があるうちに貯めとかんとイカんのよ。でも、全部使うてまう。そんな人間ばっかりおるんや。不思議なもんでな、仕事ありますよ!いうときはみんな仕事せんのよ。それで、仕事減ってきたら、仕事したがる。そんな街やな」

おっちゃんはなぜか「西成」「あいりん」とは言わず。「あの街」と表現していた。自らも「そんな街」で生きてきた人の言葉だと思った。

 

「あの街は金があれば天国や。なければ、悲惨やわな」

 

どうやら、今日の現場はこのおっちゃんとは別々になるようで、おっちゃんは一足先に出かけて行った。去り際、

「にいちゃんも、とにかく稼げる時に稼がなアカンで。頑張りや!」

と言い残して消えた。

「小泉構造改革のせいです」

1人残された僕はテーブルに突っ伏し少し眠った。

手配師でありつつ、この会社の社長でもあるらしいおっちゃんに優しく起こされ、連絡先と名前を告げる。

「ずっとこの仕事…、じゃないね?」

「ええ。まだ始めてから1週間くらいです」

「職種変えやね」

「そうです。でも身体キツくて続けられるか心配ですけど…。やっぱり昔より仕事は減ってますか?」

「そうやね、ウチも昔はバスで20人位、毎日現場に出かけていたんですけどね。最近は減りました。良かったのは平成10年くらいまでかなぁ」

「ああ、バブルの頃よりあとなんですね?」

「小泉構造改革という旗の下で、公共事業が削られたでしょ。その影響」

事象物事の捉え方は、どこから見るのか?誰の視点なのか?によって異なる。この社長からすれば、小泉構造改革は生業に大打撃をもたらした愚策ということになる。

「まあ、日本はもう沈みゆく国ですから。アジアの片隅でね」

 

その後、6時半近くになり、今日の現場の監督さんが現れ、哀愁漂う社長に「行ってきます」と告げ、ようやく仕事開始です。

 

以降、西成で暮らす12日目②に続きます。