2021年5月27日。
梅雨の時期がイヤ。
といった感情を特別に持ったことはなかった。
「洗濯物の生乾きって困るー」
みたいな所帯じみた悩みを抱えたこともなかった。
所帯を構えたこともない人生であるが。
しかし、如実にそれらの乾きに至るスピードが減じているのを実感する今日この頃。
これまでは、200円でコインランドリー洗いを施し、一晩洗濯ロープに引っ掛けておけば事なきを得ていたのが、全然乾かない。
ずっと、じんわり湿り気を帯びたレパートリーの乏しいワードロープを眺めて。
ずっと、湿っているのは河童のお皿だけで十分である。
デブの首元だけで十分である。
ウエストバッグはムツゴロウ王国の住人の持ち物として十分不可欠である。(『ドライブインカリフォルニア』©︎松尾スズキ)
今、改めて言いたい。
梅雨ってイヤね。
と言うわけで、目を覚ましてコインランドリーに向かい、乾燥機の恩恵を受ける。
ハムスターが延々と前進していると感じている運動が、実際は前ではなく、上に向かい、そして円環運動としてスタートとゴールが有耶無耶になるように。
それでも、ドラムはかき回されて、風を蓄え、湿り気は失われ、僕の洗濯物は、僕の着替えに変わっていく。
クリント・イーストウッド監督の『パーフェクト・ワールド』で人質に取った少年を助手席に乗せたケビン・コスナーは、「この車は未来への乗り物」だと言い、
「今ここが現在。目の前に見えるのが未来。後ろにあるのが過去。アクセルを踏めば未来に行ける」
と教えていた。
西成のコインランドリーの乾燥機は、どんなに眺めていてもただその場で回転を続けるだけで、未来を見せてはくれない。
ただ、その回転と併せて吹き込まれる温風は、明日を装う薄汚れかけた衣服の湿り気を正常化してくれるだけ。
まるで、一向に前進しない僕の毎日のようである。
そこそこの量の洗濯物を完全に乾燥機任せにしてしまうと、どんどん小銭がチャリンチャリン減っていくので、そこそこで宿に持ち帰り、干す。
たぎるな湿気、けっぱれ日差し。
サポートしろ!扇風機。
そういえば、『バブルへGO!!』とかいう映画では、乾燥機だか洗濯機だかがタイムマシンになっていた。ケビン・コスナーが名台詞を吐く代わりに、広末涼子のキャバ嬢姿を拝めた気がする。それだけで十分鑑賞する価値のある映画である。
きっと、明日までの時間は洗濯物を乾かすのに十分だろう。
黒光りする車列
街に出て、今日の目的地まで歩いていると、細い路地に高級外車が列を連ね、その周囲には黒いスーツに派手なネクタイ、ブッチャーが履いてたみたいな革靴、短く整えられた髪、透過率の極めて低いサングラスをかけた男性たち。
「うわっ…」
と瞬間怯み、半分ほど進んだ道程を引き返そうと思ったが、ここまで来て踵を返すのもなぁ、とアメフトの優秀なQB並みの俊敏さで、車列と黒服の男たちをサッさかかわしながら進む。
すると、次々に目の表情をのぞめない男たちが、
「ご苦労さん!」
「ご苦労様です!」
と声をかけてくれる。
なんと、西成の労働者は偉大!
いつもの作業着姿であった僕は、金子信雄か西村晃にでもなった気分で、「良きに計らえ」てな仕草で通り過ぎる。
高級黒光り外車の後部座席には、金子信雄や西村晃が東映実録路線映画で演じたモノホンの方々が鎮座ましましていらっしゃった。
もちろん敬語だ。
「すみません!ご苦労様です!!」
連日、取材する
いかつい緊張感を抜けたら、また緊張。
今日は、昨日の女装さんインタビューに続き、西成のホテルについて、とある方にお話を伺うことが出来た。
お話自体は大変面白く、質問に的確に回答してくださった。
途中、こちらに問いかけて来られる局面もあり、バカで無知を晒してしまった。
インタビュイーの方のお名前や所属を明らかにして、このブログに掲載できるかどうか?はペンディング。
ブログのタイトルをお伝えしたので、「こんなふざけたトコに載せるべからず」と判断されてしまっても仕方がない。
ただ、女装さんとの対話もそうだが、この街に働く人、集う人と直接目を見て話すこと。
その経験は楽しい。
その繰り返しを続けていくより他ない。
どうあれ、なんらかの形で、ブログに反映していく所存です。
ドキュメンタリーを観る
夜には、日本の入管施設や体制に「隠し撮り」という手法で闘ったドキュメンタリーのオンライン視聴に参加。
『牛久 ushiku 比類なき不正義』
上映後のティーチインも含めて、2時間以上目が離せなかった。
少しトラブルを抱えている作品なので、一般公開されるのかどうか。
映画自体は、力とインパクトを放ちまくっていた。
「牛久」という地名も、こうしてある種の負のイメージを抱え込むかも知れない。
大仏と、元フジテレビの相川梨絵の出身地のイメージしかない方も多いだろう。
相川梨絵に関しては、僕のみが覚えるイメージだと思うけど。
ちょうど、今日のお話でも「西成」という地名が持つイメージの話になった。
しかし、それを「負」で終わらせないことに尽力する人たちもいる。
「わかりやすさ」では回収できないことだって多いものだ。
映画の話が多かったので、ついでに
長谷川和彦監督『太陽を盗んだ男』
の告知が新世界のビデオ試写室の看板に登場。
ずいぶん、沢田研二が暗いイメージだが、映画のなかのジュリーの鬱屈した側面を描き切った手描きイラストである。
どんな映画もまた、一面的な「わかりやすさ」で語られるべきではない。
使った金額
コインランドリー(洗濯+乾燥):500円
ランチパック・ハム&マヨネーズ:89円
ファる巻ポテト:106円
匠旨 サーロインステーキ味:127円(二個分)
情熱 ドライカルパス:84円
ミルクチョコレート:75円
お魚ポリンキー あっさり:52円
マイルドいちごオーレ:106円
レジ袋:2円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円
所持金
17,788円