暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

¥1300「末廣屋」 西成安宿探訪 17日目

西成ホテル探訪・十七日目

 まだ地下鉄は空いていた。
みんな、大阪の人々はおとそ気分なのだろうか。大きな組織は1/6から新年始業というところも多いのだろう。僕は、今日も今日とて西成安宿へ。

これからの宿泊候補

西成チェックインスタンダード締切り時刻、20時まで少し余裕があったので、行きたいけれど受け付けてくれるのか不明な、これからの寝ぐら候補を当たってみる。

 

「日乃出」
イイ感じなくたびれ感がある。
「すみません。コチラ一泊はダメですか?」
「いえ、もうやってないんです」
「決まった方だけですか?」
「ホテルはやめてるんです。ごめんなさいね」

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現在は月単位の福祉アパートに変わってしまっているようだ。
往時、西成あいりん地区を支えてきた労働者たちの多くは、もう身体がいうことをきかない年齢に達しており、生活保護を受けながら、かつてのドヤが福祉アパートに変えられた物件で暮らす方々も増えていると聞く。
残念!断念!

 

「つかさ旅館」
商店街のわき道にあるこの宿も、いつも灯りはともっており、帳場のようなところに人の影はあるのだが、宿泊料金の掲示がない。
「すみません。。。すみません!!」
奥の方でテレビを観ているらしいおばあさんが、腰をさすりながら向かってきてくれる。すみません、すみません!
「コチラ、今日泊まれますか?」
おばあさんは、左手を大きく横に振る。
「もう、埋まっちゃったの」
「そうですか、でも一泊から宿泊は受け付けてますか?」
「うん。でも、今日はダメ」
「わかりました!また来てみます!」
すみませんでした。『ロンドンハーツ』に戻ってください!
一応、泊まれそうではある、出直そう。

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西成安宿の受付時間は、かなりシビア。
数時間しかフロント業務が行われていない宿も多い。なかには、朝の数時間で受付してくれるところもあるらしいのだが、ネットで漁っても正確な情報は見つけられない。こうやって、地道につぶしていく以外ないだろう。

 

「ホテル 王将」
ラブホテル。
という選択肢も排除してはいけない。この探訪には、寛容さと克己心そして挑戦する気構えが大切である。ただ、ラブホに関しては料金設定が、安宿基準を超えていることがほとんど。コチラはどうだろう。

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Aタイプで4000円か。無理だな。
というか、もう廃業してるな。

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踊り場に便器

三軒も聞き込みをしていたら、もう20時近く。
今夜の寝ぐらを決定せねば。あいりん地区から離れてしまったので、今日も太子町付近で。

「末廣屋」
入口には「1300円」とある。安宿的に合格です。

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正月のしめ飾りをくぐって受付へ。

「今日、一泊イケますか?」

「・・・んん?ああ、いいですよ」

「1300円の部屋だけですか?」

「そうです。よろしい?」

「はい、お願いします」

「そしたら、お名前は?」

「竹下です」

こたつに入っていたご主人は、60代くらい。派手な柄のセーターを着た七三分けのロマンスグレー。すぐに、カギを出してくれたので、

「カギ。保証金いりますか?」

「いや、必要ないですよ。出るときも、部屋のテレビの横に置いといてください」

ありがたい。鍵を使うためにデポジットされる保証金という人質制度がなんとなく滞在時間の気分を暗くするのだ。西成安宿探訪者は繊細である。

「お風呂はナシですね。シャワーがあるんですか?」

「そう、使わはる?100円やけど」

「なるほど。100円で何分イケるもんですか?」

「そら、何分やろ(笑)どこまで洗わはるかによるね。普通には入れますよ」

愚問だなぁ。
我ながらバカみたいであった。ここで100円払って、「末廣屋シャワーリポート」をすべきなのだが、辞退してしまった。このあたりが、僕のジャーナリズム精神のモロさ。寝る前に反省しました。

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「末廣屋」は5階建てだが、エレベーターは無し。中央に階段があり、その両側に各部屋が設けられている。

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驚くべきは、小用トイレがオープンな場所にあったこと!

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暖簾で目隠しはされているが、かなり抵抗はある。
しかし、心配なさるな。大便器は個室内。洋式だし。

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安心感を高める旧仮名遣いで、がんばりませう。

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ついでに5階まで登ってみたが、4階は住人の方、5階は宿側が使うリネン室やベランダがあった。眺望に期待してはいけない。

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高さ120㎝くらいの「物置」からは、誰か飛び出してきそうで怖かった。

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岡村に聞け

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使えないのだが、一応シャワールームの画像を、と思い1階をうろついていると、こんな貼り紙が。

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実権を握る、もしくは傀儡で暗躍する「102の岡村さん」
これは、9時以降に102のドアをノックすべきだった。取材不足、不明を恥じる。

ヌクヌクだがカイカイでもある

それでは入室。
ここも外に照明スイッチか。

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壁とカーテンのヤニ汚れがひどい。
きっと僕の肺もこうなっているのだろう。
しかし、ニオイがきついわけではないので許容範囲。僕の肺も匂わないことを祈るばかり。

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テレビは地上波のみがしっかり写るが、操作方法がトリッキーであった。

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窓のカギもトリッキーであった。
しかし、デブった手である。全然、痩せないな。

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暖房はかなりしっかり効く。
宿泊料金と宿の普請ぶりからエアコンは期待していなかったのだが、嬉しい誤算。入口付近のツマミは機能していなく、リモコンでON。

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布団の寒さ対策もバッチリ。
二重布団に、ヌクヌクカバーもついて1300円。
しかし、問題は毛布、アクリル地に出来た毛玉にかなり毛が!

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仕方ないので、毛布ははずして、暖房を効かせながら眠ることにしよう。

結果的に風邪をひくことはなかったのだが、身体中にかゆみが!
久しぶりにバグたちにやられてしまった。
朝イチで天満のマンションに戻り、シャワーを済ませて昼の仕事に出社した。
102の岡村さんに報告したかった。

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30円のライフガード

この日の食事は、西成名物激安自販機の1/8賞味期限切れジュースを2本のみ。
30円×2。
でも、痩せない。
明日への夢、以外に何も食ってないのになぁ。

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末廣屋

Google マップ

宿代:¥1300

三畳/コンセント2口/トイレ共同(フルオープン)/シャワー共同(100円)/布団(万年床)/毛布(毛毛毛)/バグいるかも/鍵(保証金無)/内鍵/喫煙/灰皿/小机/一泊OK/門限有(22時まで)/ハンガー/フック/電気ポット共同/電子レンジ共同/テレビ(地上波のみ)/カーテン/個別空調/ゴミ箱/窓/チリトリ(ホウキ無)/炊事場無

 

清潔度 ★★

フロント★★

サービス★★

価格  ★★

総合  ★★

 

食費

チェリオライフガードプロスタッフ 30円×2


西成に落とした金額

計:1360円

 

¥1500「ビジネスホテル ハナヤ」 西成安宿探訪 16日目

西成ホテル探訪・十六日目

明けました。

12/26に、日雇い「現金」仕事を経験してから薄ーい内容のブログを引き延ばしてお茶を濁していた。昼の仕事の会社は、12/29まで作業があり、年末はまったく意味のない寝だめ。大晦日から1/3までは、雪深い実家に帰省し、毎日まったく意味のない雪かき。なぜなら、かいたそばから、ドンドコ積もりまくるから。僕のふるさとでは、久しぶりの大雪でコロナもあいまって老人はますます、引きこもり。1/4の早朝に大阪に戻り、その足で昼仕事始め。

そして、2021年1月4日。夜にも仕事始め。
西成安宿探訪、再開です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
おめでとうございます。ました。

 残務というべきか初務というのかに追われて、会社を出たのは19時過ぎ。
いつもの大阪メトロ堺筋線もまだ空いています。今年もこの通路を行ったり来たりする予定。「動物園前」駅、9番出口。

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前述のとおり、人並みのささやかな肉親の寄り合いを選んだために、年末年始の西成あいりん地区の様子は見ることができなかった。
例年、三角公園では「釜ヶ崎越冬闘争」という形で、炊き出しや音楽会などが催されているらしいが、もう跡形もなかった。貼り紙だけ。

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書初め大会」や「新春まち歩きツアー」とか。
参加してみたかった気もします。ただ、外から来た人間がゾロゾロとこの街場の様子を覗いて練り歩く行為とは一体なんだろう?という気もする。なにより、僕自身がこのブログでそれをやっている訳ですが。

泊まり初め

年明けの西成あいりん地区もいつもと変わらない景色。
ただ、開いている飲食店はまだ少なく、昨年お世話になった「ホテル 大阪」や「ホテル 新光」も20時前なのに受付は閉められ、住人の方だけが出入りしている様子。

あいりん地区を抜けて、太子の方に足を延ばす。看板に火が灯っていないが、ダメ元で入ってみます。最低価格が掲示されていたとおぼしき部分は消されているが、
「各室4畳以上のユッタリスペース」
というキャッチが気になります!
"ゆったりスペース"と、平+片で責めずに、"ユッタリスペース"と片+片で抜いていくのが独特です。「ホウジチャラテ」の用法。

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「こんばんは。今日一泊いけますか?」

「ええですよ!」

「1500円の部屋も空いてますか?」

「大丈夫よ!お名前は?」

「竹下です」

「下の名前は?」

「ええと、キノです」

「え?どんな字?」

「ええ、カタカナです」

「うんうん。わかりました」

下の名前を聞かれたのは、ドヤ巡りで初めてだった。オヤジさんは、キノとか聞かされて、一瞬戸惑っておられたが、何かを察してくれたようだった。「ユッタリ」と同じ片仮名ですよ。

 

本日の寝ぐら、確保。

「ビジネスホテル ハナヤ」

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ガラスの向こうで応対してくれたオヤジさんは、一人鍋をかましていたようで、〆のおじやを頬張っていた。60代後半か、末井昭をふくよかにして、肌を少しキレイにしたような面相。とても快活で歯切れよく応対してくれる。

「お風呂も入れますからね。じゃあ、207ね。今、案内しますよ」

「カギもあるんですね!明日、返せばいいですか?」

保証金などはとくに取られず、カギ付きの部屋のようだ。

「朝は9時までなんやけど、ココに返さんでいいですよ。部屋の冷蔵庫の上、置いといてください」

大変ありがたい。すばらしい!

「靴は持って上がってもらって…」

「ここの下駄箱は入れん方がいいですか?」

エレベーターに向かいながら、聞く。

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「一応、持って行って!それ、エエ靴やんか!念のためね」

全然エエ靴でも、イイ靴でもないんだけど。わかりました。

ユッタリスペース!

エレベーターを待ちながら少し雑談。

「大阪の人?」

「はい」

「なら、大体わかるね。だいぶこの辺も変わったんやけど、ちょっと不用心だとアレやから。俺も、何回か靴盗まれたんよ(笑)」

「住んでる方もいるんですもんね?」

「そうやね。働いとる人も多いから」

2階で降り、部屋の扉を開けてくれる。

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「下は10時でカーテン閉めるけど。出入りは自由やから。ただ、あんまり騒がしいのは、みんな大人やから分かってね?」

「はい、大丈夫す」

「暖房もガンガン使うてください。暖こうしてね!」

終始、笑顔で接してくれ気持ちの良いオヤジさんだった。

室内はたしかに「ユッタリスペース」
畳敷きは四畳に満たないが、土間やテレビと冷蔵庫の置いてある棚の部分も含めると、かなり広い。これまでの西成安宿探訪において、最広。

時計は時を刻むもの

部屋はおおむね清潔。
布団のペラペラさ、せんべい具合は致し方ない。1500円でなにを望むのか?テメエは。ちなみに、またやらなきゃいいのに万年床をはがしてチェックしてみたが、許容範囲である。
枕が大小2個あるのも、すばらしい。どうしてもヘナってくるものだから、W使いさせてくれるのはありがたい。

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窓も大きめで解放感があるし、ハンガーや小机。冷蔵庫、テレビ、エアコンなど備品も勢ぞろい。

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ちょっと難癖をつければ、テレビと冷蔵庫の同時使用でコンセントが埋まってしまうこと。エアコンは、立ち上がりが異常に遅かったが、ガンガンに効いた。

あと、まったくの難癖であるが、ゴミ箱のデザインがなんというかファニー。
自転車!バスケ!ロックンロール!!

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そして、大きめの電波時計があった。
ホテルと時計の関係性。
「なぜ、ホテルの個室では明快な時刻表示がなされないのか、変な額装の風景画とかはあるのに、問題」
については、西成安宿探訪を始める前から疑問に思ってきた。

事実、ドヤ巡りを開始してからも、宿の館内に時計はあっても、個室内に時計があったのは初めて。極力、抑えられる備品のなかで「時計」があるのは、すばらしい!
毎朝、早朝に仕事に向かう際には、時計の存在って大切だと思います。

ちょっと豪奢なホテル=宿泊そのものがアミューズメントになるような宿
ならば、「時間を忘れて過ごしてもらいたい」という狙いで、部屋内に時計を置かないという理念は理解する。
しかし、
西成ドヤ=今日の休息と、明日の仕事をつなぐ、セーブポイント
であるから「時間」は知りたいし、「時計」は必要だと思うのだ。

限られた予算内で、泊まる人のことを真摯に考えてくれている宿だと思いました。

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ボヤ騒ぎ

館内の風呂が閉まるまで時間があったので、少し外出。

おや!入館時気が付かなかったが、Wi-Fiもあんのか!

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その場でつなごうとしてみたが、???。

「すみません!Wi-Fiのパスワード教えてください」

「ああ、それ!通ってないんよ(笑)貼ってるだけ!!」

まだ、ガッツリおじやを食べていたオヤジさんは満面の笑みであった。
OKです!

「ビジネスホテル ハナヤ」を出ると、なにやら騒がしい。
どうやら、近隣の宿で出火があったよう。焦げ臭い。大量の消防車。救急車。

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大事には至らなかったようだが、これまで泊まった木造宿や、老朽化した宿で、寝タバコ決められたら一発で全焼だと思いますね。僕がもし毎日西成労働していたら、寝タバコする自信あります!僕もタバコやめよう、切実に。ホテル側にとっても相当なリスクだろう。
労働→酒→タバコ→労働→酒→タバコ
は魅惑的なループですが。

 

少し歩くと、路上に卵が投げつけられている。

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散髪場所の指定、の看板。

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マッサージチェアと快適な風呂と便座カバー

宿に戻って、風呂に行く。
22時まで入れるのは、すばらしい。ほかの宿はたいてい21時で閉められる。

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先客がおり、僕のあとにも人が来たので風呂場内の画像は無し。
風呂場は同時に10人程度は入れる広さで、カランとシャワーを切り替えると湯の温度が150度くらい変化するので戸惑った。固形石鹸、シャンプー、リンスが備え付けで無くなったら、勝手に補充できる。

先客が左肩に刺青上等な方だったので、風呂場内では、またクソ卑屈に振る舞った。
お湯は入浴剤のほかに、なにか入れているのか少しピリピリした電気風呂のような味わいで心底、温まった。

風呂場の入り口にはマッサージチェアも!一応、使ってみたが正月休みでなまった身体は、とくに癒しを欲していなかったようで、すぐやめる。

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4階建ての「ビジネスホテル ハナヤ」
最上階は長期滞在者用か。どの階もおおむね同じつくりであった。西成ドヤ特有のコイン式ガスコンロはないが、各階に電子レンジやトースターが設置されている。
酒の自販機は稼働していなかった。

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雑誌はアップデートされていないようで、「秋ドラマ」を知ることしかできないようだ。
ただ、驚いたのは洋式トイレに便座カバーが付けられていたこと。ホスピタリティー
ちょっと衛生的に不安はあるが、うれしい気遣い。トイレットペーパーがピンク色とか、あるんですか!ファンシー。

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貼り紙コレクション

先に触れた
「ユッタリスペース」
表記で、うっすら感じていたのだが、貼り紙の表記も独特。

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「くれいむ」
そこは平仮名かぁ。社長というのが、あのオヤジさんかな。

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「協力たのむ」
アニキ感がある。

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「厳守」斬首!

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そして、大変達筆である。

なにより、感銘を受けたのは1階エレベーター脇に貼ってあったこのメッセージ。

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「色々な事情があって、西成に途中下車したかもしれませんが、流されることなく、小さな夢に向かって、いつか花を咲かせましょう」

少し、感動してる自分が居ました。

 

館内をウロついていたら、オヤジさんが風呂場の掃除に向かうようで、

「もう、お風呂は終わったよ」

「大丈夫です!さっき、いただきました」

「それじゃ、おやすみなさい」

「おやすみなさい!」

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風呂で心から温まったので、暖房の温度を落として就寝。

ちょっと、今回は「すばらしい」と連呼し過ぎてしまったが、間違いなくこれまででベスト級な宿でありました。

おやすみなさい。
今年も、今年こそ、頑張ります。

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ビジネスホテル ハナヤ

Google マップ

宿代:¥1500 

四畳強/コンセント2口(テレビ・冷蔵庫を使用すると埋まる)/トイレ共同/風呂(~22男 ~23女)/布団(万年床)/鍵(保証金無)/内鍵/喫煙/灰皿/小机/一泊OK/夜間外出可/ハンガー/フック/棚/門限無し/自販機(酒は故障・ホテル前にジュース)/エレベーター/電子レンジ共同/ガスコンロ無/トースター共同/テレビ(地上波のみ)/イヤホン/カーテン/個別空調/ゴミ箱/窓(大きめ)/雑誌漫画/コインランドリー/マッサージチェア/コロナ対策(消毒液)/電波時計/翌朝9時まで/オヤジさんイイ人

 

清潔度 ★★★

フロント★★★★

サービス★★★

価格  ★★

総合  ★★★★

 

食費

キリン・生茶デカフェ 90円
タバコ・アメリカンスピリット 570円

 

西成に落とした金額

計:2160円

 

「ハツリの手元」 西成の仕事内容解説

西成仕事解説

ハツリの手元

①古いコンクリートがあります。

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②電動ハンマーで叩き割られる、古いコンクリート

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③大きいコンクリートの欠片は、そのままゴミ捨て場に運びます。

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④細かい欠片も出ます。

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⑤細かい欠片は「土のう袋」に入れます。そして、ゴミ捨て場に運びます。

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以上、が「ハツリの手元」です。

 

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続きを読む

西成で働く。1日目~④即、金をもらう

西成労働日記・一日目④

 前回からのつづきです。

nishinari-lives.com

 

「ハツリの手元」

「ガラ出し」
を汗だくになりながら進めているうちに、あと2時間。

タバコ吸いすぎ問題

確かに吸いすぎだ。現場の人たちは皆いちようにタバコをくゆらせる。
しかも電子派は極小。みな紙巻きを吸いまくる。ほとんどの人たちは、しっかり仕事をした、その合間に吸っているから無問題。おんなじ土工仲間であるところのTさん&Kさん。T&Kは、とくに吸いすぎだ。
かくいう僕も喫煙一派なので、喫煙自体に文句はない。しかし、ある程度仕事してから吸ってほしい、と思うの。

やっぱり、もう現代。現代においては、タバコはダメな象徴になってしまったのだな。と、T&Kを見ながら思うのだった。

そして、ひとつライフハックをお伝えしたい。
喫煙スペースとはいえ、ゆったり腰掛けられるイスなどが用意されていることは少ない、と思う。そんな時は、被っていたヘルメットを逆さにして、くぼみの部分にケツを突っ込んで座ると意外と快適。若い電気工事の人がやっていたので、真似してみたら、思いのほかしっくりきた。ぜひ、日常的にも活用したい。そして、画像が足りないので使い回したい。

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もう仕事ないス。〜終業まで

身体を痛めつけながら、ここまで踏ん張ってきた「ガラ出し」も終わった。
ただ、A地点からB地点に物を移動させる、という単純作業もいつかは終わるのである。ゴミ捨て場のワイヤーケージは、コンクリのカケラと土のう袋でいっぱい。

残り1時間。
このマンション建設現場は年内の作業は今日で締め。
どうやら、現場監督は出来ることは全てやってしまいたいようだ。
Tさん、Kさん、Sさんはこれから生コンクリートが流し込まれる予定の部分に鉄筋を設置している。マンションの外周の掃除をしていた僕は、取り残された。

指示待ち人間。それはダメ!
とは巷間叫ばれていることである。しかし、次に何をすべきなのか全く想像だにできない。僕は何もできない西成初仕事人間です。

すると、
「あなた!いま空いてる?」
と監督に声をかけられる。かけられてしまう。透明な存在で居たかった。

マンションの各部屋に取り付けられたエアコンや備品の大量空きダンボールを、いま置いてある建物内部から、外の空いている部分に移動して欲しいとのこと。
再びA地点〜B地点パターン。ただ、軽い。軽いので助かりました。

それでも、時計は進まない。「ボチボチ」やっておけば良かった。先輩の言うことはしっかり実行すべきだった。

「もう、終わったー?」

と、再び現場監督に問いかけられたので、ネクストタスクに移行。

「今度は、ちょっとむずかしいだけど」

「むずかしいんですか?」

「いや、むずかしくはないか(笑)」

という感じで、壁にグルリと養生テープを貼ったり、床のハッチの外周をマスキングしたり、する大変繊細で複雑な仕事をおおせつかる。
作業自体は問題ないが、壁際にかがんだり、床にしゃがみこんだりするので、酷使した腰や、重いものを持ちすぎて、軽く震えている指先などが円滑な作業進行を妨げる。

「おーわーりー!」

Tさんの今日イチの大声が響く。16:45。キッチリ17時前の絶妙な時間をわかってらっしゃる。
気づけば、現場には僕ら西成からの土工と、数名の職人さん、現場監督を残すのみ。

「お疲れさまでした」

「おお、お疲れさん」

「また、来た時にはよろしくお願いします」

「そうやな。来年は1/6からやな」

Kさんに挨拶する。12/27に仕事終わりで1/5まで仕事がないのか。日雇いで食っていくなら、大型連休とかは敵でしかないなぁ。

17時前に終了

カバンを取りに行って戻ると、Tさんが地銀の封筒を渡してくる。
「ええー、いただいてもいいんですかー!」
とか言ってはいない。いくらもらえるのかわからずに、条件も知らされずに働いていたし、ある種いい経験として、別に金いらないな、と途中思ったりした。
しかし、確実にやられたこの身体、この疲労感。
金よこせ!という気持ちなっていた。

ホチキス留めされ、二つ折にされた紙封筒をもらう。

「お世話になりました」

「ご苦労さんやったな!」

Kさんにも別れを告げる。残っていた職人さんや監督にも挨拶し、ベトナムから来ているSさんにも声をかける。

「お疲れさまでした!ありがとう」

「ありがとうございました。車乗ってかなくてイイ?」

「大丈夫、ありがとうね。また!」

地下鉄の駅が近いことはわかっていたし、車に同乗させてもらって西成まで行くとかえって遠回りだ。

笑って手を振ると、Sさんもマスクを外して手を振り返してくれた。
なんて、爽やか。そして、あとくされゼロ。これが「現金」仕事か。

装備は必要

1日「現金」仕事をしてみてわかったこと。

・やっぱりヘルメットは偉大だ!
作業中なんども、飛び出た板、コンクリの角、運ばれているパイプなどの頭をぶつけた。ヘルメットがあるから、突っ込み気味だったとは言えるけれど。土のう袋の重さに気を取られて、前方不確認というパターンも多くあった。
もしメットを被っていなかったら、僕は死んでいただろう。

・やっぱり安全靴は偉大だ!
作業中、15時あたりからずっと左足の甲が痛い。ずっと痛い。自覚していなかったが、どこかで痛打したのだろう。鉄板がつま先に入っている靴なんて…、と思っていたが、安全靴って必要なのだ。
しかも、雨が降っていなくても、工事で使われた水でぬかるんでいる箇所も多いから、防水的な機能も必要だ。どうやら。この世には「安全長靴」という一挙両得な逸品があるらしい。リストバンドとアームカバーがいっしょになったような夢の商品。天才か。

・普段着でもイケる
結局、いくらかアウトドア寄りではあるが、作業着ではない出で立ちで1日やり過ごした。ある程度頑丈で動きやすければ、作業着マストではない。ただ、作業着を着ていないと、朝仕事をもらう時に声をかけてもらいにくい。

・身体はしんどい
とにかく、身体はしんどい。46歳で始めることじゃない。

・仕事は単純
たった1回「現金」をやっただけだが、全く資格や経験を問われることなく、仕事がもらえたし、現場で行う作業はいたってシンプル。何も考えずやれるだけに、いろんなことを考えながら仕事してしまう。それぐらい単純。

はたしていくらもらえたのか?

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ご覧のように、
10000円である。
朝飯も昼飯も付かなかったし、現場までは車で行ったが、帰りは地腹で地下鉄代230円かかった。
仕事が決まったのが、5:30
仕事が始まったのが、8:00
仕事終わりが、17:00
労働時間は、休憩を抜いて7時間だとしても、全体拘束時間は12時間近くある。ということは時給に均したら…、飯代と交通費を引いて…、とか考えないでおこう。ただ、朝の無駄な待ち時間がなぁ。厳しいとこである。

あのニオイは僕のニオイだ

初めての「西成で働く」これにて一巻の終わり。

地下鉄に揺られて帰る。今日は、安宿探訪はお休み。天満のマンション帰らせてもらいます。

アノラックのジッパーを下ろして、首に巻きつけてあったタオルを取る。したたかに濡れている。季節外れの汗まみれのタオル。
すると、自分の身体からフワッと、あるニオイが立ち上がってきたような気がした。前日、泊まった「緑風荘」の部屋から匂ってきた

汗臭さとも、加齢臭とも、アンモニア臭とも違う。その全部をかきまぜて濃縮したような淀みきったヘドロチックな香り。

そのニオイが確かにしたような気がした。
前日、僕が忌み嫌っていた匂いが、僕の身体から漂っているのか!
あの部屋にいた誰かは自分だ。
懸命に働いて、疲れた身体を横たえていた誰かと、自分がつながった気がした。

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日付:2020/12/27(土)
場所:大阪市
現場:マンション建設
内容:ハツリの手元・ガラ出し・掃除・ダンボール回収・鉄パイプ運搬・養生,マスキング
時間:5:30~8:00~16:50
待遇:朝昼飯ナシ・交通費ナシ
給与:¥10000

 

西成で働く。1日目~③ひたすら運ぶ

西成労働日記・一日目③

 前回からのつづきです。

nishinari-lives.com

 

時刻は8:00。

今日の「現金」現場である、マンションの建設現場まで大通りを横切って歩く。
すでに、作業服姿の職人さんや鳶の方が大勢せわしなく動いている。


<登場人物>

本日、いっしょに働く仲間。
70代・銀縁メガネ・村山富市似=Tさん
60代・腰痛持ち・麿赤兒似=Kさん
20代・アジア系・カタコト=Sさん
30代・現場監督
建築、電気、左官などの皆さん

 

現場の虎柄フェンスのすき間から、コンクリートむき出しの現場に入っていく。
すぐに、灰皿の位置に移動してタバコに火を点けるTさん&Kさん。
圧倒的に所在の無い僕。
無駄に、ヘルメットのアゴ紐を調整してみたり、手袋を何度も外しては付けたり。

 

「おはよう。Tさん!」

「よう。〇〇ちゃん!(現場監督のことをTさんは親しげに下の名で呼んでいた)」

「アレ?4人もいんの?」

「違う。2人よ。2+2」

「コッチも『土工さん』2人って聞いとったから。ビックリやわー」

そう。我々は「土工」なのだ。
土工(どこう)とは、
土木工事で土を掘ったり、運んだりする基礎的な作業。それに従事する労働者。

なにより、2人で良かったんかい。
2人要らんのんか。

「まあ、ええわ。先に裏のゴミ出ししてくれる?もう業者来とるから積み込んで!」

現場監督に言われ、昨日の作業で出たダンボールや発泡スチロール、土のう袋に入った土、コンクリのカケラ、などを業者の車に積み込んでいく。
ゴミ置場から、車までは3mほどの間隔があるので、軽くバケツリレーすれば効率的だと思うのだが、TさんもKさんもSさんも個人プレーに徹する。好き勝手に運ぶ。
これは、このあとの作業全体を通じて言えることだが、

仕事を早く終えてしまうと損をする。
与えられた作業をテキパキこなしても仕方がない。

Tさんの口癖は「ボチボチやろや」であった。

延々と石を運ぶ

新米土工である僕に与えられたメイン仕事は、

「ハツリの手元」

正しい表記はわからないが、
「はつり」とは、ダダダダダッと工具を使ってコンクリや石でできた壁や土間を削って剥がしていくこと。削られたあるいは割られたコンクリはカケラになって、溜まっていく。そのカケラを取り上げて、ゴミ捨て場まで運んでいく、それが「手もと」。

マンションのエントランス付近に張られたコンクリートが職人によって、ドンドコ剥がされていく。僕たちは、マンションの脇道を30mほど歩き、ゴミ捨て場に行き、ワイヤーケージの中に石のカケラを放り投げていく。行ったり来たり。繰り返し。

「ガラ出し」

という作業も付随する。
「ハツリの手元」によって出されたコンクリや石のカケラは、「ガラ」と呼ばれるゴミに名称を変える。それを運び出す作業は「ガラ出し」にあたる。
「ハツリの手元」と「ガラ出し」のコンビネーションが、僕のメイン作業である。

はつられたそばから、石を剥がしていかないとすぐにカケラが溜まってしまうので、迅速に。
僕とSさんは、チャカチャカ動くのだが、年配のTさん&Kさんはしょっちゅう休む。
「腰痛いわぁ」「ボチボチやろや」
僕はといえば、日頃キーボードを叩いて、口先だけの仕事をしているので、すぐに腕肩腰が痛んできた。バンテリン

細かいコンクリは砂といっしょに土のう袋に詰め、口を紐で結び、同じゴミ捨て場に運ぶ。Sさんが袋詰めの作業を率先したので、いきおい僕に運搬作業が回ってくる。
行ったり来たり。繰り返し。

ピラミッドもこうやって作られたのかなぁ。大阪城もきっとこうやって、とどうでもいいことを考えながら、ただただ運ぶ。ツラい。

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10時休憩

長かった、休憩時間。
TさんとKさんは、流石の年の功で9:45あたりに、「休憩やな、タバコやな」と腹時計で察していく。この腹時計はとても正確。15時の休憩も、17時の終業もほぼキッチリ15分前には「終わりー」と宣言していた。さすが!

Tさんがコーヒーを奢ってくれる。
近くの自販機まで、東南アジア系の若者Sさんと買いに行く。

「Sさんは、お国はどこですか?」

「ああ、ベトナムね」

「この仕事長いんですか?」

「んんー、1年前から?」

もう少し突っ込んだ話もしてみたかったのだが、Sさんはそんなに日本語を解さない。仕方のない話だ。どうして、ベトナムから来て、土工をやっているのか?気になることはあったけれど、それ以上話は続かない。

Tさんは、微糖のコーヒーを所望されたので、漢字を解さないSさんに“微糖”と書かれたコーヒーを教えてあげる。国際交流。

「あれ、Sさんはいらないの?」

「コーヒー飲めない」

「コーヒーじゃなくても、なんでもいいんじゃない?」

「うん。いらないよ」

ベトナムはコーヒーがフェイマスですよね?」

「ああ、でも僕キライ。ベトナムでは、カフェとコーヒーはいっしょね。カフェならね」

「お、そうなんですね」

後半はほとんど意味がわからぬまま、喋っていた。申し訳ない。

ベテランのSさんとKさんが、しょっちゅうサボりたがることはお伝えしたが、Sさんもかなり要領がいい。いつも、少し楽なポジションもキープする。大事なことだ。
もらえる金は同じなんだし。しかし、僕とSさんのコンビネーションはかなり仕上がってきた。頼もしい。

Sさんはときおり、Tさん&Kさんの指示を無視して仕事する。最初は、言葉の壁で伝わっていないのかと思っていたが、よくよく見ていると違う。
「オイ、S!そこもういいよ!」とTさんに言われても、自分のペースでふさわしいと思える仕事をしている。結果的に見ると、Sさんの判断が正しいことが多かった。頼もしかった。

30分のお休みを経て、またひたすら運ぶ。二の腕が震えてきたので、もう腹に石のカケラを押しつけて、全身を懸命に使って運ぶ。
途中、ベニヤ板を持ってきて、歩道の通行者にはつられた石のカケラが当たらないようにベニヤを抑えているだけ、の仕事も回ってきた。
ただ板を持って、街行く人を眺める。見上げた冬空は澄み切っていて高かった。

12時昼休み

現場にはさまざまな人がいた。
現場監督など仕切る人、建築、電気、ハツリ、マンションの上階にエアコンや設備を運ぶ人、大理石を切り出し並べる人。人種も年齢もさまざま。Sさんのようなアジア系、南米や中東の方もいる。

ただ、それぞれの役割はハッキリ分かれているので、喫煙所でもあまり混じり合うことはない。ただ、Tさんは積極的に他の業者の人に話しかけている。昔は、職人として活躍していたようで、建築土木への知識も豊富なようだ。も少し動いて欲しいけど、口だけじゃなく!

基本的にお互いの作業には関わらない。それぞれが、自身の持ち場での作業を淡々と整然とこなしていく。その身の置き方は清々しかった。もちろん、僕土工は腕に覚えなどないので、身体を目一杯使う以外にない。

圧倒的な疲労感で昼飯タイム。
弁当は出なかったので、近くのコンビニに行き、春巻きを二本買う。公園で食す。

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土曜の昼下がり。
家族連れが、多くいた。ヘルメットをベンチに置き、春巻き食べました。
いい加減寒いのので、コンビニでトイレを借りたあと、立体駐車場の車に戻ると、他のみんなは絶賛昼寝中であった。

仕事再開

昼からも「ハツリの手元」「ガラ出し」が続く。

土工三昧。

途中、
「今。いま俺は。筋トレしてるんだ!コレは給金が貰えるトレーニングをさせてもらっているんだ!」
と言い聞かせることで、精神の安定を保てた。15分くらいしか持たなかったが。

建設現場というと、「荒くれた男たちの怒号が飛び交う寄せ場な雰囲気」を想像される方も多いのではないか、と思うが、みんな基本ジェントルである。
狭い通路では、道を譲りあい、足元が悪ければ声をかけてくれる。そこには土工だ、職人だ、という線引きはなかった。素晴らしいと感じました。

ただ、ただ、もう腕プルプルっす。

「ああ、間違った!」

ハツリの職人さんは早々に仕事を終え、あまたのコンクリと石のカケラだけが残された。せっせと土のう袋に詰めて運ぶ。

と、Tさんが
「これ、もう終わっちゃうな。こっちもハツろうか?」
と言い出し、現場監督に尋ねている。
結果、新しい仕事が産みだされた。Kさんが慣れた手つきで新しい場所をハツっていく。

「どこまで、ハツるんよ?やらんでもいい仕事やって!なんや!」

と憤り出す。んん、そうでしょう、そうなんでしょう。

「ああ、やってもうた!間違うたわ!新しい基礎んトコも削ってもうた!」

「ああ、マズいんすか(笑)」

「マズいやろ!土かぶせろ!土!」

Tさんへの怒りで手元が狂ってしまったようだ。そして、ハツってはいけない部分を削ってしまったようだ。思わず笑ってしまった。
しっかり、土で覆って隠蔽工作に加わった。共同正犯。
間違いは誰にでもある。黙っとけ!

 

15時の休憩に14:45に入る。
休憩時間に、TさんやKさんから、名前ひとつ尋ねられない。暗黙のルールなんだろうか。

ただKさんから、

「ようけ、運んでくれた。助かったわ。あと少しや、がんばろ!」

と声をかけてもらう。とても嬉しかった。本当に。

かなり汗もかいているので、身体を休めると汗冷えが始まり、寒さが身に沁みる。
もうボロボロだが、もうヤケクソだが、もうすぐ仕事は終わる。

 

すみません。一度の日雇い仕事で引っ張りすぎですね。
次回が「西成で働く。1日目」最終回です。

 

西成で働く。1日目~②ひたすら待つ

西成労働日記・一日目②

 前回からのつづきです。

nishinari-lives.com

働きたい!

働きたくない!

の間を右往左往しながら、ついに朝5時半ごろに「現金」仕事を見つけました。

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普段着で挑む

手配師の男性に、

「手袋しか持ってないんですけど、大丈夫ですか?」
とたずねてみる。

「ああ、それは安全靴?」

「そうです!(じつは違います!)」

「ヘルメットは?」

「持ってないです」

「うんうん、大丈夫ですよ。乗って待っとって」

そばに停めてあるバンのスライドドアを開ける。
先客が4人。暗くてよく表情までは見えない。

「おはようございます」と声を発すると。1人の方だけ「ございます!」と返してくれる。奥の席に座ってじっと待つ。

そういえば、現場がどこなのか?もらえる「現金」がいくらなのか?
一切、聞いていない。ただ名字を名乗り、車に乗っている。

「今日、5時までですかね?」

「そうやろ。わからんけどなぁ。年末じゃなかったら、こんな仕事やらんのやけどなぁ」

唯一、僕の挨拶に返事をしてくれた方は30代半ばくらいか。彼が、前方に座っているベテラン勢にたずねている。年齢的には、僕と30代の彼以外は60歳を過ぎているように見える。
「こんな仕事」という言葉がひっかかり一気に不安が押し寄せる。


ザ後悔。もう、帰っておきゃ良かったなぁ。
「こんな仕事」って「どんな仕事」なんだろうか?


窓の外では、手配師の男性が二つ折りの携帯電話でしきりに連絡を取っている。作業着姿、ヘルメット完備の2人組が手配師に近付くが、腕でバツ印をつくられ追い返されている。

電話を終えた手配師が運転席に座り、バンが走り出した。

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事務所みたいなとこに着く

ひとつ、お断りなのですが、「西成で働く」に関して画像は全然ないです。
いろいろと差し障りがあるだろうし、シャッター音たてるわけにもいかないし。
文字ばっかで、すみません。


まだ薄暗い道を走る車。
どこに連れていかれるのか、わからないという不安。
なにをさせられるのか、わからないという恐怖。
圧倒的な後悔。

ものの10分ほどで停車。
みな無言で降車するので、あとに続きます。


入り口のビニールシートをくぐると、石油ストーブを囲むようにソファが置かれている。テーブルには灰皿とスポーツ新聞。
ソファの背後に、数人が腰かけられる数のパイプ椅子。
コンクリ敷きのスペースの奥には、木造りの棚があり、正方形のマスの中に長靴や工具が納められ、それぞれのマスには名前が貼られている。
簡易トイレも見える。せいぜい8畳ほどのスペース。

バンから降りたオッチャンたちは、ソファにどっかと腰を下ろしタバコに火を点けている。僕は、パイプ椅子にしておく。

コンクリ敷きのスペースから、一段上がった位置に事務所らしき空間があり、その入り口からはなかに置いてある大きな液晶画面。朝のニュース番組が流れている。

と、事務所から上役らしき人物が顔を出し
「おはよう!」
と声をかけてくる。しかし、返事をしたのは僕と30代の男性のみ。ほかのオッチャンたちは眠ったり、新聞の競馬情報に夢中。

まだ、時刻は6時を少し回ったところ。
待ち。待つ。待つだけ。

やがて、人の出入りが多くなってきた。
僕たち日雇いのように見える人もいれば、社員のように見える人もいる。すぐに、待合所は一杯になった。

みな競馬の話や麻雀で勝った負けた、というたぐいの話ばかりしている。
すると、車内でさきほど
「年末じゃなかったら、こんな仕事やらんのやけどなぁ」
と話していたオッチャンが

「今日なにするんやろ?」

と言った。知らんのかい!
そう、知らないわけである。西成の路上で拾われた僕たちは、この場所でアチコチの現場へ割り振られていく。

手ぶらでいけた

僕を拾ってくれた手配師の男性が、「コレ!」とヘルメットを渡してくれる。
明るい蛍光灯の下で見ると、なかなか目鼻立ちの整った色男である。
「足、何センチ?」
と聞かれ、長靴を用意してくれるのだが、試し履きするモノすべてことごとく小さい。 
「OK。じゃあ、長靴要らんとこ行ってもらうわな。もうちょっと待っとって」

濡れないとこだ!乾燥が一番!履いてるのは、ただのスニーカーだけども。

待つ。わたし待つわ。ただ待つ。

突然、手配師の男性が7時近くにやってきた70代の男性を指さして、

「あの人の車に乗って!仕事終わったら、あの人に金もろてな」

と教えてくれる。行くか―。行くのかー。行きます。
事務所の大型テレビでは、星座占いが流れている。僕の星座の今日の運勢は、

“周りから良い刺激をもらえそう”

となっておりました。確かに刺激いっぱい。もう吐きそう。

現場に着く

二度目の移動。
車には4人乗車。運転席と助手席には、高齢のベテラン。
後部座席で待っていると、東南アジア系の男の子が乗ってきた。明らかに20代前半。

「よろしくお願いします」

「ほな、行こかー」

異常に荒い運転で大阪の朝焼けを切り裂いていく車。ワイルドスピード
前の2人は終始、この会社の文句を垂れ、隣の東南アジアの彼はイヤホンをしてYouTubeを見ている。


途中、コンビニに寄る。

「朝めしや。買い出しや」

なにか食っておいた方がいいとは思ったのだが、食欲はない。2時間前はあんなに、からあげクンが食べたかったのに。不思議だわ。

「現場は近いんですか?」

「もうすぐ、ソコよ」

ようやく現場の場所判明。
大阪のド真ん中だった。ラッキーなのかな。

マンションの建設現場の向かいにある立体駐車場に車が止められる。
時刻は7時20分。
車中で食事が始まる。おそらく始業は8時なんだろう。

待ち。待つ。Wait&See ~リスク~。

もう、覚悟はできた。押忍押忍!
と腹を決めたら、一気に眠気が、30分以上寝てしまった。

助手席のオッチャンに肩を揺らされて、

「行こか。仕事や」

とうながされる。ヘルメットを装着し、手袋をはめる。

長い1日はまだまだ終わらない。
3時間待って、いよいよ仕事開始です