暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

¥600「旅館 かなめ」西成安宿探訪 2日目

西成ホテル探訪・二日目

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昨日から今朝にかけて

昨日は、しっかりと西成の洗礼を受けた。身体中が痛がゆく、ムズムズ感が止まらなかった。狭くったっていい、小綺麗であって欲しい。コレが、これからの西成安宿探訪のテーマ。

 

朝の大阪メトロ堺筋線は、比較的空いていました。これなら、毎朝の通勤もさほど苦にならないだろう。

 

ビッグ・バグズ・パニックと言ってよい昨晩の惨劇は、僕を見事に一睡もさせてくれなかった。9:15分の出社前に慌てて自宅に戻り、すぐに服を脱いだ。昨日着ていたモノは全て焼却炉にぶっこみたい。でも、お気に入りのアノラックだから、やめておいた。そんな、執着があることが可笑しかった。

熱いシャワーを浴び、ルマンドを三本食べた。やはり、食欲は戻ってこない。

今日も西成に行くなら、着替えを持っていかなくちゃ!そそくさと、リュックにタオルや下着を詰める。なんだろか、この義務感は。

会社では、終始眠くて、仏頂面で通してしまった。申し訳ないです。

「旅館 かなめ」にリベンジする

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今日のターゲットはもう、ここしかない。19:30前には到着した。西成フロント撤退時刻ニーマルマルマルまでは余裕綽々である。

 

「旅館 かなめ」

 

昨晩、一泊を所望して、けんもほろろに断られた500円の宿。昨日、「あきまへん!」な態度で僕を追い返したゴマ塩頭のオヤジさんが、フロントにいる。一泊がダメなら、当然

 

「二泊お願いします!」

「あー、あなた明日何時に起きられます?」

 

ここは、早めの時間帯をぶっておくべきだろう。多分そうだろう。

「6時には出ます!」

「あのね、ウチのお客さんは朝早い仕事の方ばっかりなんですわ。みんな4時とか4時半とかには出られますんでね。その関係で、夜は早いんです。だから、9時過ぎたらね、もう寝はる人もいてますから。うるそうだけは、してほしないんです」

「はぁ」

「せやから、その点だけ守ってくれたら、だいじょぶですわ」

「うるさくなんて、する気ないです!」

男一匹、うるさくできる要素がない。


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謎のこんにゃく問答

「500円の部屋泊まられる?」

「そうですね、お願いします!」

「500円の部屋がいいの?二畳で窓付き、と、三畳で窓無しがあるけど」

「二畳でいいです!」

「それ荷物?二畳言うたらねぇ、荷物置いたら、もう寝る幅のうなる位よ」

「はぁ」

「んじゃ、三畳にしましょうかね」

「ただ、窓がないともう真っ暗よ」

どうしたいんだよ!どうさせたいんだよ!ゴールを教えて欲しい。

 

「もう一個高いのは、どんなもんなんです?」

「600円なら、三畳で窓付き」

「じゃあ、それで!」

「600円よ、いい?」

「大丈夫です!」

「二泊だと1200円よ、いいの?」

どういうつもりなんだよ!導く先を教えて欲しい、切に。

 

「カギはどうされます?」

出ました。昨日、学習しました。西成のスタンダード、鍵別料金システム!

「ああ、お金かかるんですね!」

「いや、あなたねぇ。もう、やめといた方がいいんじゃない?」

「なんで、ですか?」

「カギはね、ウチは受け付け時間ね。そこに書いてあるでしょ?」

張り紙には「16時半から20時」とある。

 

「その時間に返して貰わないといけないんですわ」

「あー、だから明日の夜は使えないんですね」

「もう、あなたやめといた方がいいんちゃう?」

「なんなんですか?それ」

「私ら、その時間しかいないんだから、その時間に返して貰わないと、延泊扱いになるのよ、わかる?」

むちゃくちゃなシステム!じゃあ鍵なんてなくても同じじゃないか。

 

「大丈夫ですかね?カギなくてもね」

「そら、知らんよぉ!なにか紛失があったとしても、私らは分からないよ、ただ・・・

長い旅館業でそのような事は一度もないんです 」

完全に決めてきた。噺家か!オチたんか!

とは言え、さほど嫌味でもない。のらりくらりとアウトボクシングをする技巧派ボクサーのようで、華麗さすら感じる。この人が西成何年生なのかは、分からないが、学ぶべきことは多いような気がする。

 

音を立てたら殺す

二泊分1200円を支払い、名前を聞かれる。オヤジさんは、メモ書き程度にそれを書き留め、それ以上の事は聞かれない。一瞬、「領収書欲しいんですけど」と言ってみたくなったが、またやり取りが長くなりそうだから辞めた。


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「それじゃあ、説明しますね。まず、この入り口ね。8時になったら、この半分閉めてまいます。それで、こっちの半分は、ちょっと腰曲げたらくぐれる位の高さでシャッター止めときますから。それで、出入りしてください」

「はぁ」

「絶対にシャッターに当たらないように。間違っても、全開にしてまわんように」

「うるさいからですか?」

「竹下さんね、シャッター開けた時の音聞いたことある?」

「はぁ」

「ガラーって、宿中みな起きてまいますやろ?それは、絶対ダメ、とにかく、ちょっと腰曲げるだけやからね。シャッターはね、くぐるものなの」

シャッターはくぐるもの、開けるとか閉めるとかじゃない。押してもダメなら引いてみな的な、斜め上からの重みがある。

 

ポッチを押したら殺す

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ようやっと、部屋まで連れて行ってくれる。

ガッツリ三畳、井草の匂いがする。何もないが、虫もいない。ホッとする。心底。


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「それでね、竹下さんね。ここのドアのノブのポッチ押してから、ドア閉めるとね。どうなる思います?」

「カギ閉まるんじゃないすか?」

「そーう!これが、もし竹下さんが便所行くときでもやってもうたら?」

「入れなくなりますね」

「そーう!竹下さんね、だから絶対ポッチは押さないこと!」

「あー、でも部屋の中居るときに、ポッチ押したら、カギかかるんじゃないすか?」

「あー、もうダメ。そういう考えダメ。とにかくポッチは押さない。触らない。よろしい?」


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多分、このオヤジさんは、何十年も毎日毎日、宿泊客に同じことを説明してきたんだろう。そして、嫌気がさすほど、シャッターに触れて騒音を出したり、ポッチを押してしまって入れなくなった客たちを見てきたんだろう。

とは言え、接客とは一期一会だ。あなたの何万回は、相手にとっては一回目なんだ。オヤジさん!なにか大きな落とし物をしてはいませんか?

そう言いたかった。

多分、言ったら、追い出されるだろうけど。

 

シンプルで安い、過不足なし

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しかし、何もない。土壁、薄い布団、照明、灰皿、作り付けの棚。

ただ、小綺麗!サイコー。虫の気配ゼロ。

板張りの廊下が歩くとミシミシと音を立てて、他の宿泊客や住人に気を使うけれど、トイレも清潔で、耐震性も耐火性も極端に低そうだけど、方々に伸びた廊下や階段は迷宮みたいな趣もある。日本旅館の醍醐味すら感じる。至る所に箒が置かれ、入り口には打ち水もされていた。これでいい。これがいい。


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これが600円なら、申し分ない。テレビや扇風機の有料貸し出しもあるようだし、恐るべきコストパフォーマンスと言って良い。時々、誰かが廊下を歩いて便所に向かう音以外は、全く静謐な空間。コレはリピート確定である。あの、オヤジさんも、また来た時には違う顔を見せてくれるかも知れない。


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そして、もう眠い。昨日の完徹が響いています。

今日は、ぐっすり眠れると思う。ただ、今日もまた菓子パン二個しか食べていない。この非日常感が食欲を奪っているのかも知れない。

46歳と二日、西成で初めて熟睡出来そうです。

おやすみなさい。


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旅館 かなめ

Google マップ

宿代:600円(二泊から)

三畳/テレビ貸出有/コンセント2口/扇風機貸出有/井草の香り/トイレ共同/ガスコンロ共同/万年床/部屋鍵オプション/喫煙/共同ゴミ箱有/灰皿有/一泊NG/夜間外出可/21時消灯/勝手にチェックアウト/Wi-Fi無/バグ無/棚有/日本旅館/迷宮感/土壁/毛布有/オヤジさん一癖有

 

清潔度 ★★★★

フロント

サービス★★

価格  ★★★★★

総合  ★★★★

 

食費

コカコーラ・紅茶花伝 145円

アサヒ・ほうじ茶 100円

 

西成に落とした金額

計:845円