西成ホテル探訪・十一日目
寒い。
早く、天満のマンションに帰ってヌクヌクしたい。あくまで、毛布とだが。
しかし、今晩も西成に向かう。
ちょっとこのところ、「Wi-Fiアリ」「清潔感」いわんや「暖房アリ」のなまぬるい西成安宿に甘んじてはいないか。自問自答。
今日の寝ぐらは1000円アンダーで行こう。そう決めて「動物園前」駅から地上へ。
ダイヤモンドからアポロへ
先日、「ホテル ダイヤモンド」で衝撃の独房感、寂寞の窮屈感を味わった一畳半。
一般的なドヤが三畳半の広さを誇るのに対して、ジャミロクワイの『virtual insanity』PVの、一番壁が迫ってきた時くらいのスペースが一畳半である。上手く伝わっていない気もするし、伝える努力も怠っていることは承知しています。
「ホテル アポロ」
「ホテル ダイヤモンド」の向かいに8階建のビルを構える。看板には850円の文字。
往時の共同アパート感漂う入口を入り、右手にある受付へ。
「今日、850円は空いてますか?」
突然の来客に慌ててマスクを耳にひっかけて、50代くらいの男性が、往時のラブホテル的な高さのガラス引き戸を開けて対応してくれる。
「ありますよ。お名前は」
「竹下で。一泊でも大丈夫ですか?」
「いいですよ」
当たり前のように、カギは無し。男性はほとんどホテルの説明はしてくれなかった。
すっかり見た目も西成になじんできたのかも知れない。
「門限はないです?」
「9時でシャッターは閉めますけど、横のドアは開けてます」
部屋番「612」
正面のエレベーターを待っていると、風呂上がりっぽいオッチャンと遭遇。風呂もあるのか!説明してくれや!
「お風呂、その奥ですか?」
「そうよ。今日は寒いわな!」
「ホントですね」
エレベーターは西成ドヤおなじみの、奇数階だけ止まるパターン。僕は5階。相乗りしたオッチャンは7階へ。
ワンフロア階段を登って6階へ。
オッチャンも6階だったらしく、階段を降りてくる。
「ニイちゃんもこの階かいな?元気やな!おやすみ」
「おやすみなさい」
まだ、7時半だけども。
1.5畳、再び
つくりはほとんど「ホテル ダイヤモンド」と変わりなし。いくぶん、フローリングの色調が明るい。そして、外に照明スイッチ。めんどくさいなぁ。
部屋のドアの幅と、隣室の間隔がほぼ同じ。
ただ、テレビもねえ、このフロアは静かで夜中になっても隣の物音ひとつ聞こえてこなかった。監獄のようである。お巡り毎日ぐーるぐる。
内鍵、ハンガー、電源、灰皿、窓を開けても、すぐに壁。布団のシーツは十分キレイで合格点。
いつもテレビなぞ見ない生活を送っていても、ドヤではつい点けてしまうのだけど、最初からなければ見ることも叶わない。
窓際の板の下には「下足入れ」があった。入口サイドにたたきのようなスペースすらないので、ココに入れるのだな。
このタイプの入館証が西成安宿には多い。名前聞かれたけど「タケシタ」とすら入っていない。なんで聞いたんだよ!イライラしてはいけない。
ルーフトップがある
館内を散策。
トイレ、ガス台。和式ではあるが清潔さがある。ちなみに「ホテル アポロ」では、『ガス玉』のことを、『ガスコイン』と言っていた。元イングランド代表の名サッカープレイヤー、ガスコインも酒でトラブルを起こす人であった。西成っぽい。
試みに8階まで上がってみると、屋上が解放されていた。1.5畳のこのドヤに住み続けるとしたら、ときどき屋上に登りたくもなるだろう。住人の方のものだろうか、洗濯物が冬空にたなびいていた。
ちなみに8階のエレベーター前にすごく淀んだ空気を感じた。霊障のたぐいだろうか。幸い僕には霊感はない。ゆったり感のある服が好きだ。
電気あんかは高価
外出した際に1階に降りて受付付近を確認したら、1階のみWi-Fiがきているみたい。レンジやポット、風呂もあるし1.5畳に納得できるならコスパは高い。僕は、モチ納得しています。
「ホテル アポロ」の料金体系は3パターン。
980円ならテレビが付き、1550円出せばエアコン+冷蔵庫がもたらされるようだ。
そして、戦慄を覚えたのが、この貼り紙。
部屋代より高いじゃないか!
ただ、「販売中」のようなので、冬の西成安宿巡りに、電気あんかを加えるというのはアリかも知れない。これ以上、荷物を増やしたくはないが、今夜の暖房無しの宿での一泊の具合で、購入する決断に至るかも。
フローリングの罠
西成ダイエット継続中のため、少しばかりの食料を買って戻ると9時を回ってしまった。ヤベ、寒い夜に備えて湯に浸かりたかった。ギリギリになんとか撮れたのが、下記画像です。バスクリンぽい色味。
洗い場含めて、3人入ったらイモ洗い状態かなぁ。しくじりました。
先日お世話になった「ホテル ダイヤモンド」もフローリング敷きの1.5畳で布団の下に敷くマットレスも用意されていて、確かにフカフ感はあった。
でも、正直ただでさえ狭い部屋に、こんなもんいるかいな!と憤っていたのだ。イライラしてはいけない。
しかし、理由はわかった。
フローリングは底冷えがスゴい。シュゴい。
布団もペラッペラだしなぁ。
電気あんか、か。電気あんかなのか?
そんな贅沢はダメ!
もう受付も閉じているし。イラついても、オラついても、仕方がない。
夜中に寒さで眠れず、ボーッと入り口の横のコンセントをながめていた。
コンセントのくぼみやビスが「顔」に見えてきた。シミュラクラというやつだ。
孤独が溜まり溜まって、表面張力を突き破るようなことになったら、このコンセントボーイと会話し始めたりするような気がする。
映画『キャスト・アウェイ』で孤独な無人島生活を送るトム・ハンクスが、バレーボールをウィルソンと名付けたように。
画像に加筆してみたら、ペニーワイズっぽくなったので、その名はペニーとしておきたい。また、機会があれば会おうペニー。
なかなか眠れなかったし、底冷えの怖さを十分に感じる夜だった。しかし、持参していたプリマロフト系の服を重ね着すると、いつの間にか寝ていました。
ただ、このブログを書くためにスマホの画像フォルダ見直していたら、夜中に起きて写真撮ってたようだ。
さみしかったのかも知れません。ペニーに会いたかったのかも知れません。
ほの明るい6時過ぎに退出。
天満のマンションに帰って、二度寝して、昼の仕事に遅刻しました。
気をつけます。
ホテル アポロ
宿代:¥850
一畳半/コンセント3口/トイレ共同/風呂共同(21時まで)/布団/毛布/鍵有(保証金¥1000)/内鍵/喫煙/灰皿/お盆/一泊OK/夜間外出可/Wi-Fi(入口付近のみ)/ハンガー/ハンガーポール/自販機(ジュース)/翌朝8:30時まで/エレベーター(奇数階のみ)/屋上/電子レンジ共同/ガスコイン/電気ポット共同/電気あんか販売中/フローリング/電気スイッチ(外から)/下足カゴ/ペニーは友達
清潔度 ★★★★
フロント★★
サービス★★
価格 ★★★
総合 ★★★★
食費
チーズスティックケーキ 108円
春日井製菓・豆極み 絶品のり塩味×2 210円
コカコーラ・紅茶花伝 90円
キリン・生茶ほうじ茶 89円
レジ袋 3円
西成に落とした金額
計:1350円