西成ホテル探訪・十三日目
カプセルホテルの誕生
海外でバックパッカーが長期滞在する安宿といえば、「ドミトリー」スタイルが思い浮かぶ。大部屋に2段ベットがいくつも置かれていて、解放感はあるが、個人のプライバシーという観点では抵抗を覚える人もいるかも知れない。
これまで泊まってきた西成安宿には、このドミトリースタイルがなかった。
狭くても、1.5畳だろうと、虫がいようと、「個室」。
太陽の塔で知られる1970大阪万博で建築家・黒川紀章が発表した「住宅カプセル」は、メタボリズムというキーワードで、都市建築には、有機的に代謝を繰り返しながら成長、改変、増殖できるシステムが必要であることを示した。その商業形態として完成したのが「カプセルホテル」だという。
以上、Wikiと検索の成れの果てで書いてみました。
ドミトリーINニシナリ
最盛期よりは、ドヤの数も、労働者の数も減少した西成あいりん地区周辺にあって、海外からの旅行者向けにオシャレな、カッコいいドミトリースタイルの安宿も誕生している。
個人的には、共同キッチンとか、ラウンジとかで、宿泊者どうしがカジュアルに交流をはかりながら旅先の一夜を過ごすというスタイルが苦手。
こういう感じですよね。馴染めそうにない。
語学へのコンプレックス、汎アジア丸出しのルックスへのコンプレックス、話し下手・滑舌の悪さへのコンプレックス、などの表出を極度に恐れてしまう。年をとっていくらか「どうだっていいわ!」という投げやり精神がボリュームを上げてきたのでマシにはなっているが。
そんな洒落たドミトリーに今夜は泊まります。
宿泊料金も見事に、1200円アンダーですし。ドヤのなかでも、バリエーションは必要よね。
セルフエントランスに戸惑う
今回は、楽天トラベルで予約を済ませていたので、ダッラダラとあいりん地区のど真ん中にある 「R Hostel Namba south」へ。
オシャレやん。
と、入り口の電子ロックが開かない。
チェックイン20:30で予約してたのになぁ。と、ピッキング素人がガチャガチャやっていると 、背後に人影。
「開きませんか?」
「いや、まだチェックインしてないんですけど」
宿泊客とおぼしき30代ばかしの青年が、ハイボール缶片手に立っていた。
「いっしょに入っていいですか?」
「いや、怒られちゃうんで。俺はパスワード知ってるんで」
「そうですか。電話してみます」
と、青年もガチャガチャやる。ピッキング素人だな。開かない。
「おかしいな‥‥」
大胆なピッキング作業を聞きつけて、中から人が。
後から、メールを確認したら、セルフチェックインの手引きが送られてきていた。オシャレ。
西成ドヤっぽくないチェックイン
受付の女性に促されて、住所や名前、連絡先などを記入。いつもの西成安宿のように名前を聞かれて、ハイどうぞ!スタイルではない。真っ当なホテル。
適当に記入。楽天トラベルで個人情報は握られているのに、二度手間を感ずる。説明の紙を読んでおいてくれ、と告げられ女性はパソコン作業に戻っていった。
ちゃんと書きました。適当じゃなく。ホントです。
即寝。夜中起き
1階に、共同キッチンとランドリー。交流スペースが設けられている。キッチンの鍋には、おでんがあった。コレを囲んで語り合うスタイルが執り行われているのだろう。馴染めそうもない。
こういう感じですよね。イケ好かねえな。
指定された2階に上がる。2段ベッドが10基ほど並べられたスペースの下段ベッドNo.9に滑りこむ。シーツや枕カバーは自分でとりつけるようだ、セルフシーツ。
木製のフレームのベッドに、少し寸法が合っていないマットレス、枕元にコンセント。適度な空調。
疲れているのは自覚していたが、ものの10分で寝落ちしました。
寒くって、即もどる
2時を過ぎて、目を覚ます。
せっかくなので館内散策。
2階〜5階は客室。女性専用フロアもあるようだ。6階には、シャワールームがある。
確かに清潔感はあるし、他の宿泊客も若い人ばかり。
ただ、この個人スペースで1140円なら、ほとんど同じシステムの一般的な「個室」西成安宿の方がリラックスできるかも。入口も、各階のドアにも電子ロックがかかっており、しちめんどくさい感はあるので、オッチャンたちが酔っぱらってから入場できる気がしない。
その辺も、ドミトリーやホステルは、オッチャンたちには、しちめんどくさいと思う。
6階の洗面スペースには、「耳せん」が置いてあった。
おそらくは、先ほどらいの僕の睡眠タイムには、ボエーボエーといびきをかいていただろう。どうぞ2階の他の皆さんは、僕のいびきを防ぐために、この「耳せん」を利用していて欲しい、と願うのだった。
ドミトリーを僕がもひとつ好きになれないのは、自分のいびきの爆音っぷりを自覚しているからでもある。申し訳ない。けれど、申し訳ない。ホント、申し訳なく思うの。
真夜中というより、西成時間ではほとんど早朝に近い3時。
シャワーのあと、外に出てお茶を買ったついでに散歩していたら、日本語の教材が捨てられていた。向学心をもち続けるのは、とてもむずかしい。あんぱんを食べた勢いで捨てたようだ。
30分ほど経ってホテルに戻ると、交流スペースに若い男性が二人いて、どちらもうつろな表情で酒を飲んでいた。
こういうときに交流せねば!
「こんばんは。寒いですね」
「そすね」
終了。
もう一度、寝ます。
西成のホテルに泊まっている若者は、どんな目的でこの場所にいるのだろうか?
日雇いのオッチャン達よりも、その理由がわからなくはある。
かくいう僕も、名状できない理由でここに居るわけだが。そういった交流は次回に持ち越し。
取材が足らないなぁ。すみません。
R Hostel Namba south
宿代:¥1140
ドミトリー/2段ベッド/コンセント2口/トイレ共同/シャワー共同(24時間)/布団/電子ロック/全館禁煙/一泊OK/夜間外出可/Wi-Fi/翌朝10時まで/ハンガー/フック/エレベーター/キッチン共同/コインランドリー/荷物預かり可/耳せん/タオルレンタル/年齢層若い
清潔度 ★★★★
フロント★
サービス★★
価格 ★★★★
総合 ★★★
食費
サンガリア・いちご&ミルク 90円
サンガリア・あなたのお茶 90円
西成に落とした金額
計:1320円