西成ホテル探訪・十日目
前回のブログは、変化球を投げて、これまでで一番たくさんの方に拙ブログをご覧いただけて、うれしかったです!
ただ、このブログの本懐は「安宿」を体験し、巡ること。
この記事からまた、一気に見てもらえなくなるんだろうなぁ。と思いつつ、今晩は記念すべき10泊目。頑張っていきます。まっしょい。
今日の大阪は最高気温が10℃程度、夜半には3℃になるらしい。確かに寒い「動物園前」駅から地上に出るときに、行く手を遮るように吹き込む風が痛い。今日の寝ぐらは数日前にお高い部屋しか空いていなかった。
「ホテル 大阪」
再チャレンジ。
ミドルクラスのルームを確保
看板が屋内に入れられているから、満室なのかな。と心配になるのだが、突撃。
「今日、1200円の部屋空いてますか?」
「ああ、1400円なら空いてますよ」
「いいです!そこで。お願いします!」
ここ「ホテル 大阪」の料金体系は3パターン。
今日の寝ぐらはBタイプ。ミドルクラスのお部屋です。
「ちなみに、1200と1400はどこが違うんですか?」
「1400だと冷蔵庫が付きます」
「1800だと?」
「他の部屋は畳なんですよ。1800だとフローリングになります」
畳文化はいい。それは否定しない。しかし、西成安宿における畳は、これまでの全ての宿泊客のカルマを呑み込んでしまったような負の因果を放出しているのだ。600円プラスする意味は十分わかる。
ただ、その程度の違いか。掃除キチンとしてあるといいな。
「初めてですよね。ちょっと説明しますね」
50歳ぐらいとおぼしき、受付の男性は、カギの保証金が1000円であること、シャワーは22時まで、門限が0時、チェックアウトは9時、朝は7時から受付が空いていること、など教えてくれる。注意書きのペライチとカギを渡され館内へ。お世話になります。
ここは男性専用の宿。「賭博・薬物使用・売春」などの違法行為は禁じられているとのこと。当たり前だが、ホテトルを呼んだりしてはいけない。ヤクブーツはやめろ。
2階に上がるとドアの前に内履きが並んでいない。これだけでもドヤ感は薄くなる。少なくとも、靴を置くスペースが室内にある、ということだ。古めのマンションみたいな感じ。
畳だっていい。清潔ならば
おなじみの三畳一間。プラス靴置場。万年床じゃないことが、一定の掃除されてる感を漂わせる。実際、ほとんどホコリや毛髪は気にならない。そして、机の上に冷蔵庫。テレビのスイッチがコンセントサイドにダイレクトにあるというトリッキーさはあるが、電波状態も良し。地上波デジタルのみ。電源の数も十分で、作業机もある。いくらか不安定だがWi-Fiも効いている。ちょっとパスワードが投げやりだとは思う。
暖房のある幸せ
前述した通り、今日の晩は冷える予報。空調が効く部屋だといいな、と思ってはいたが館内一括空調のようで、部屋にいても快適。実際、僕シャワー上がりにTシャツ一枚でコレ書いてます。もう、真夏のようだ。早く春になって欲しい。そして、夏なんてこないで欲しい。
廊下に出て、デジタル温度計を見たら館内温度は17℃。真夏と言って、すみません。しかし、部屋の中はさらに暖かさを感じる。
窓を開けたら、すぐ壁があらわれて、そこにシルエットで浮かぶ己の姿が愛おしくなった。
シャワーの罠
共同便所に、おなじみのガス台。6階建ての他のフロアにも行ってみたが、5階はちょっと高級なトイレとシャワーだった。ドライヤーなんかもあったので、料金体系の違うフロアなのかもしれない。ただ、ドライヤーなんて生涯2度くらいしか使ったことないので、羨ましくはない。髪を早く乾かして、なにかいいことあるんですか。
「ホテル 大阪」は楽天トラベルでの予約も受け付けているようで、楽天予約者専用シャワールームなども存在した。カギもIT上級者はBOXに返却すれば良いようだ。
まあ、大阪観光に来て、このホテルに泊まった若人などは、それなりに落ち込んでしまったり、この世の終わり感を覚えるかも知れないので、せめて専用シャワーで差別化を図って欲しい。大丈夫だ、ここは、西成の深淵ではない。
僕は1400円のミドルクラス宿泊者なので、ルールに従って、2階にあるシャワーを使うことにする。ボディソープやシャンプーは常備されていないとのことだったが、固形石鹸は置いてある。少し、ほんの少しだが抵抗があったので、持参のビオレUで全身行こう。
と、シャワールームの蛇口をひねっても、一向にお湯が出てこない。水圧は十分ある。しかし、もうマッパになっていた僕の、肌には体感冷水しか当たらない。冷たすぎて、逆に熱さを感じるくらいになってきた。ヤバい!
まだ、22時前なのに、もうお湯出ないんでしょうか?冷たい、痛い。ギブアップする。「ギーブ、アッッッップ!」かつての『PRIDE』の島田祐二レフェリーの声が耳元でする。
震えながら、服を着ようとしたら、壁際に給湯スイッチを発見!
もう一度、服を脱ぎ、無事シャワーを済ませました。「アクショーーン!」と膠着を攻めるような島田祐二レフェリーの声がまた聞こえた。
ガス玉チャレンジ
いったん、部屋に戻って受付時に渡された注意書きなぞ眺めていると
「コンロを使う方は『ガス玉』をフロントで購入してください」
のテキストに目が止まる。ああ、アレを使うには「ガス玉」がいるのか!あと、フロントじゃなくて受付な。
「20円」
この生活をはじめてから知った文化。便所併設のガスコンロ。それを使うための「ガス玉」。10円玉2枚。フロントじゃなくて受付に行き、
「ガス玉もらえますか?」
「え?ああ、20円です。2階のが壊れてるかも。動かなかったら、他の階行ってみてください」
見てください。コレがガス玉。「投入物」と印字された銅貨。
便所に行き窓際のガスコンロの下にあるメーター兼マシンの投入口に投入物であるところのガス玉を入れます。(確かに2階のヤツは壊れていたので、4階でやっています)
栓をひねるとガスが吹き出る音がするので、備え付けのチャッカマン的なヤツで火を灯す。
ああー、点きました!点きました!
ただ、何も調理するものはないので、タバコ一本吸いました。
ガンガン他の宿泊客が、便所してる横で調理するのは、まだ抵抗がある。慣れるかも知れません。慣れないような気もします。
今は、コンビニやスーパーで、レンジアップした温かい弁当などを手軽に食せるようになっていますが、かつてのドヤにおいては、仕事を終えて温かい食事を作るのに欠かせないのが、このガスコンロであったのだろう。こんな寒い夜など、きっとこのガスコンロとガス玉は大活躍したはずだ。
横打ちも載せておきます。結構長い時間燃えていました。ガス玉チャレンジ終わり。
あの人は、今日はいなかった
少し、外出する。先日出会った「4日間なにも食べていない人」は、この間の場所にはいなかった。今日は、なにか奢ってあげたかった。足を伸ばして、あの人の行きつけの惣菜屋に行っても良かった。一期一会。もう、会えないのかも知れない。
今日の通天閣は青かった。
この間まで、「コロナ赤信号」という意味で赤くライティングされていたのだから、青いライティングは「コロナ警戒解除!の青信号」という意味なのかと思ったら、この青色は「医療従事者に感謝!」という意味らしい。一貫性に欠けると思います。
ホテルに戻って、各階のエレベーター脇にある豊富な漫画ラインナップなど確かめていると、「マダニ」情報の貼り紙が。南京虫だけでなく、ダニ系も部屋にいる可能性があるんだ。仕事に行った皆さんが部屋に持ち帰ってしまうことがあるのだな。バグズ・パニックは続く。
11、「ツツガムシじゃなくて良かったとあきらめる」
との記述に「ホテル 大阪」さんの愛を感じる。良い宿だ。『女帝』もあるし。
よく眠れました。
深夜には暖房が切られていたようで、結局寒くて目を覚ました。
朝方に、布団にくるまるのは、どの西成安宿も同じ。
朝の受付には、ご老人が居て、カギを返して保証金1000円を取り返そうとしたら、
「ハイ、マエナカさんですねー」
と呼ばれたので、もしここで僕が「マエナカ」を任じてしまったら、「竹下」は保証金を受け取っていないことになり。「マエナカ」が保証金を受け取れない、という事態になるのではないか?と瞬時に計算しつつ、
「いや、竹下です。220の」
と申し出て、脳ミソの活動を終えました。
今から、活動を終えた脳ミソで、昼の仕事してきます!
ホテル 大阪
宿代:¥1400
三畳/テレビ/コンセント3口/トイレ共同/シャワー共同(22時まで)(石鹸)/布団/毛布/鍵有(保証金¥1000)/内鍵/喫煙/灰皿/お盆/冷蔵庫/テーブル/一泊OK/夜間外出可/Wi-Fi(ちと不安定)/ハンガー/棚/テーブル/自販機/翌朝9時まで/エレベーター/漫画たくさん!/門限0時/暖房ギンギン/電子レンジ共同/ガス玉/電気ポット共同/紙コップ/コインランドリーが隣
清潔度 ★★★
フロント★★★★
サービス★★★
価格 ★★
総合 ★★★★
食費
森永・ポテロング ごま油としお味 89円
森永・ジャンボバニラモナカ 98円
コカコーラ・紅茶花伝 90円
キリン・生茶ほうじ茶 89円
タバコ・アメリカンスピリット 400円
西成に落とした金額
計:2076円