暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。48日目 「西成労働福祉センターへ行く」

2021年4月20日。   

「いつの間にか、もう財布がカラなんだよね。なんでですか?」

とは、西成現金現場で一緒になった人が呟いていた一言。

「そりゃ、使うからでしょ?」

って答えた記憶があるのですが、かく言うアタシも、先週あんなに身体を酷使した記憶が鮮明で、記憶どころか身体的痛痒も残っているのに、もう所持金が寂しくなっている。

「そりゃ、使ったからでしょ?」

と己の耳朶に響かせる必要がある。

「だって、働いてないでしょ?」

と畳み掛けたい。

 

画像は、三色旗ともルーマニア国旗とも並びが違う看板。
学会とも、東ヨーロッパの共和制国家とも無関係かも知れない。

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財布の厚みを増すために、先週末のウーバーイーツ収入から20000円を引き出す。
それでも、二万以上は貯蓄という名の諸々引き落としに回せる。

僕のメインバンクは、(メインバンク!カッコつけんな!サブバンクなんか無いくせに!)三井住友で、大阪にはやたら三井住友のATMがあるのだが、あいりん地区周辺には無い。
住民を選別してんのか。利用者が少ないのか。

公的機関はいかがなものか

今日も、仕事する気ヌーで、自然に目が覚めるのを待ってノロリと起き出したので、早朝の求職活動は行っていないので、仕事の多寡は分からないのだが、西成での仕事の王道といえる

「あいりんセンター」を訪ねる。

という行為に及んでいなかったことに気付き、いつもその建物は眺めてはいたが、足を踏み入れていなかった「西成労働福祉センター」を訪れる。

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今でも、その建物自体は取り壊されていない、あいりんセンター=あいりん労働福祉センターは閉鎖され、職安や食堂、商店も併設された総合センターはなくなった。

そこに存在した機能の中から、職業紹介や職業訓練に特化した部門として現在労働者を受け入れてくれるのが「西成労働福祉センター」。

 

病院の受付のような、あるいは役所の窓口のような(実際そうだろう)場所。

電光掲示板や貼り紙による「現金」「契約」の求人票が見受けられる。

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館内も館外も、さながら野戦病院のようで、地面に横たわったオッチャンやただ腰掛けて虚空を見つめているオッチャンがそこかしこに。

清潔感のある施設とのギャップが大きい。
きっと、以前のあいりん労働福祉センターのコンクリむき出しの造作ならば、しっくり来る風景だったろう。
遅れてきた西成労働者である僕には、その景色はもう見られない。

 

壁に貼られた「たずね人」の案内。

24歳か。
探している人は親御さんだろうか。
西成に流れてくるような予感はあったのだろうか。
しばし、その名前を眺めて想像力があらぬ方向に繋がっていく。

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就労支援の窓口で話を聞く。

「初めて来るんですが、コチラに朝5時に来れば日雇い仕事を紹介してもらえるんでしょうか?」

「はい。ただ、もう人が決まっている現場も多いし。とくに4月は仕事が少ないんですね。毎年そうなんですけど、とくに今年はコロナもあってね。来てもらっても、紹介できないことも多いです」

「そうですか。『契約』の求人票もいくつかありますけど、こっちは紹介してもらえるんでしょうか?」

「ええ。紹介はできるんですが、これも今の時期仕事が無くて、結果的にマイナスになることもあるんです」

「はあ。宿泊と飯代の3000円をただ取られるだけで、仕事が無いこともあるんですか?」

「そうなんです。それが現状」

 

「現金」が無いならば、「契約」で。
と考えていた予断は、真っ二つ。
飯場に行っても、飼い殺しになるのか…。

 

「紹介してもらう時に、登録したりする必要はありますか?」

「実際にご紹介する時に、こういうカードを作ってもらうんですけど、その時でいいですよ」

「コチラを介さない形で、早朝、その辺りの道路で仕事募集してますよね。あっちの方がまだ可能性は高いんでしょうか?」

「そうやねぇ。ウチにも前日に求人情報は来るんです。けれど、5時よりももっと早い時間?路上でやり取りしてもらう方が可能性は高いかも知れない。もちろん、ウチとしてはココを通してもらいたいんですけど、その方が安全やからね」

「なるほど。分かりました。一度、早朝に伺ってみます」

 

結局、野良で探すのかなぁ。
まあ、いっぺん来てみまひょ。そうしてみまひょ。

とにかく、春は日雇いにとって厳しい季節なんだなぁ。
一番、働きやすい季節なのに。

100本ノックの経過

天気は良く、公園にも人が多数出ている。

誰かと話しをしたいな。
と思いながら、話しかけられずに、ただタバコをくゆらす。
クソクズチキン野郎。

 

四角公園で自分の不甲斐なさを噛み締めていると、ベンチで弁当を分け合って横並びで食べている熟年カップルが話している。

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オッチャンの方はしたたか酔っているようで、オバチャンをいじりまくっている。

「誰が都はるみや!雲仙普賢岳の土石流みたいな顔しやがって!」

そのテンポや口調が可笑しくて、思わず吹き出す。

「ニイちゃん!何、わろてんの!見てみ!もう、ソテツみたいな顔色してるでしょ!コレ」

「いやいや…」

オバチャンは、「いつものことや」てな風で柳に風。

 

「ホンマ、創業300年の老舗の暖簾みたいな顔してからに」

「わしゃ、妖怪か!」

「ええ?妖怪ならまだ可愛いわぁ!『なんか、ようかい?』ちゅうてねー」

 

「オッチャン、たとえがスゴイなぁ。ポンポン出てきますやん!」

「褒められたわー。何も出ーへんで!ポケット見てみー。すっからかんのカンカンやで」

「ご夫婦ですか?」

「ご夫婦ー?ごフーフー?そんなエエもんちゃう。でも、好きなんだぁ。なあ?今度、しっかりしたセックスしようや」

スゴイ畳み掛け。大阪の、西成の底力を見る。
オバチャンの受け流しっぷりも絶妙。

 

「西成生まれですか?」

「俺はハーフよ!インド人と西成人のハーフ。お父ちゃんとお母ちゃんが、『はぁふぅー!ハーフー!』よがって、俺が出来たんや!」

「なるほど。ですねー」

 

スゲーな。

でも、それ以上踏み込めず。
オッチャンは一足先に去って行き、オバチャンは食べ物の残りを公園の鳩に配り、自転車で後を追って行った。

「でも、好きなんだぁ」

の時の顔!
真に迫ってた。

そんなカップルの愛憎ぶりを垣間見た。
そんな愛の形もある。

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二つの蛇口

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「パークイン」の手洗い場には、固形石鹸が常備されており大変助かる。

そして左右、二つの蛇口があり、その水の出方が異なる。

左側の水流はワイド。

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右側はストレート。

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洗い物や洗顔の際には、左側のワイド噴出を用い、西成水の補給などには右側のストレート噴出を用いると効率的。

こういった工夫も、長い西成での宿経営において確立されていったのだろう。
優秀。

 

今日も、絶食。西成水をストレート側で補給。

本日、西成区の最高気温は25℃。
まだ、かろうじて水は冷たさを保っている。
気の利いた「パークイン」で補給する西成水でした。

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収入

47,744円

 

使った金額

貯金:27,744円
午後の紅茶・ミルクティー:192円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール12mm:400円

 

所持金

23,042円