現在の食生活に、何が不足してるか? 豆腐ではないか。
大豆よこせ。
西成に来る前には、週2ペースで牛乳1ℓパックを飲み干していた気がする。
しかもなんと贅沢なことに、パスチャライズ牛乳なぞという低温殺菌の美味しいミルクに舌鼓を打っていた。遠い過去だな、贅沢していたあの頃。パスチャライズでこさえるフルーチェとか最高だった。今年の夏は、フルチェらなかった生涯初の夏であったかも知れない。
もう一生フルーチェを囲んだ食卓で、笑顔あふれるパーティーとかしないんだろう。
そんなパーティーしたことはないが。
大豆をよこせ。
そこで、井上商店へ。
豆乳を飲む
このお店の前を通るたびに、視界に入ってくる魅力的な文字列。
「しぼりたて豆乳」
しぼって、すぐ。もうしぼった、そばの豆の乳である。
安直なイメージとしては、乳牛の乳首にしゃぶりつく勢いであるが、豆乳とはそうしたモノではない。
ああ魅力的。
朝の早いであろう豆腐店。
昼を少し回った時間帯であるが、店内に入るとおかみさんは洗い物をしており、店じまいが近そう。
「こんにちは。豆乳ありますか?」
洗い物の手を止め前かけで濡れた手を拭い、冷蔵庫から豆乳がなみなみに詰まった容器を出してくれ、
「今、飲まれる?」
「はい、すぐ飲みます」
紙コップに注いでくれる。
100円玉をおかみさんに渡す。
大豆だなぁ、大豆を感じる。
ソリッドで喉越しにキレがある。
アルコールよりもよっぽど美味い。
ああ、フルーチェ食べたい。牛乳多めでゆるく作ったフルーチェをゴクゴク流しこみたい。
フルーチェよこせ。
軽くお話しを伺いたかったのだが、おかみさんは忙しそうに後片付けを進めておられる。
「美味しいですね!」
軽くうなづいたおかみさんの微笑みをもらって、退散。
今度の労働のあとには、井上商店のしぼりたて豆乳で決まりだ。
フルーチェは作りたいけれど、器が無い。器を常備する器のない男である。
ちなみに豆乳でフルーチェを作ると固まらない場合がある。気を付けてください。
お湯をもらう
あいりん地区に戻り、昼メシを探す。
そういえば、また「しぼりたて牛乳」の貼り紙を見かけたときのような記憶が蘇る。
「ラーメン」
の文字列。
違った。
「ラーメン室」
だった。
こちら、「ふるさとの家」は、ホームレスの人たちに憩いを提供してくれている。
2階には、自由に出入りできる部屋や、無料で散髪してくれるサービスもある。
こちらでも散髪してもらわにゃならんなぁ。
髪が伸びるスピードと、散髪してもらいたい欲求のバランスが整わない。
写真を撮っていると、シスターに「おっちゃんらの顔は撮らんといてな」と話しかけられる。
すみません、承知です。
ふるさとの家、一階の「ラーメン室」を利用するために、ラーメンを買いに行く。
ラーメン室でラーメンを食べないで、なにがラーメン室か。
商店街の「田中米穀店」にて、120円で、
AKAGI 中華そば を購入。
「お箸は5円いただくけど、どうされます?」
きっと、割り箸は「ラーメン室」にある。と思う。
5円節約成功。
「ラーメン室」
奥には、自由に使えるガスコンロがあるので、備え付けの鍋に水を注ぎ火を点ける。
沸騰待ち。
と、右手を見ると、オッチャンがお湯で作るアルファ米に直接蛇口からお湯を注ぎ入れているではないか!
おお、直でお湯いけたんかい。
「そこなら、直でお湯いけるんですね」
「そうや、沸かさんでいいんや。カップ麺やろ?」
ガス火は消して、鍋をゆすぎ戻す。
今度、ガスコンロ借りる時は、袋麺を茹でる時だ。
懸念点であった割り箸も、ある。
ありがとうございます。
コロナ対策のパーテーションで仕切られたスペースで黙食。
一蘭の味集中システムを思わせる趣である。
雨の日、疲れた日、寒い日、誰かと話したい日。
そして、ラーメンを作って食べたい日。
生きてりゃ色々ある。
こんな場所があることに感謝したい。