「ソレイユ」soleil
とはフランス弁で「太陽」を意味するらしい。
シルク・ドゥ・ソレイユは「太陽のサーカス」
「太陽のKomachi Angel」は日本のロックユニットB'zによる1990年のヒット曲。
やや乱れて、ヨーセイ、イエーイエーである。
そんな、どんな? 名を冠した喫茶店が西成あいりん地区にはある。
西成警察署の斜向かい「喫茶 ソレイユ」
いい意味で昭和的な趣を湛えた外観の店舗が多いこの地にあって、まさに太陽の輝きを思わせるようなレンガ造りの意匠がオシャレ。
オシャレだけど、店の前ではいつものように、オッチャン同士が口喧嘩を始めたりして、マスターが「また、なんかやっとるな…」と店先を覗きに行くような状態であった。
この喫茶店の営業時間は、
開店4:30
閉店13:00
とGoogle先生は教えてくれた。
以前訪れた「たちばな食堂」と同じく、朝早く仕事に出かける労働者たちをギリ迎えてくれ、仕事にあぶれた日にも受け止めてくれる。
そんな太陽。行きたいよう。
午前9時頃、店を訪れると、先客が2名。
ご常連らしく、「いつもの」でメニューが通る。
「いつもの!」で着席と同時に、調理が始まるような関係性の飲食店を持ちたいなぁ、とは思わなくもないが、そこまで親しくなってしまい、コチラのセンシティブなやらかい辺りまで踏み込んで来られてしまうのでは?という危惧もあるので、「いつもの!」状態は要らないかなぁ、とも個人的には思う。
そんなことだから、知り合いも友人も少ない訳だが。
入って右側にカウンター、厨房の壁には年季の入った鍋やフライパンがかけられている。
正面から左側にかけてのスペースには、四人掛けのテーブルが数脚並んでいる。
店先の貼り紙で見たモーニングを注文。
メガネ姿の華奢なおかみさんが対応してくれる。
これはお安い。
断然「B」であろう。
カウンターの端っこに座して、Bを待つ。
厨房の奥、引き戸を開けてマスターが現れ、調理してくれているようだ。
カウンター席からは、タイガー珈琲のロゴが見える。
大阪東成区にあるコーヒー製造・販売会社のようである。
地元の味を楽しめるコーヒー店ということになるが、モーニングセットのドリンクはアイスミルクにしてしまった。もう引き返せない。タイガーを味わうのは次回。
そして、カウンターから見える棚に札束が!
と驚いたが刹那、そうだね、おもちゃのお金ですね。
玩具銀行。
赤いウインナーのドッグ
待望のBセットがやって来た。
少量ではあるが、サラダにバナナ、ゆで卵。
そして、メインのホットドッグ。
に、シロップ付きのミルク。
これで400円は破格。
そして、特徴的だったのはホットドッグのソーセージ。
ドイツ的な奴ではなく、赤いウインナー。タコさんになる前の。
半切ではあるが、確かにあの肉肉しさの薄い、赤いヤッツである。
パリッとして、肉汁ギューみたいなドッグが欲しい向きは、そういう店に行ってもらいたい。
むしろ、小籠包とか食ってもらいたい。
西成の太陽に照らされたような人工的な赤が「喫茶 ソレイユ」のホットドッグなのだ。
「持っていっていいよ!」
お客さんが途切れたタイミングで、首元が広く空いた黒いロンTを着た屈強そうなボディのマスターと会話。
「4時半から営業してるんですか?」
「ああ、今ねコロナあってから? 5時から11時までにしてるんです。食事も休みにしてますねん」
壁に貼られたメニューには、ハンバーグやカレー、定食類も掲げられているが、現在は休止中。再開時期は今のところ未定だそうだ。
ランチタイムには、500円のサービスランチも提供していたらしい。
そちらも、休止中。
「それ、4時半言うのはなんかに載ってますのんか?」
「Googleマップには、そう載ってましたね。ネットでは」
「そうなんや。インターネットとか、見んからね(笑)」
ということなので、ググマの営業時間の情報は修正を提案しておいた。
傍証がないので、採用されないかも知れないが。
お昼廻って来たら、もう閉まってるよ!
インターネットの隅っこで言いたい。
「このお金、いいですね!一瞬ホンモノかと思いました」
「それね。もっといっぱいたんまりあったんやけどね、だいぶ減りましたわ。良かったら、持っていき!」
「いいですか!一枚もらいますわ」
結果、400円を支払い、 福沢諭吉風の肖像が描かれた10000円札を手に入れた。
玩具銀行発行の。
「なんか特した気分ですわ」
「そうでっしゃろ(笑)」
「また、今度はランチ食べに来ますね、ごちそうさんです」
「うん、お願いします。ありがとーう」
この、喫茶店から「ありがとう」と送り出されていく感じ。
小休憩を挟んで、「また、行くぞ!」と街に出て行く背中を押される感じ。
ここに、喫茶店の価値の半分以上がある。
「喫茶 ソレイユ」のマスターのそれは、「ありがとーう」の「ー」棒引きの部分で、即合格点。
ご馳走様でした。
赤いウインナーのホットドッグと、ポパイとオリーブを彷彿とさせるマスターとおかみさん、街という名の戦場へ送り出してくれるエールを味わいたいなら、午前中に訪れていただきたい、「喫茶 ソレイユ」でした。