暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。69日目 「映画館に看板だけを見に行く」

2021年5月11日。

永遠と思えるほど、延々と眠ってしまった。

少し起きては、また眠り、少し目覚め、お小水をし、眠る。
そのループ。
その連環で朝になった。

これは西成暮らしを始めて気付かされたのだが、いわゆる「朝顔」と呼ばれる小便器で小便をすると、かなりの跳ね返りがある。
マンション暮らしをしていた時には座って小のほうも座って用足ししていたし、出先で小便器に向かう際には長ズボンを履いていたので、跳ね返りに気が付かなかった。
西成の安宿では、Tシャツに短パンで過ごしており、そこでようやく「朝顔からの跳ね返り」を意識しだした。
結構な量のおしっこ飛沫を、返り血のごとく我々は浴びている。映画『椿三十郎』のクライマックス並みに。そういえば、僕はもう数年後には、椿五十郎なんだな、もうイヤ。

畢竟、男のズボンはかなり尿まみれだ。
アンモニアンと言って差し支えない。
気を付けて欲しい。やっぱり、洋式便器で座りションするのがベスト。
何事も立って行わず、落ち着いて座って行うべきである。
それでアンモニア臭との関わりを大部分断てる。

食わないから、働かないでいいでしょ

すっかり求職活動もせず、ずっとDMMブックスの電子書籍アプリでセール時に購入したマンガを読み耽る。

おかざき真里『阿・吽』、アルコ・ひねくれ渡『消えた初恋』、椎名うみ青野くんに触りたいから死にたい』、くれよんカンパニー『世界は半分になった』、羅川真里茂ましろのおと』、川村拓『事情を知らない転校生がグイグイくる。』、麻生みこと『アレンとドラン』

随分とマンガに触れていなかったので、リテラシーを失ってしまっており、漫画の読み方を忘れてしまっていたのだが、数十ページのアイドリングを経て、とめどなくズイズイと耽溺読了。

ホテルという四角い箱にこもり、窓も開けずにスマホを操っていると時間の感覚がなくなる。
熱中という言葉よりも、忘我と言ったほうが相応しい。
『阿・吽』の続刊をカートに入れ、外に出る。

新世界国際劇場で看板掛け替えを眺める

その詳細は、以下で。

nishinari-lives.com

 

なんだか、国際劇場の支配人が僕を影響力のあるブロガーだと勘違いしているようで、説明に難儀する。
「ものすごい尖ったブログなんでしょ?猫とか出してお茶を濁すようなかったるいブログな訳ないよねー」と圧が凄い。
ほぼ、働いた/働かなかった を書いているだけの生存確認ブログなんですが、申し訳ないです。

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緊急事態宣言の延長が大阪でも決まり、映画館への休業要請も続く。

「ウチは営業続けるよ。他はやんないだろうねぇ。やれるもんなら、やって欲しいよ」

二番館として、全国ロードショーを終えた映画を三本立て興行する国際劇場であるから、大作アクション映画の公開延期は少なからず影響を与えている。

「007もトップガンも公開延期だからね。つまんないですよ」

 

映画絵アーティストの八条さんにもお目通りが叶い、支配人と看板掛け替え作業を眺めながら、ツレ煙草で語り合うようになるとは。まったく影響力ゼロの弱小ブロガーのくせに。
身の程を知れ。

大手新聞の記者さんは、コロナ弄りの惹句を期待していたようだが、そこに注力している訳でもないので、新聞ネタにするには一捻り要りそうだ。

お客さんはいつものように女装の皆さんや近隣のオッチャンたちがチャリ漕いでやってくる。

「『ニューシネマパラダイス』みたいに、最後はこの劇場も爆破して終わりたいねぇ」

いつかそんな日もやってくるのかも知れない。
しかし、今日も新世界国際劇場は、粛々と映画を上映し続けていた。

 

漫画を繰る手が収まらず、宿に戻っても読み続ける。

漫画と映画館詣で暮れる一日。
休憩ばかりで前に進まない愚図。

 

使った金額

コインランドリー(洗濯):200円
紅茶花伝ロイヤルミルクティー:130円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

4,334円

西成で暮らす。68日目 「ウーバーイーツの新システム」

2021年5月10日。

結局、ぐっすりというわけにはいかなかった。

「ぐっすり」の語源は、「good sleep」だと思っていたが、そうではないようだ。
日本語「名前」が英語の「name」から来ているとか、日本語の由来が英語であるというモキュメンタリックなタッチで書かれた清水義範の小説があった。着想が面白かったことだけを覚えている。
好きな小説の傾向や、好きな作家は年を経るにつれて変わっていく。
僕はと言えば、30代を過ぎた頃からフィクションをほとんど読まなくなった。
映画なら、思い切っり振り切った絵空事を観たいと思うのだが、字面や行間からフィクションの絵空事っぷりを読み手が補強しなければならない小説というジャンルでのフィクションをバカバカしいと感ずるようになった。
ノンフィクションが、フィクションよりもフィクショナルであることもあるのに、馬鹿げた線引きだとは思うが。

そして、最近は若い頃には見向きもしなかったハードボイルド小説などを少し囓っている。
なぜって、ハードボイルドの主人公は無駄に前向きで、常に状況を改善する努力に励み、諦めるべき時は即断し、こだわるポイントに自覚的だから。
自分の現状と重ね合わせて、「なりたい自分」をフィクションに求めているのだろう。
ハードボイルドな探偵さんに憧れる46歳というのは、なんとも滑稽だが、それが僕のノンフィクションである。

 

ぐっすり出来ずに目を覚まし、漫画喫茶ブース内のパソコンを開き、メールの返信など。

漫画喫茶「快活CLUB」のトップ画面には、利用者に向けたお得な情報が満載。

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なんとなくバカにされているような気がするのは被害妄想だろうか。

「婚活」ね。
結婚したいもんね。

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クリックすると、

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「出会いがない」のが20代、30代が婚期で、孤独な40代、over45になるとパートナー不在が課題らしい。決めつけも甚だしい、が次に進む。

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入会したくてたまらなかったのだが、定職も定収入もないので終了。
ネットカフェから出来る出会いは僕にはなかった。
結婚したいもんね。したくないもんね。

西成暮らしの週末を「快活CLUB」で過ごし続けたことによって、ポイントが貯まっていたので、今回の支払いは全額ポイントで補填できた。

ウーバーイーツの新料金システム

今日から、ウーバー配達パートナーに向けて新料金体系への同意が求められた。

アプリに同意事項が送付され、了承しないと配達業務に入れない。
大きな改善点は、

・これまで表示されなかったピックアップ地点(レストラン)とドロップ地点(お客さんの住所)が配達前に表示される
・「見積もり金額」という名目で、報酬が事前にわかる

この二点は、配達員にとってはありがたい改訂。
昨日も気が付けば、吹田市の新興住宅地まで飛ばされていた。
どこなんだ、この牧歌的な土地は!
配達先が事前にわかることで、自分の稼働したいエリアで仕事が続けられる。

しかし、これまで固定の「(お客さんへの)受け渡し料金」「(レストランからの)受け取り料金」に、配達ごとの「(配達にかかった)距離」で報酬が決まっていたところ、今回の改訂により「配達調整金」というウーバー側しか分からないブラックボックス状態の金額の多寡によって報酬が決まるようになった。

どっちにしろ、僕たち配達員はウーバーの作ったシステムの奴隷。
配り続けるしかないのだ。
か、すっぱり辞めるか。
ぐっすり眠るか。
定職を見つけて、結婚相手を探すか。

 

先行して新料金体系が導入されていた、福岡・京都の両地域配達員のtwitterやブログでの報告によると、
「短い距離はすべて300円!=スリーコインズ!」
「だいたい、報酬は三割減!」
らしい。

 

結婚したいはやる気持ちをなだめながら、早速配達を開始。

本当にスリーコインズであった。

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僕のフェイバリットムービーである『サボテン・ブラザース』の原題は、『three amigos』である。『サボテン・ブラザース』は『七人の侍』のパロディでもあり、“虐げられた民衆のために、自らを任じて動く人”の物語。
ウーバーイーツの、スリー・コインズ・ストーリーは、“富裕層が空腹を満たすため、そして運営会社が手前勝手なシステムで、配達員を虐げる”物語であるのだが。

www.thecinema.jp

 

この日は、9時〜15時半まで稼働し、¥4,253也。

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体感としても確かに「三割減」と実感。

ダブルの案件(ひとつのレストランから、ふたつの配達先の料理を一度に受け取る)でも400円にしかならなかったり、同じ距離の配達でも報酬が異なったり、ウーバーの設定した「配達調整金」が乱高下し、(主に乱下だが)
「どんな基準で配達報酬が決められているのか、さっぱり分からない」
もう、ぐっすり眠りたかった。

まあ、三割減なら、三割減の働き方をすれば良い。
何より、自分の任意の地域で配達を続けられるので、その後の予定は組みやすくなる。
こうやって、前向きに考えるのがハードボイルド小説の主人公である。
そして最終的には悪玉を拳銃でブチ抜けばいい。
フィクションは素晴らしいなぁ。

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自転車を手放すか

以前の転倒からこっち調子の悪い自転車。

前輪の歪みはいかんともし難いが、チェーンの異音が激しいので、老舗っぽい自転車屋に相談。

「これは、ベアリングの交換が必要だねぇ。結構かかるよ」

と6000円を提示される。

「なるほど!ベアリングですか!やっぱりそうか!ベアリングか!」

と応じたが、ベアリングについての知識が皆無。
あの頃、『バンゲリングベイ』もクリア出来なかったのに。

 

「そんなに保たないよ」とは忠告されたが、とりあえず2500円でチェーン交換をしてもらう。

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4000円を引き出し、扇町公園で日ごとに鮮烈さを増しつつある太陽を浴びながらボーッとする。

稼ぐのは大変。生きていくのも大変。
生きていく価値のある毎日を見つけるのも大変である。

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「パークイン」に投宿。

風呂に入らねば、と思いながら荷物を解くのも面倒で、そのまま横になったら、いつの間にか眠っていた。ぐっすりと。

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収入

4253円

 

使った金額

貯金:253円
宿泊代:6400円
駐輪場代:150円
自転車店(チェーン交換代):2500円
歯ブラシ:194円
ふっくらバーガーてりやき:125円
菓子パン・ブレビアン:117円
バナナカステラ:106円
かるえだまめ・枝豆味:158円(二個分)
アカギ・オツカレモンヨーグルト:151円
チェリオ。レインボーウォーター:100円
メロンオ・レ:117円
カルピス・濃いめのカルピス:84円
伊右衛門・濃い味:160円
コカコーラ・アクエリアス1日分のマルチビタミン:160円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール1mm:400円

 

所持金

5,064円

【インタビュー】映画絵アーティスト・八条祥治さん(八條工房)〜 新世界国際劇場の映画看板を描く人

大阪市西成区岸里に「あの手描き看板」を産み出し続ける工房はある。いまや絶滅危惧種といってもよいであろう、
映画館の手描き看板

新世界国際劇場にて毎週、新作が披露されている、その創作現場におじゃましてきました。

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八條工房

www.hachijyo-kobo.com

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突然の来訪にも関わらず、奥様が快く工房内へ。

工房の二階、過去の作品が揃い踏みする空間で、八条さんが描いたジャン・レノやスタローンに囲まれながら、お話を伺うことができました。

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ー 国際劇場でかかる映画はアクションものが多いですけど、描きやすい顔ってありますか?

「やっぱりな、大人しーいシャシンより動きのあるような表情の方が絵になるわな。アクション映画の主人公の顔に傷があるような外国映画。彫りが深いし、描きやすいね」

ニコラス・ケイジとか多いんじゃないですか?

「ああ、ニコラス・ケイジは多い、多い」

ー 本当は、あの辺の昔の映画の方が好きですか?

「そら、昔の映画の方が。なあ」

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投影器から、プロジェクターへ

現在は、プロジェクターを用いてキャンバスに原稿を写し出して描いているそうだが、昔使っていたという投影器も置かれていた。

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八条さんのお父さんの時代に活躍したそうだ。

 

「上のガラスにB5くらいの原稿をペタッと置いてな。機械の位置とレンズを動かして調整して。でも、もう古いから電気の玉がないねん。しかも、暗室にせないかん。真っ暗に。プロジェクターなら、(明るくても)ある程度映るけど、これは暗室にせな使われへん」

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親父さんから受け継いだ仕事

「親父が黒門市場にあった映画館で看板描いてたからね、ちっちゃい頃から通ってた。昔はロードショー館に手描き看板いっぱいあったからね。梅田にも道頓堀にもな」

ー お父さんの仕事ぶりを見て、祥治さんも描きたいと思われたんですか?

「そらもう、やりたいやなしに、父親が独立して。継がな、食うて行かれへん家族。最初はこの場所やなしに、家の裏のガレージで描いとったんよ。あの頃は、その投影器使っとったかなぁ。今、僕が64歳。親父が独立してから手伝っとったから、この仕事始めてもう40年過ぎたかな」

ー お父さんと絵のタッチは一緒ですか?

「こんなん…全然ちゃうな(笑)」

ー 祥治さんの方が上手い?

「ちゃうちゃう、逆や(笑)。なかなかやっぱり親父は達者やと思うな、息子が言うのもなんやけど上手いな、と思うよ。尊敬してます、そこに関しては(笑)」

 

一階にあった『ジャッキー・ブラウン』はお父さんの描かれたもの。

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ー 後継者とかいるんですか?

「いてません。(希望者は)いてますねんで。若い女の人でもな“好きです。こんなんしたいです”言うてな、でもお断りしてんねんけどな。そんなん自分食べるだけでも大変やのに(笑)。(弟子は)考えてません」

ー 八条さんの代で終わりですか

「そうですねん」

ー お子さんは?

「子どもも、絵描いたり、字書いたりするんは好きですよ、ちょっと描かせると、オッと思うようなの描きますね。でも、昔はスケッチブック買い与えたりしたけど、全然描けへんな(笑)」

ー この仕事は飽きることはないですか?

「そんなん言うてられへん、食べていかないかん(笑)。生業です。そやけどな、最初原稿見て、コレは…って苦労する時もカッコついてきたらホッとするし、楽しく感じる時もありますよ。(国際劇場の看板については)1週間に1回描くのはホンマ大変。スケジュール的には厳しい、厳しい」

ー でも国際劇場の看板が八条さんの名刺代わりになってるとこありますもんね

「そうですねん。大変な分ね、いろいろテレビとか新聞に出してもうてね。親からずっとやってるから、生業やから、頑張ってやってますねん」

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手描きの宿命「誰やコレ!」を超越する味わい

ー ちょっと失礼な質問ですけど、「似てないことを笑われる」みたいなことあるじゃないですか?

「そう、昔は特にあったわな。その辺なぁ。これ原稿がな、全然似てない顔ってあるやん? スチール一枚切り取ると全然本人らしないのってあるんですよ。“あれ、コレ主役誰や!”いうのあるんですよ。そういう時、一番ツラいな。一生懸命描いてても、やっぱり言われるもんな“これ誰や”ってな。でも、そういう拾われ方いうんは、この業界昔からあったんちゃうかな。そら、こんだけ人おったら色んなこと言う人おる。しょうがない。自分は一生懸命描かせてもろてる、それだけの話」

 

あの映画を八条さんに描いて欲しい!

映画看板だけでなく、描く仕事をさまざまにされている八条さん。

個人の熱狂的に好きな映画を自主上映する際に、看板を頼まれることもある。

一例として、工藤栄一監督『野獣刑事』の看板を請け負った時の話を聞かせてくれた。
検索すると、twitterで画像発見。

 

自身が常連だったお店への愛情を、八条さんの手描き絵の魅力で表現するお客さんもいるそうだ。

「通い詰めた中華料理店の大将が辞めはると。川谷拓三に似てたんやて。そんで大将を入れて、惹句も入れてもうてな。すごい熱心な人でな、ご自分で映画みたいに配役とか考えてはってな。ポスターみたく描かせてもろたんよ。長いこと待ってもろたけど、喜んでくれてたらええねんけどな」

 

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手描き看板の持つ味わいは、写真のリアリズムでは表現できない対象への愛着を感じさせてくれる。

「味わい」という言葉は少し安っぽいかも知れない。
八条さんの筆というフィルターを通すことで、映画への想像力は膨らみ、時には個人の想いを増幅させた作品が描き上がる。

こんなにリアルで精緻な画像が満ちあふれた世界だからこそ、手描かれることで産まれる「揺れ」を楽しみたい。

そんな八条さんの新作が毎週拝め、翌週には儚く消えていく「新世界国際劇場」は(色々あるけど)映画を何倍も楽しめる場所。(色々あるかも知れんけど)

八条さんの絵たち

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相変わらず何も考えていないので、アポなしで突然お訪ねしたのに、貴重な機会をくださった八条さん、奥さま(冷たいお茶、ごちそうさまでした!)ありがとうございました。

八条さんは、ときに豪快に笑い、ずっとフランクに接してくださいました。とくに、国際劇場前では名刺も渡していない(名刺持ってない!)のに、名前を覚えていてくださったことに驚き、感動しました。
もう、すぐに感動してむせび泣くオッサンなので。

今回はちゃんとテレコ回して、文字起こししてから書きました(当たり前)。
次は、実際の作業の様子も見せてくださるかも。

 

最後に八条さんに「生涯ベストの映画」を聞いたら、

「コレからやな!」

と答えてくれました。
まだまだ、手描き看板に誇りをもって取り組まれていく八条さんのコレからを楽しませてもらいます!

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nishinari-lives.com

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西成で暮らす。67日目 「カレーはいつだってご馳走」

2021年5月9日。

もう、朝メシのことしか考えられなくて午前7時。
早朝の「どろぼう市」のレポートでもしようかと目論んでいたのだが、もうとにかく吉野家に行くことだけを目指した午前7時15分。
顔洗って、歯磨いて、バックパックに荷物詰め込んで、午前7時半。
またね、「ビジネスホテル スバル」と別れを告げた午前7時45分。

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お安く食べられました

自転車で天満に向かう。
途中の「吉野家」食欲を掻き立てる橙色の看板に突入。
朝定とかバランスを考慮した食事をするべきなのだが、メニュー画像のカレーの破壊力に負ける午前8時半。
肉だく牛カレー(大盛)

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もっと、バカ盛りを食いたかったが、向こうさんが大盛りという名称でこのクオンティティを提供してくれているのだから納得して食う。
何かを断って、その後それを摂取することで産まれる快感で人は生き延びているのだと思える味わい。
迂遠な表現をしたが、結局美味かった。
「具材が全て溶け込んだカレーソース」
には実は何も入っていないのではないか?という疑念と共に食すのが常だったが、カレーのスパイス臭だけでもう完敗。乾杯。

西成暮らしをしてから、明らかに野菜不足。
何だか唇は荒れるし、吹き出物も出る。
今日は、玉ねぎ食ったから大丈夫。この先2ヶ月は大丈夫。

肉だく牛カレー(大盛)の会計額は、712円。
ノーファイトさんから頂戴した株主優待券を1枚切ったので、412円で久しぶりのおマンマを終える。
ありがとうございました。
今度は株券待っています。嘘です。見守っていただけるだけで大丈夫です。

今日の宿代を稼ぐ

今日は、何としても本日の漫画喫茶宿泊代と夜メシ+タバコ賃は稼がねばならない。
小銭を朝メシで使い、いよいよ空っぽに近づいた財布を眺めながら嘆息。
ランクルームからウーバーイーツバッグを取り出し、至近の公園で準備。

ランクルームの入っている雑居ビルは一階が佐川急便の拠点となっているのだが、いっつも大荷物であらわれ、ウーバーバッグを背負って出かけていく初老の太った男はどう見られているだろうか。
どう見られても構わない。
くらいの図々しさは身についた。
こうやって、どうでも良くなって、年を取ると頑固に意固地になっていくのだろう。

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異国のウーバーイーツァー

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10時ごろから配達を開始し、流されるままに昼過ぎには浪速区あたりへ。
ここで、いつも靭公園前マクドで出会うカナダ人の配達員とすれ違い少し話す。

「へー、アメリカでもウーバー配達やってたんですか!」

「そうよ。向こうでも何千回も配ったよ」

「なんか日本とアメリカの違いって感じますか?」

「そうねー。日本人は喋ってくれない。向こうだと、ウーバーイーツは客商売って思うけど、日本ではただの届ける人ですね。チップも少ないしね(笑)」

 

夜には、パーティー会場みたいなホテルの一室まで配達するという非リア充が爆発死しそうなシーンに遭遇し、いたたまれなかった。が、

受け取りのお兄さんが、

「ご苦労様ー!なんか、つまんでいきなよー」

と言って、パーティー会場にあったケーキと唐揚げを渡してくれたので、そのままホテルの一室に15分ほど逗留。
そこで流されていた音楽がとても心地よかったので、アーティスト名を聞き、すぐにSpotifyでフォローした。

「もう帰っちゃうのー」

との声を背中に浴びながら退出。
汗臭で、加齢臭まみれのオッサンが居ていい場所ではない。
着飾った男女がグラス片手に微笑み合う空間は、いまの僕にはあまりに眩しすぎた。
謎のキラキラしたカクテルも少し飲んだので、その後1時間ほど飲酒運転したことになる。
ノンアルだったかも知れない。きっとノンアルだったはずだ。

初めて知った claud というシンガーの曲を聴きながら、23時まで稼働。
¥14,046也。

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コンビニATMで14000円を引き出す。

一日ほとんど水分を摂取せず、喉が渇いて、口の端がニチャニチャし、きっと口臭も酷かったと思う。目も当てられない、というか鼻ももげられない。

それぞれの寝床

壊れかけの自転車のチェーンからの異音が激しくなってきていたので、トランクルームから取り出した洗浄フォームや潤滑スピレーで、掃除と注油。
いよいよ自転車は限界か。

 

0時を回って、「快活CLUB」にイン。

思えば、漫画喫茶に来てやることと言えば、
ソフトクリームを食う
か、
充電をする
か、
コーンポタージュスープを飲む
くらいしかしていない。

こんなにたくさん漫画というブツがあるのに。

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映画『セブン』で、真夜中の図書館でポーカーに興じる警備員たちに向かって。モーガン・フリーマンが、
「君たちはこんなに“知”に囲まれた空間で何をしてるんだい」
と笑うシーンがあるのだが、いつもこの時間に訪れると、漫画を選んでいる人は少ない。
僕のように、今日の寝床を求めて眠る人ばかり。

前回、「いびきがうるさい」との苦情がきてしまったので、おいそれと眠れず3時ごろまでウダウダと過ごす。

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隣のブースから少しうるさめのいびき音が漏れてきたので、俺だけじゃない!との連帯感で、ようやく眠る。すぐに、いびきの二重奏が奏でられていただろう。

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収入

14046円

 

使った金額

貯金:46円
肉だく牛カレー(大盛):412円
牛肉コロッケ:65円
アボガド玉子サラダ入りコロッケ:160円(二個分)
昭和の味ミックスジュースグミ:117円
ライフガードプラスソフトキャンディ:212円(二個分)
アルフォート:73円
アカギ・ミルクセーキアイス:106円
グリコ・パピコホワイト:95円
カルピスウォーターボトルアイス:106円
チェリオ・ミルク紅茶:100円
ダイドー・mio+Sportsブルーオアシス:140円
ジャスミン茶:151円
レジ袋:2円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二個分)

 

所持金

11,986円

新世界国際劇場「手描き看板の掛け替え作業」を見学する。

新世界、通天閣のふもとに名物の手描き看板を掲げ、通常ならば毎日オールナイト興行を打ち続ける地元に根ざした3本立て上映の歴史ある映画館
新世界国際劇場

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3本立てのラインナップが入れ替わる毎週水曜日に向けて、火曜日の17時あたりに手描き看板の掛け替え作業が行われる。

先週支配人の富岡さんより、「火曜日に見にきたらいいですよ」と聞かされていたので参拝に。

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16時半ごろに劇場前を見に来ると、脚立や既に外された看板が置かれていた。
劇場のスタッフの方にご挨拶。

「今日、看板変えるんですよね。見学させてもらいます」

と告げると、ニヤリと笑い

「5時くらいやな、もう少し」

とのこと。

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「イキりバカ、発狂!!」
は今日まで。
『ガンズ・アキンボ』の主人公であるダニエル・ラドクリフが発狂したイキりバカであったのかどうかは疑問の残るところだが、惹句とはそういうハッタリの産物。
見世物小屋としての映画館。
鑑賞して「騙されたー!」となるのも、また映画の楽しみ方。
その楽しみを届け続けているのが新世界国際劇場。

 

ポスターに並べられた惹句は看板には反映されないが、これも国際劇場テイスト全開。

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掛け替え作業は迅速に

17時を回り、支配人の富岡さんが劇場前に現れ、改めてご挨拶。

同時に大手新聞の記者もやって来て取材を開始。
一瞬、支配人が僕とその記者を取り違えていたが、「私はしがない日雇い労働者です」。

やがて、屋根に出来上がった看板を積んだ車とともに、映画絵アーティスト・八条祥治さんがやって来た。

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真新しい手書き絵が手慣れた様子で掛け替えられていく。

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まずは、国際地下劇場の艶っぽいお姐さんが定位置にハメられる。
映画内でもハメられてるはずだ。

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八条さんによると、地下劇場の絵で気を付けていることは?

「キレイに描くこと。ポスターから選んで丁寧に描いてますよ」

 

続けて、次回上映の3本の看板が掛け替えられる。

「3本の中から、芯になる作品を富岡さんが選んで、それを真ん中に置いてね。今回は『ネバー・ダイ』」

キャンバスに画像を投射して描いているそうだ。

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枠内に看板をはめ、スライドさせ掛け替えていく。

ー 惹句の原稿はいつ貰えるんですか?

「今日。この後、もらって来週までに描いてくるの」

八条さんが、芯になる作品や惹句に口を出すことは、ほとんどないとのこと。

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「外道は、地獄よ♡」
『ネバー・ダイ』

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女の子カッコいいすねー。
ポスターより美女になってるかも。

 

今週の煽り文句はコチラ。

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「トリプル、レッドカード劇場、今週は絶望地獄闘争作集!!」

よくよく吟味すっと、何言ってるかよくわからないが、雰囲気である。
惹句は雰囲気。
伝わるものがあればいい。

ショーケース内のポスター、コピーも貼り替えられた。

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その時間わずか15分ほど、毎週繰り返されている作業は無駄なくあっという間に終わった。

八条さんに、一度工房を訪れたい旨伝え、名刺もいただく。
是非とも、お訪ねしたい。

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アナーキーイン新世界

八条さんは、あっという間にお帰りに。

大手新聞の記者さんに、「手描き看板の魅力は?」みたいなことを聞かれたので「手描きなところが魅力なんじゃないですかねー」と100点の回答をしておいた。
記事になってもきっと使われないだろう。

その後少し支配人の富岡さんと歓談。

富岡さんはとにかく「ド派手」なやら、「スカッと」やら景気の良い発言が多い方。
「インテリめいたスカしたのは大嫌い!」という国際劇場ポリシーが沁み渡ったやり取りに終始する。

客層的にもニーズがありそうな、過去の名作アクション映画の特集上映、例えばスティーブ・マックイーンで『大脱走』『パピヨン』『ブリット』3本立!とか観たいです!と言った話を、手前勝手にさせてもらう。

映写室見学のことも覚えていてもらったので、今度実現したい。
惹句も考えてみよう。採用して欲しい。
「発狂」「殺戮」「驚天」「地獄」みたいな国際劇場のマジックワード以外の表現が求められているかも知れん。難しい。

ちなみに、国際劇場は初期RC造りの由緒ある建築。
阿川佐和子のおじいさんの手によるものだと言う。
阿川弘之の父ではなく、母方のほうらしい。

www.tsuda-archistudio.co.jp

binmin.tea-nifty.com

 

今回は忘れずに富岡さんの写真も撮影。

大手新聞の記者さんはちゃんとデジイチ使ってたなぁ、申し訳ないっす、とスマホで。
案の定、全くノッていない支配人の表情である。
申し訳ないっす。

新世界国際劇場シリーズは、また続きやります。

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西成で暮らす。66日目 「悪夢」

2021年5月8日。

書き物を続け、午前2時ごろに眠ったのだが、1時間後には起きてしまう。

これは、仕事探しに行くために起床したのではなく夢が怖すぎて目が覚めたのだ。
夢を見る/夢を覚えていることなど、ほとんどないのだが、僕はどうやらうなされていることも多いらしく寝言もひどいらしい。
いびきもかけば、寝言も言うし、うなされて呻いているのだから、漫画喫茶で苦情が来るのも最も。

「のももっとも」ってもしかしたら回文かと思ったんですが、違いますね。「もとっももの」。回文作るのが上手い人の頭ってどうなってるんだろうなぁ。羨ましいなぁ。そんなに羨ましくもないなぁ。

 

自発的に叩き起きてしまうほどの夢の中で、僕は自転車で車とクラッシュし、奇跡的にかすり傷ひとつ無かったのだが、「良かったー」と笑うと、その途端歯がボロボロと欠けていき、口から血が溢れ、突然隣に現れた三國連太郎に「俺は芝居のために総入れ歯にしたんだ!」と怒鳴られ、膝を逆関節に殴られていた。怖かった。
夢の中で僕は一度目を覚ましたのに、自分の歯は一本もなかった。
これは夢じゃなかったんだー。
と愕然とした時に、本当に目を覚ました。
怖かった。

 

やはり西成で歯がボロボロのオッチャンたちに会っている事がオブセッションとなっているのだろうか。
手洗い場に行き、歯を磨き、もう一度寝直した。

再びあの凶悪な三國連太郎に会いたいような気もしたが、今度は何をされるのか想像すると、もう会いたくはなかった。

100本ノック経過

昼までパソコンに向かい、街に出る。

今日はこれまで泊まったことのある安宿の方に話を聞こうと数軒交渉をする。
泊まり客ではないと分かるとあからさまに怪訝な表情を向けられ、けんもほろろに断られ続ける。

けんもほろろ」は逆から読むと、「ろろほもんけ」で妖怪っぽくなります。

やはり、順番が違う。
「お話を伺いたい」
みたいな姿勢で突撃しても心は開いてもらえない。
何度も会話し、顔を認識された末に、取材といったしゃちほこばった形ではなく、自然にインタビューせねば成功しない。
何と言う無力な、俺。

「しゃちほこばった」は喋り言葉では「しゃっちょこばった」になりがちですね。

 

「街角で声をかけるタイプのナンパ」
をやったことは生涯で一度しかないのですが、彼らの“くじけない力”に心底憧れます。
東京にいる頃、友人と「ナンパもしたことがないのは、生き方として間違っている」と何故か盛り上がり、渋谷に出かけ「スミマセ〜ン!」と声をかけ続け、最終的に画期的に盛り下がった記憶が蘇る。
そして、ナンパ師だって「くじけていない」のではないと思うのです。
それでも、「でも、やるんだよ」の精神が必要です。
「だって、やりたいんだよ」とパラフレーズしてもいいだろう。
また、お願いします。
バットは振り続けなきゃ、ボールには当たらない。

 

旧あいりんセンター付近ではケンカがおっぱじまっており、制服警官が大量に動員されていた。
「アイツ、いっつも口だけやねん!」
周囲のオッチャンたちも加勢し、ワンダラーな惨状。

 

高架下では、
ハルシオンあるよ!」
と声をかけられたので、
「いくらですか?」
と聞くと、1500円だという。
安いんだか高いんだかわからない。
「また、今度買います」
と告げて、その場を去ろうとして踵を返す。

「何で、僕に声かけました?」
それを聞いてみたかった。

「ううん?なんかニイちゃん元気なさそうに見えたんや!」
とのこと。
「買うかどうかわからん人に声かけるのって、大変じゃないです?」
と聞くと、
「でも、聞かんと。売れんじゃろ?」
と返された。

そうだ、やり続けないと結果は出ない。
ありがとうございました。

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書き仕事終了。働かねば

今日は新しいタバコも諦め、金を使わずに宿に戻った。

今日まで。
今日までにブログを書き進めなければ。
そして働かなければ。
すでに所持金はワンコイン+αしかない。

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ノーファイトさんから頂いた吉野家株主優待券がまだ¥300残っている。

一回濡らしちゃって変色しているけど、使えますよね。
明日は、朝イチで吉野家行こう。

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使った金額

なし

 

所持金
524円