新世界、通天閣のふもとに名物の手描き看板を掲げ、通常ならば毎日オールナイト興行を打ち続ける地元に根ざした3本立て上映の歴史ある映画館
「新世界国際劇場」
3本立てのラインナップが入れ替わる毎週水曜日に向けて、火曜日の17時あたりに手描き看板の掛け替え作業が行われる。
先週支配人の富岡さんより、「火曜日に見にきたらいいですよ」と聞かされていたので参拝に。
16時半ごろに劇場前を見に来ると、脚立や既に外された看板が置かれていた。
劇場のスタッフの方にご挨拶。
「今日、看板変えるんですよね。見学させてもらいます」
と告げると、ニヤリと笑い
「5時くらいやな、もう少し」
とのこと。
「イキりバカ、発狂!!」
は今日まで。
『ガンズ・アキンボ』の主人公であるダニエル・ラドクリフが発狂したイキりバカであったのかどうかは疑問の残るところだが、惹句とはそういうハッタリの産物。
見世物小屋としての映画館。
鑑賞して「騙されたー!」となるのも、また映画の楽しみ方。
その楽しみを届け続けているのが新世界国際劇場。
ポスターに並べられた惹句は看板には反映されないが、これも国際劇場テイスト全開。
掛け替え作業は迅速に
17時を回り、支配人の富岡さんが劇場前に現れ、改めてご挨拶。
同時に大手新聞の記者もやって来て取材を開始。
一瞬、支配人が僕とその記者を取り違えていたが、「私はしがない日雇い労働者です」。
やがて、屋根に出来上がった看板を積んだ車とともに、映画絵アーティスト・八条祥治さんがやって来た。
真新しい手書き絵が手慣れた様子で掛け替えられていく。
まずは、国際地下劇場の艶っぽいお姐さんが定位置にハメられる。
映画内でもハメられてるはずだ。
八条さんによると、地下劇場の絵で気を付けていることは?
「キレイに描くこと。ポスターから選んで丁寧に描いてますよ」
続けて、次回上映の3本の看板が掛け替えられる。
「3本の中から、芯になる作品を富岡さんが選んで、それを真ん中に置いてね。今回は『ネバー・ダイ』」
キャンバスに画像を投射して描いているそうだ。
枠内に看板をはめ、スライドさせ掛け替えていく。
ー 惹句の原稿はいつ貰えるんですか?
「今日。この後、もらって来週までに描いてくるの」
八条さんが、芯になる作品や惹句に口を出すことは、ほとんどないとのこと。
「外道は、地獄よ♡」
『ネバー・ダイ』
女の子カッコいいすねー。
ポスターより美女になってるかも。
今週の煽り文句はコチラ。
「トリプル、レッドカード劇場、今週は絶望地獄闘争作集!!」
よくよく吟味すっと、何言ってるかよくわからないが、雰囲気である。
惹句は雰囲気。
伝わるものがあればいい。
ショーケース内のポスター、コピーも貼り替えられた。
その時間わずか15分ほど、毎週繰り返されている作業は無駄なくあっという間に終わった。
八条さんに、一度工房を訪れたい旨伝え、名刺もいただく。
是非とも、お訪ねしたい。
アナーキーイン新世界
八条さんは、あっという間にお帰りに。
大手新聞の記者さんに、「手描き看板の魅力は?」みたいなことを聞かれたので「手描きなところが魅力なんじゃないですかねー」と100点の回答をしておいた。
記事になってもきっと使われないだろう。
その後少し支配人の富岡さんと歓談。
富岡さんはとにかく「ド派手」なやら、「スカッと」やら景気の良い発言が多い方。
「インテリめいたスカしたのは大嫌い!」という国際劇場ポリシーが沁み渡ったやり取りに終始する。
客層的にもニーズがありそうな、過去の名作アクション映画の特集上映、例えばスティーブ・マックイーンで『大脱走』『パピヨン』『ブリット』3本立!とか観たいです!と言った話を、手前勝手にさせてもらう。
映写室見学のことも覚えていてもらったので、今度実現したい。
惹句も考えてみよう。採用して欲しい。
「発狂」「殺戮」「驚天」「地獄」みたいな国際劇場のマジックワード以外の表現が求められているかも知れん。難しい。
ちなみに、国際劇場は初期RC造りの由緒ある建築。
阿川佐和子のおじいさんの手によるものだと言う。
阿川弘之の父ではなく、母方のほうらしい。
今回は忘れずに富岡さんの写真も撮影。
大手新聞の記者さんはちゃんとデジイチ使ってたなぁ、申し訳ないっす、とスマホで。
案の定、全くノッていない支配人の表情である。
申し訳ないっす。
新世界国際劇場シリーズは、また続きやります。