暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

【インタビュー】「新世界国際劇場」支配人・冨岡和彦さん

新世界、通天閣のふもとに名物の手描き看板を掲げ、通常ならば毎日オールナイト興行を打ち続ける地元に根ざした3本立て上映の歴史ある映画館
新世界国際劇場

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緊急事態宣言により、オールナイト上映は中止しているが、夜半までの上映は決行中。
前回の訪問は、去年だった。
女装子の跋扈に恐怖した夜であった。

nishinari-lives.com

 

大阪の多くの映画館が休業中の現在、二番館として絶妙な番組編成で我々に映画を届けてくれている。
西成安宿から徒歩で行ける楽天地。

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2021年5月5日。

特になんのアポイントメントも取っていなかったのだが、『ガンズ・アキンボ』を鑑賞した後、売店のお兄さんに話しかけたらば、奥の事務所に招き入れてくれ、30分近くコチラの手前勝手な質問に支配人の冨岡和彦さんが気さくに答えてくださった。多謝感謝。

以下は、国際劇場の常連「この映画は国際でかかるかどうか?」を基準に映画鑑賞スケジュールを決定するOnakin@Walkerさんと共にお話を伺った覚え書きである。
(飛び込みで話を聞けると思っていなかったのでテレコを持っていっていなかったのである。自慢げに書くことでは決してないのである)

さらに特に名刺交換した訳でもないので(そも名刺持ってないし)、支配人さんの名前も検索して記入しているのである。不用意。

以下、メモを基にしたお話の全容です。

現在のコロナでの影響、経営状況

「休業要請は1000平米という基準があるし、ウチは営業短縮で対応してます。だけど、考えてるのはゲリラオールナイト!突然張り紙して、今夜決行!って(笑) やってやろうかな、てね。経営的にはギリギリですよ。コロナに関係なくね」

ゲリラオールナイト!そんな戦い方を考えてるのか!是非その時はぶっ放して欲しい。

入場料について

「これは上げたくないんですよ。消費税が10%になったけれど、今まで1000円で入っていたお客さんに対して1100円には出来ない。まったく印象が変わってしまう」

番組編成について

ー3本の組み合わせが絶妙だと思うんですけど、これはどうやって決めているんですか?

「これは色々兼ね合いがあって、言えないことも多い。番組自体は昔から決めている人がいて任せてます。やっぱり土地柄お客さんはアクション映画を求めてるからド派手なのを入れてます」

次々回のラインナップに『パブリック 図書館の奇跡』が入っているのが意外だったのだが、これも「ホームレス」「経済格差」など土地柄に即した社会問題を扱っている。そうしたシャシンも含めた3本の組み合わせはベテランの担当者の方の手によるらしい。

事務所内には、まだ発表されていない今後のラインナップが掲示されており、まだ公開前のアノ人のアレな映画も入っていた。
これは国際劇場で観るべきだ!と心に決める。

手描き看板について

ー手描き看板はこれからも続けられますか?

「正直、金もかかるし大変ではあるけれど、シネコンには絶対にないもの。映画館に合った看板という意味で、手描き看板はシネコンには合わない。ここにしかないもの。ここで見られるもの。結論から言うと、ずっと続けますよ」

「看板の設置は番組が切り替わる水曜日に向けて、火曜日の17時から18時くらいにやってる。取材したかったら、その時来てみてください」

惹句、看板のコピーについて

「あれはねぇ、僕が考えているんじゃないんです。天から降りてくるの(笑)けっこうギリギリになったりしてね」

「けっこう昔の邦画のコピーとか参考になりますよ」

今後公開予定の映画について「あれ、どんな映画なの」と聞かれたりして、「あなたたちも考えてくれたら聞きますよ。新しい風もね」と仰っていた。

いつか、あの手書き看板に連なる戦慄の惹句を提供できたら幸せだ。

映画惹句師として知られる関根忠郎氏のコピーなども参考にされているのかも知れない。
まあ、あくまで「天から降ってくる」のだけど。

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ハッテン場として機能していることについて

ーちょっと聞きにくいことなんですが、ハッテン場として使われていることについてはどう思ってますか?

「その土地、その場所にある映画館として特色があるのはいいじゃないですか。他のお客さんに迷惑をかけたりしなければ問題ない。『ニュー・シネマ・パラダイス』って観ました?あの映画は、映写技師と少年の触れ合いの映画だけれど、私の目から見れば自由に映画を楽しむお客さんの映画。あの映画に出てくる客は感情をむき出しにして映画を観ているでしょ。思い思いに楽しんでる。私はあの映画をそういう風に観るんですよ」

確かに『ニュー・シネマ・パラダイス』も、シチリア島の小さな村にあるその村の唯一の娯楽施設を舞台にしていた。
西成で日雇い労働をした人たちが、スカッとしたくてアクション映画を観に国際劇場に来る。
また、違った意味でスカッとしたい人もひっそりと利用する。
その全てを飲み込んだ小屋として国際劇場はある。

 

売店の背後にあるこじんまりした事務所内には、表に出せない情報がいっぱいで写真を撮ることは叶わなかったが、今度は映写室も見せてくれるかも、との言質をいただく。
嬉しいぞ。

タバコを燻らせながら、終始笑顔で突然の来訪を迎え入れてくれた支配人さんに改めて感謝である。

帰り際には入り口まで送ってくださった。
ここで一枚写真撮りゃ良かった。
スカした小屋なんて、しゃらくせーとのパンク精神に溢れた方。
映画館は、土地とそれを営む人が反映されて形作られるのだと思い知らされた時間であった。

 

同じ日のことを綴られたオナキンさんのnoteも併せてご覧ください。

note.com

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