暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。90日目 「夏への扉」

2021年6月1日。

日雇い現金仕事の日。

見落としていたが、夜中に「現地に8時半に来ればいいぞ!」とのLINEをもらったので、5時半に起床。
すっかり、日の出が早くなった。
「まだ暗いうちに、仕事を探す」
みたいな気の滅入る状況ではなくなった。逆に言うと、
「もう、明るいぞ!起きろ!働け!」
とお天道様に急かされているような気がする。

どっちもどっち。
どっちが良いのか?どっちも良くない気がする。

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ちなみに、「ビジネスホテル スバル」の個室には、テーブルという物がない。
ならば、どうせテレビは見ないのでテレビ台から液晶モニターを降ろして、テーブル代わりにしてキーボードを打ったりしたいのだが、実はこのテレビはテレビ台と接着されている。
つまり、このテレビ台を小机として活用し、ささやかな宴の舞台としたり、ノーパソを置きエンターキーをタターン!と打ち鳴らすことは叶わない。

確かに、このサイズの液晶テレビなら、盗める。
なら、貼り付けとけ!というのは理屈だ。

畢竟、寝転んだり胡座をかいてパソコン作業をすることになるので、いつでも、物が片付いていない、引っ越し間際の焦燥感めいた感覚を呼び覚ますことができる。
いつだって、人は旅人である。

今日も、泥と砂に塗れる旅が始まる。

摂取して排出

現場の最寄り駅まで、電車を2回乗り換え到着。
ここから現場までは徒歩で10分か。

まばらにスーツ姿の通勤客が駅に向かう波に逆行し、松屋で、ソーセージエッグ定食+ミニカレーを食す。
カレーって本当に美味しい。
どうしてこんなに狂おしいくらいに美味なんだろうか。
あらゆるものはカレー味であるべき。
べき、ではないかも知れない。

松屋の店内で、排便も済ませ準備完了。
カレーが美味しい!との話をした後で恐縮だが、現場によってはドドド田舎ーなこともあるので、仕事中に排便なんて出来ると思うなよ、そう言いたい。誰に?自分に。

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現場に到着すると、まだ監督さんは来ていない。
貧乏性というかお父さんは心配性症候群なので、集合時間の30分前には行ってしまう。
怒られたくないから。
不測の事態に対処したいから。
人を待たせるほどの人間ではないから。

箭内道彦が自らのド派手なファッションの理由を問われて、
「自分には中身がないから、外見だけでも派手にしている」
と嘯いていて、一時期は僕もその言に倣い、アクロバティックな配色の洋服を着ていたものだが、今ではすっかり地味な作業服しか持っていない。必要が十分を作る。
いよいよ、中身が問われるようになった、と思えばこうして何度も現場に呼んでくれる依頼主の期待を裏切ってはいけない、と想いを新たにするのであった。

灼熱地獄未満

すでに、元請けの部長さんが来ていたので、少し歓談。

「今日は暑くなりそうですね」

「そうやな、これからは地獄の季節やな、みんな辞めていく季節や」

今日の当地の予想最高気温は30度超え。 
駅前スーパーで買ってきた2リットルのお茶はきっとすぐに飲み干してしまうだろう。

 

監督さんともう一人の職人さんと合流。

乾式土壌改良。
更地の計測をし、住宅街の一角なので周囲に影響が及ばぬようシートを張って養生する。
仕様書を読むような能力はないが、この辺の手際はある程度慣れてきた。
釘を地面に打ちつけたり、スプレーでマークしたり、単管を地面に打ち込み、シートを拡げたり。

キリと呼ばれるドリルを地面に打ち込み、穴を穿つ音。
重機が回転し、泥を落とす音。

現場仕事を経験していなかった頃には、「うっせーな、テメーら!」と感じていた作業音。
今は、こちらが住宅街に突然現れた騒音主である。
何事も経験しないと、時には相反する立場に立ってみないと他者を許容する心は芽生えにくい。
近隣の住宅の方には、「ちょっとうるさくしますので、恐れ入ります!」と挨拶する。
どの方も、「わかりました」「大丈夫です!」と答えてくれる。
果たして、僕はこんなに爽やかに答えられていただろうか?
経験していなくても、思いを馳せることは出来る。
経験則に頼らずとも、寛容さにたどり着くことが理想。

「出産の痛み」
を表現する時に、「鼻からスイカを出すような」とか「足の小指をタンスの角にぶつけた痛みが骨盤全体に永遠に続くような」とか、比喩の手練手管を尽くすのは、出産という行為への敬意を、そのかけがえのない瞬間に至る過程を、共有してもらいたい、寛容さへの希求だと思うのである。云々。

コンビネーションで乗り切る

地面を掘り起こし、セメントを加えて撹拌。

手元を受け持つ僕は、適宜掘り起こされた土とセメントを穴に戻し、混ぜ込んでいく。

穴の深さは数パターンあるので、混ぜ込みが終われば、深さを計り、穴の表面を整えていく。
スコップの振り回しと地面を整える金属製のテン棒を振り落とす作業。
瞬く間にヘルメットの裏側から汗が滲み、呼吸が荒くなる。
セメントの粉と土が降りかかり、視界が曇る。

一連の作業は身についてきたが、掘られた穴の表面を整備する精度がまだ甘い。
もう一人の職人さんが上手くサポートしてくれる。

「まず、周りから固めて、あとはポンポンポンって、やればいいです」

なるほどっすねー。ポンポンポンすねー。
とは瞬間、理解するが少し立ち止まると「ポンポンポン」ってどうやるんすか?
その、頃合いは経験で埋めていかねばならない。
「ポンポンポン」
わか・りま・せん!

今日は、大まかな高さを僕が作り、一緒に作業する方が調整していく段取りで上手く進んだ。

 

何度か休憩を挟むたびに監督さんがクーラーボックスから冷えた(そうでもないヌルめの)コーラや缶コーヒーをくれる。

ヘルメットを外し、タバコに火を点け、地面に腰を下ろす。
汚れは気にならない。
もう、存分に汚れている。

職人さんは、頭から水道をかけて冷やしている。

「おい、まだ6月やで」

「ホントっすよ。ヤバいすね」

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空調服とか必要になるんですかね?真夏は」

「ああ、でもアレもね。そんなに効果ないです。動き回ったら一緒。変に重たいだけで。水かぶるのが一番やね」

夏ってなんなんですか。

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泥だらけですけど、電車乗らせてもらいます

作業は終わり、後片付けの途中であったが17時を回っていたので、

「もう、上がってええよ。ご苦労様。駅まで歩ける?」

少し慣れてきたからか、今日の報酬は¥15,000。
あざっす。
お疲れ様でっす!

駅までの途上、自販機で買った飲料を秒で飲み切る。
あああ、疲れた。ポンポンポン。

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持ってきた薄手のジャケットで泥だらけのロンTを隠すように着込み、電車に乗り込む。

すみまっせん!
臭いでしょう?汚いでしょう?
離れて立ってますんで、勘弁してください。

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宿に帰ったら、もう何もやる気起きない。

それで、ブログの更新も遅れるんですよね。
良くない。
女装さんの記事もまだ出来ないし。
良くない。

でも、ひたすら疲れた。
眠りまっす。

仕事内容
日付:2021/6/1(火)
場所:大阪市
現場:更地
内容:土壌改良・乾式柱状改良
時間:8:30~17:15
待遇:飯なし
給与:¥15,000

 

収入

15,000円


使った金額

松屋・ソーセージエッグW定食+ミニカレー:480円
交通費:860円(往復)
豚肉と筍の春巻:190円(二個分)
厚切りロースカツサンド:346円
ベビースターラーメンおつまみ:216円(二個分)
2種類のクリームたっぷりシュー:52円
クーリッシュ・フローズン白桃:75円
ガリガリ君・リッチチョコミント:84円
森永・大粒ラムネ ソルティライチ:151円
森永・アロエヨーグルトバー:151円
烏龍茶:97円
やかんの麦茶:140円
味わいカルピス・フルーツミックス:117円
レジ袋:2円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二個分)

 

所持金

38,515円