暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

西成で暮らす。26日目 「アントワネット」

2021年3月26日。 

 

「待ち」
の姿勢では、仕事は得られない。

とにかく目ぼしい手配師には声をかけていくしかない。

糠喜び

今日で「パークイン」とは、さようなら。
どデカイ荷物を背負い、仕事探し。

ひとりの手配師には、

「んんー、足場とか組んだことある?」

と問われ、

「やったことないです。高所作業ですか?素人では無理ですかね…」

ズブの素人であることを突き付けられる。
嘘をついても、とにかく現場に入るべきなんだろうか?
使いものにならない人間が居ては、ただただ迷惑だろう。

 

その後も幾人かに声をかける。

「おお、ちょうど来るはずの人が来んくてな。入れる?」

「お願いします!」

「ほなら、ちょっと待っとってな」

路上の縁石に座り込み、待つ。
明らかに昨日負傷した腰の痛みは増している。
ただ、無理しなきゃいけない局面だと思う。
踏ん張り時だ、ごまかしごまかしやってみよう。
壊れたら、壊れた時だ。

30分ほど待っていたらば、遠くから道具を抱えたオッチャンが走ってくる。

「おおー、〇〇やん!遅過ぎるでー」

「ごめんなさい!寝坊してもうて」

 

これ、もう、僕は、用無し、じゃないんですか?
案の定、

「ごめんな。ちょっと他の現場ないか、探してみるから」

と告げられたが、そんな仕事はなかった。
缶コーヒーを一本渡され、手配師と遅れてきたオッチャンを乗せた車は去っていった。

 

クソクソ。
お前らの口車に乗せられて、干上がるのはコッチなんだ!

とか、一瞬荒れた風ですが、
パンが無ければ、お菓子を。日雇いが無いなら、ウーバーやればいいじゃない。
『人にはそれぞれ事情がある』©︎真島昌利

一度、カギを返した「パークイン」に戻る。
この宿は早朝には受付に人がおらず、カギは返却箱に入れておけば良いシステム。
一度返したカギを回収し部屋に戻り、2時間ほど仮眠。

 

気持ちを入れ替えて、10時〜21時までウーバーイーツで稼働。

この日は快晴。
金曜日には注文が多いのではないか、という印象が当初はあったのだが実際には少ない。
フライデーナイトは外食する人が多いのかも知れない。

ランクルームから布ガムテープを見つけ出し、昨日仮補修したサドルを本補修する。

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どんどん、みすぼらしさが増していく。
ちょっと、綾波レイぽくなった。

「いいぞぉ、みすぼらしいぞぉ。みすぼらしさに磨きがかかってきたぞぉ」
松村達雄の口調で言いたい。

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ウーバーイーツにはチップ制度というものがあり、時折、お客がチップをくれる。
これは、純粋に配達員の収入に加算される。
ありがたいことだ。


病院の研修医の人に配達した際に、病院前で待ち合わせて料理を渡したのだが、そのお客さんがまじまじと綾波サドルを眺めていた。
その後、チップを¥300くれた。
不憫に感じて、チップをくれたのかも知れない。
ありがとうございました。

無駄に機能的なウーバーバッグ

ウーバーイーツ配達用のバッグは、ローンチ直後からアップデートを繰り返してきている。
僕も東京時代の初代バッグから歴代使ってきたが、最新モデルは確かに良くできている。

 

配達途中、信号待ちで「犬と並んでもっともヒトに近しい小動物をトレードマークにした日本最大級の物流の担い手」で働く配達員の方に声をかけられた。
もう、上手く喩えられないなら、こんな遊びやめた方がいい。
クロネコヤマトの人です。

「そのバッグ丈夫です?」

「ああー、結構頑丈ですよ。無駄に機能性あります。防水仕様だし、保温性あるし、クリップとかベルクロとかいっぱい付いているんで、カスタマイズも出来ますし」

「そうなんですねぇ。夏に海行くときにいいなぁ、と思って」

「ああ、いいと思います。外側の生地が砂とか付いてもすぐ取れますよ」

「アマゾンで買えるでしょ?買って見ますわ!」

「いいですね!クロネコの人がウーバーのカバン買うのは!」

「そうですね。ライバルなんかな(笑)」

といった会話をし、お互いの配達の健闘を祈りつつ別れた。

 

昔、アウトドア系のパンツを購入したら、サイドのポケットが天地逆さまに取り付けられていて、すわ不良品かと思ったが、友人と論議した結果、

ボルダリングなどで、身体を逆さまにして作業する際に使うのではないか?

という結論に至った。
正解は知らないが。
往年の名夫婦漫才師、春日三球・照代の代表演目『地下鉄』における「地下鉄の電車って、どこから入れたんでしょうねぇ?」議論並みに白熱した議論であった。

なんの話ですか。

ポールウインナーの誘惑

10時〜20時半まで稼働し、¥10,753也。

週末の定宿「快活CLUB」にインする前に、「スーパー玉出」で買い出し。
西成にいなくても、玉出に行くのね。因果。

「いかるが牛乳」
フルーツ牛乳が可愛かったのでジャケ買い
林檎ベースのフルーツ牛乳は、バナナベースのものより清涼感があって美味しい。

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そして、普段の価格よりもだいぶ安かったので「ポールウインナー」を購入。

一般的な「魚肉ソーセージ」にはない野性味がある味は唯一無二。
このワイルドさは、時折無性に食べたくなる。

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この「ポールウインナー」。
関東圏では、ほとんど見かけない。
絶対に旨いんだけどなぁ。
大阪土産にどうぞ!

style.nikkei.com

漫画喫茶に泊まるということ

「快活CLUB」ではいつも“フルフラットシート”というタイプの部屋で眠るのだが、結構窮屈で入眠までに時間を要する。

一足先に爆睡していた方のイビキが炸裂していたが、これは仕方がない。
おそらく僕も入眠後はそんな騒音上等のはずだ。

ところが、どうやら他のブースの客からクレームが入ったらしく、店の人に
「お客様、もう少しお静かに」
と注意され、叩き起こされていた。
といっても自分でコントロールできないわなぁ。
気の毒。

 

漫画喫茶に宿泊するという体験は、この西成暮らしを始める前には、学生時代だったのでもう20年以上昔の話になる。

利用客には、若者も多いがおじいちゃんクラスのオッチャンも多い。
汚れた作業着を着た、僕と同類の方の姿もある。

そして、誰もがソフトクリームを頬張り、イビキをかいて、明日に備えるのである。
それが、現実。

 

使った金額

駐輪場代:150円
交通費:180円
焼きたてパン:259円
パン・フランク&バジル:127円
ミンチカツ:127円
磯辺揚げ:52円
ポールウインナーソーセージ:311円
白身フライ:151円
大きなイカフライ:137円
パン・クインシーミルク:152円
アイス・赤城チョコミント:73円
セブンティーンアイス・チョコミント:150円
タフグミ・スポーツドリンク味:171円
大粒ラムネ・ぶどうスカッシュ:117円
紅茶花伝ロイヤルミルクティー:157円
チェリオ・ミックスフルーツオ・レ:100円
紅茶姫マイルドミルクティー:50円
いかるが・かるちゃんフルーツ:125円(二個分)
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:800円(二個分)

 

所持金

4,241円

西成で暮らす。25日目 「どの現場でもケガはする」

2021年3月25日。 

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洗濯物を部屋干しする。
ってイヤですよね。今日も、春の日差しいっぱいだというのに。

住処が安定している方においては、ベランダとかバルコニーとか、果ては屋上スペースとか燦々と降り注ぐ太陽の恩恵を存分に利用して乾きを癒せるのだと思います。

衣類に残る太陽の香り(たとえ、それがダニの死臭だったとしても!)
ベランダ欲しいなぁ。ベランダくださいよ!か、バルコニー。

 

昨日発令された「西成現金仕事ボイコット宣言」に伴って、今日は1日ウーバーイーツで稼ぎます。
ムニャムニャしたまま、「パークイン」を8時に立ち、通天閣を眺めながらタバコをくゆらしていたら、一件目の配達依頼がマクドナルド通天閣前店から通知。
そのまま、難波の中心地に移動して行く。

途中、飲食店前にゴミとして出されていたダンボールから、ガムテープを拝借し、サドルの割れている部分を補修。

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いやー、みすぼらしくなってきました

 

この日の大阪地方は、朝から雨予報。
11時過ぎから本格的に降り出した。

無駄にハイスペックなゴアテックスの上下を着込み。
引っ切り無しの注文に応じ、自転車を走らせて行く。

雨の日には、ウーバー運営から通称「雨クエ」と呼ばれる「雨の日で配達員少なくなって、家から出たがらないお客の注文も増えるから、この時間帯に6件配達すれば、500円上乗せしますよ!」みたいな飴が配られる。

 

実際、注文は集中的に来る。
ずぶ濡れで、飲食店に入ったり、タワーマンションに突入するのは少しばかり気が引けるが、これはそういう仕事。すみません!濡れてます!僕は濡れていますが、ご注文のお料理だけは死んでも濡らしませんよ!という覚悟である。

腰を強打する

14時の配達がちょうど天満付近で終わる。
ここで、また新しい注文を受けてしまったら、どんな辺鄙な土地に飛ばされるかわからない。

でも、「もう一件くらいやっか!」と受けてしまう。
そしたら、まさかの浪速区行き。
チクショー感満載だが、やるしかない。

 

ピックアップするお店は、自然派レストランというのか、階段が苔むしたような造作の料理店。
無事に弁当を受け取り、階段を降りるときに事件は起きた。
苔むしに滑って、階段落ち。

おおむね四段ばかりを滑り落ち、腰と尻の間の部分を強打。
「うわー…、何アレ」
自然派レストランで食事に興じていた女性客に汚いモノでも見るように呟いた。

でも、流石、俺!
「死んでも弁当は守る!」というアティチュードで、メシを食う時のラッコのように腹のあたりで弁当の平行は保った。エラいぞ。

しかし、腰には激痛が。
さっきの分でもうやめておけば良かった…。
後悔先に立たず。

 

西成の過酷な現場でケガをするなら納得もいく。
ところが、ウーバーイーツで負傷するとは…。
腰の痛みをど真ん中で感じながら、死守した弁当を雨中の中、配達しながら思わず声を出して笑ってしまう。
「俺、一体何が出来るんだ。上手く行かなすぎる」
ハハハハハハハハハハハ、アハッハ。

 

なんとか無事に配達を終え、近隣の雑居ビルの軒先をお借りして、雨を避けながら座り込む。
呼吸をするたびに、痛打した腰が疼くように痛い。
ハハハハハハハハハハハ、アハッハ。

 

新たな配達は辞め、天満のトランクルームにウーバーバッグを戻し、さらに強さを増した雨を恨めしく眺めながら自転車を駐輪場に預け地下鉄で西成に夕刻戻る。

 今日は、15時までの稼働で、¥7,818也。

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もう手持ちがないので、火曜分・水曜分と併せた収入¥23,098から、9000円だけ口座から降ろした。これで、メシ食うんだ。んだんだ。

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この腰の痛みを抱えて、明日西成現金仕事が出来るか?
でも、やるんだよ。
明日は、3時に起きるんだ!

電話が来た!仕事ですか?

22時前には横になる。
寝相、身体のポジションによっては痛めた腰が圧迫され、痛みで入眠出来ない。

それでも、ウトウトしてきた23時過ぎ。
スマホが鳴動。
画面を見ると、登録されていない携帯番号。
すぐに電話は切れた。

「もしかして!!」

電話番号を伝えている手配師や社長からの仕事依頼の入電かも知れない。
すぐに折り返す。

その相手は、福岡の知人であった。
すっかり酔っ払っていた。
一気にテンションダウン。

 

僕はねぇ、明日のために寝る必要があるんだ。
ただ、人と話せたのは嬉しかった。

今日会話した相手は、配達先のエレベーター待ちで
「ええ匂いしてますな」
と配達しようとしていた唐揚げを指して話しかけてくれた老紳士だけであった。
その老紳士も、よくウーバーイーツを利用するようである。
今日のような雨の日は体調も優れないので、配達してくれるのはとても助かる、と話してくれた。フードデリバリーの役割のひとつを確かめた思いだった。

 

収入

23,098円

 

使った金額

貯金:14,098円
交通費:230円
豚肉と筍の春巻:95円
サクサク食感クルーラー:108円
焼きそばパン日清焼きそばUFO:160円
ポテトチップスクリスプ・梅茶漬け:171円
牛肉コロッケ:125円
ハイチュウ・マミーアソート:171円
紅茶花伝ロイヤルミルクティー:291円(二個分)
ピルクルLight:108円
レジ袋:3円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

7,630円

西成で暮らす。24日目 「逃走の果て」

2021年3月24日。 

もう、 前略。中略。後略。
毎日、一緒です。

今日も仕事なかったーーーー。

 

晴れ渡る西成。
仕事に行った人は、行った後の祭りの宿。

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朝、5時過ぎに「パークイン」に一旦戻り、2時間ほど眠った。

例えばこんな、日雇い人足の一日

例えば、2時半に起床。
手配師を探して、仕事を得られたとして、4時に事務所で朝飯。
その日の仕事が振られるまで待機所で待ち。
6時頃、現場に移動。
8時から仕事開始。
肉体を追い込みながらクタクタになるまで労働。
17時に解放され、西成に18時に戻る。
洗濯や風呂で19時。
一杯やって、夜飯食って20時。

その後、テレビでも観て、マスでもかいてたら21時。

もう、寝なきゃ!
翌朝は2時半起きだから。。

 

文化ゼロ。
「健康で文化的な最低限度の生活」なんて営めるわけがない。
逆に言えば、酒飲む以外に何があるというのか?

厳しい。
そして、仕事がない。のである。

申し訳ないがウーバーイーツ

9時前に宿を出ると、清掃のオバチャンに出くわす。

「あら、チェックアウト?」

「いや、まだです!」

「ごめーん!追い出すつもりはないんよー」

「ええ。もうちょっと居ます…」

 

西成の自転車置き場。自転車が盗まれていることはない。
治安は大丈夫。

しかし、毎回、ダイアル式のロックが弄られている。
今日も盗めなかったんだな!ザマァ。

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今日は9時〜20時までガッツリやって、¥10,159。

こんな時間までやってしまっているということは、もう明日3時起きなんかしてやんねーんだ。クソが。

 

「パークイン」の風呂は21時に終了するので、間に合わなかった。
が、洗濯物が溜まっている。

西成の夜は早いので、多くのコインランドリーが21時過ぎには閉店する。
先日お世話になった、粉末洗剤が常備されているコインランドリーも、もう閉まりそう。
しかし、閉店時間が明示されていないので、洗濯開始。
留守にしてしまい、洗濯物が放置されては困るので、洗濯終了まで居座ることにする。

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 暇つぶしに並べられた漫画を手に取ってみる。

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謎ラインナップの中から、『ハツカレ/初彼』というコミックを少し読む。

女子高生が告られて、云々という内容であったような気がする。
ほとんど頭に入ってこなかった。

 

そう言えば、今日ウーバーの配達先のタワーマンションのエレベーターで一緒になった小学生の女の子に話しかけられた。

「ウーバー?」

「そうよ、弁当配達。知ってる?」

「知ってるよ!でも、ウーバーも大変なんでしょ?」

「大変?んん、まぁ(西成労働よりは、だいぶ楽よ)」

「頑張ってねー!」

と華麗に去っていった。彼女は何を知っていたのか。
全て見透かされていたのか。

 

本当に頑張っていれば、「頑張っとるわ!ボケカス!」と言い返したいところであったが、自問自答しても頑張っている感がなかったので、高級ホテルのような廊下をキックボードで颯爽と消えて行く少女の後ろ姿に向けて、ポツリと「頑張るね」と独りごちた。

 

ドン・キホーテ」に行くと、鶯ボールが安価で投げ売られていたので購入。
飴状の部分が歯に詰まるので、歯磨きを二度した。

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ボイコット宣言

もう、明日は3時起きなんかしてやらない!

ウーバーイーツやってやるんだ!ボイコットじゃ!なんや、このクソみたいなシステム!

 

と書きながら、西成という街にボイコットされているのは、本当は自分の方なのだと分かっている。
そのシステムに従事することを肯んずる覚悟でココにいるのに。ウーバーイーツに逃げるのだ。
逃げて、逃げてばかりである。
頑張ることから逃げているだけである。

いよいよ、所持金は残りわずかである。

 

使った金額

コインランドリー(洗濯):200円
ハッシュドポテト:108円
チョコづくしコッペパン:181円
ガーリック風味・ひと口ハッシュドポテト:256円
塩味あみあみポテト:140円
鶯ボール:212円(二袋分)
十勝のむヨーグルト・みかん:108円
ジャスミン茶:108円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

492円

西成で暮らす。23日目 「風体が馴染む」

2021年3月23日。 

 

3時20分起床。
10分後には、仕事探しに外へ。

もう、一方的にはコチラは顔を覚えてしまっている手配師も多い。

「もう、決まっとる!」
「ないわ!」
「(ただ、首を横に振る仕草)」

大体の反応も分かってきた。

ハイ!仕事ないっすね!! 

 

先週仕事をした時に同行した一群がおり、近づいてみる。

「今日は。。無さそうですね?」

「この時間まで車来ないんで、ないでしょうねぇ」

時刻はまだ4時前である。

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「家ないんですか?」

いつものゾーンを二周して、あいりんセンター付近のガードレールに腰掛けていたら、一台の軽自動車が近くで停まった。すわ、スカウトか!
助手席から降りてきた男性が笑顔で話しかけてくる。

「おはようございまーす!住む家ありますか?お困りじゃないですか?」

やったー!やったやった!
ついにホームレス認定されたようだ。
西成で暮らしだして3週間。
ついに、この街に馴染みきったのだ!
成長した。否、沈没した。しきった。
僕はもうホームレス然。

もしかすると、この声かけは所謂「生活保護ビジネス」と言う類のモノかも知れない。
もう少し、話を聞けばよかったと後になって思ったのだが、「いや、大丈夫ですよぉ」と半笑いでその場を去ってしまった。去る僕の背中に「また、お願いしまーす!」と畳み掛けてくる。善意やボランティアの人たちならば、そんな言葉を投げかけるだろうか?
怪しい香りしかしなかった。

 

その後も、ただ漫然と車や手配師が来ないか?
待つ。
本当に馬鹿らしい。何をしとるんだ、この状態。
何「待ち」ですか?
「仕事待ち」と言えればまだ良い。
「仕事があるかどうか分からないのに、ただ手配師を待っている」と言う「待ち」なのです。

 

隣のオッチャンに声をかけてみる。
時刻は5時に近付いている。

「もう、現金無理ですかね?」

「そうやな。もーう無いやろな」

「この場合、オッチャンはドヤ帰るんですか?」

「そうやろ。酒飲む以外、何するねん」

そう言い残し、盛大に痰を路上に吐き散らし、そのオッチャンは明けきらぬ闇に溶けていった。

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仮眠してウーバーイーツ。それ以外ない

表題の通りである。

5時半過ぎに「パークイン」に戻り、3時間ほど寝る。

その後、天満橋の駐輪場に停めてきた自転車を引き上げるために、地下鉄で移動。
駐輪代も二日分で¥300かかった。
イタイなぁ。

11時から20時までウーバーイーツ稼働。

それだけの時間稼働したのに、今日の稼ぎは¥5,121。
コレには原因があって、後半の3時間は西成区大正区で配達依頼が来るかどうか?試してみたから。

結果、3時間で一件しか依頼がなかった。

夕食のピーク時には通常、梅田(キタ)や難波(ミナミ)といった中心部で稼働すれば、1時間に4件配達することも不可能ではない。
しかし、西成周辺ではさっぱりであった。

オッチャンたちが注文する訳はないしなぁ。
カップ酒のデリバリーでも出来ればいいんですがねぇ。

 

ちなみに、2月に買った中古自転車は当初からサドル部にヒビ割れが有り、そこから延々と日曜日に降った雨の水分が浸み出してきたので、終日ズボンの臀部が濡れた状態で配達していた。
途中、配達先のエレベーターの鏡で確認したら、ズバリうんこ漏らしたみたいな有様であった。
ので、なるべく平行移動および後ろ歩きで移動することで、うんこ漏らし疑惑を排除するのに苦心した。
それは、さながら「誰にも背中を取られまい」とする一流の武道家のようであった、とかないとか。

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西区の靱公園では桜が咲いていた。

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もう4月か…。

コレから、どうする。。

本当に、日雇い仕事がない。

どうしたら良いのか。

現状分かっている会社や手配師に電話連絡してみたのだが、
ひとりの手配師からは、

「仕事あるときは、コッチから連絡するから!しょっちゅう掛けて来られても、無いもんわ無い!」

とキレられ、

ひとりの社長からは、こちらからの仕事参加の可否を尋ねる長文メッセージに対して、一言

「仕事はない」

とだけ返信があった。

 

もう思い切って飯場」デビューするしかないのかも知れない。
飯場」とは、30日契約などで現場の近くに滞在し、毎日働く形態。
あいりん地区には、いくつかその種の貼り紙がある。

懸念としては、

・現場の当たり外れが恐い ← トンデモナイ地獄でも一定期間逃げられない。
・詳しいシステムが分かっていない ← コレは詳細を聞き判断するしかない。
・毎日、働ける体力がない ← ホームレス然とはしてきたけど、肉体労働者のそれには程遠い。

今週まで、日雇いで粘ってみて仕事がなさそうならば、「飯場」行きも視野に入れたい。

でなければ、「生活保護」か。。
そう言う訳にゃいかんし。

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宿に戻り、湯を浴み、「スーパー玉出」で買い物をし、

「割り箸、一膳ください!」

と申し出たら、

「内緒よ!ストックしておき!」

と3つもくれた。
おばちゃんの口から発せられた「ストック」と言う語感にまず驚き、そして、ますますホームレス然たる見た目になってきているのだな僕は。。と感じ入った。

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ついに宿にウーバーイーツ用のバッグを持ち込んだ。
もう、今週はウーバー三昧でもいい気がする。

もちろん明日も3時に起きますがね。
イカれてる、とは思いながらもね。

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使った金額

交通費:230円
駐輪場代:300円
スポリカ:50円
ワンダ極カフェオレ:150円
本格肉まん:140円
ファミマ・ザ・カレーぱん:140円
かしわから揚げ:294円
バナナカステラ:106円
ガリガリ君リッチほとばしる青春の味レモンヨーグルト味:112円(二個分)
レジ袋:3円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

2,205円

西成で暮らす。22日目 「コントロールフリーク」

2021年3月22日。 

昨日、メシを食いながらM君に聞いた話では、
「2時半ごろに仕事探しする人もいる」
とのこと。

いよいよ、早朝という概念が瓦解してきた。
2時半って…。

 

という訳で、2時半に起きてみました。

そして、歯を磨いたことは覚えているのですが、そのまま気絶。
気が付いたら、5時を回っていました。

もう、無理するのやめます
3時半起きで、15分後には外に出る。
それで、5時半ごろまで粘って、仕事が見つからなければ、仕方ない。
そう思おう。

 

そして、滞っていたブログを書いて、1日が終わろうとしている。
こんな適当で、クソつまらない文章でも、それなりに時間がかかっている。
才能ないなぁ。
なにやらしても。

 

イッセー尾形の一人芝居に『タクシー』という演目がある。
酔っ払ったサラリーマンが、タクシーを捕まえようとするが、乗車拒否も含めて全く停まってくれない。やがて、立ち小便をしていた男は、ちょうど人ひとり入れるかどうかのビルの隙間を見つけ、そこに滑り込んでみる。奥に進むほど隙間は狭くなり、やがて進むことも戻ることも出来なく、そこにはまり込んでしまう。男は最後に「ヘイ!タクシー!」と絶叫して、そのスケッチは終わる。

そのサラリーマンが、途中言うセリフがあって、それを度々思い出すんですがね。
曰く、

「アレも出来ません。コレも出来ません。俺はタクシーも停められません!てか」

どうと言うことのないセリフかも知れないが、何かに失敗する時、何かに悩んだ時、僕はいつもこのセリフを思い出す。
そして、滑稽で悲劇的な「ビルの間に挟まった男」という都市伝説のような末路を迎える男のことを思い出す。

何も出来ない男に育ちました。
可能性の塊として産んでもらったのに。

 

昨日預けた自転車を取りに行こうと考えていたら、外から雨音がする。
「今日は、晴れのはずなのに」日計で駐輪代がかかってしまうが、今日は辞め。

 

明日からの日雇い現金仕事に向けて、
長袖のシャツ
上着のヤッケ
を買いに、西成で一番大きな作業着店へ。f:id:stolenthesun:20210322202420j:plain 

 

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夜は早めに宿に戻り、
NHKプロフェッショナル 仕事の流儀スペシャ庵野秀明を観る。

エヴァンゲリオンの新作を作るドキュメントというよりは、彼の生涯を概観するような作りであった。途中、何度も被写体である庵野秀明が、
「いま、僕撮ってもしょうがないから」
とカメラを他に向けるように促すのが印象的であった。

撮られている側が、自分の出るドキュメンタリーの作り方や出来をもっとも考えている。

昔、上岡龍太郎が密着カメラを暴力的に動かし、
「いま、起きてることを撮れ!それをせんで何がドキュメンタリーやねん!」
と言ったシーンや、
映画『“樹木希林”を生きる』で、
タイトルロールである樹木希林が、ディレクターに対して「コレで面白いものが出来ると思わない」と取材方法や取材姿勢にダメを出すシーンが思い浮かんだ。

自分が関わるモノへの責任の持ち方みたいなこと。


ただ、やっぱりテレビ番組は当分観なくてもいいわ。
さようなら。
頑張れ、明日の自分。

 

 使った金額

ニットハイポロシャツ:380円
カッパヤッケ上:390円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

4,130円

 

西成で暮らす。21日目 「奢る勇気」

2021年3月21日。

思えば、「西成で暮らす」ことを始めて今日で3週間である。
なのに、今日も西成に居ないわけで。
何をしているんだろうか、ホントの話。

しかし、保険料や年金、支払いの残っている通信費などを稼ぎ出さねばならぬ。
為せば成る為さねば成らぬ何事も。
泣き言は、身体をいじめ抜いてからだ。

 

朝、漫画喫茶で目覚める。
喫煙所で一服しながら眺める窓の外はすっかり雨模様。

雨の日にゃ、日がない家でゴロゴロしたいもの。
そりゃしたいもの。

そんな方々がウーバーイーツで料理を注文するので、雨の日のウーバー注文は激増する。
翻れば、配達員にとっては稼ぎ時とも言える。

ある程度の時間帯に西成に戻るまでは、今日もウーバーをやろう!
と書くと、非常に前向きに聞こえてしまうかも知れないが、雨の日はどこにも居られない、それが実情だ。
どこに行っても、軒先を借りるには金がかかる。

ホームレスの人はどうしているんだろうか?
排除型社会の代名詞として、公園のベンチに不必要な手すりが取り付けられたり、開けた空間はなんらかの仕方で「埋めて」しまうという現象がある。

bijutsutecho.com

 

ひとたび「家のない」生活に入れば、途端に排除されるのが誰でもない自分であることに気付かされる。
どこにも居場所がない、のだ。

ならば、ずぶ濡れになって自転車を走らせ、料理の配達をするしかないではないか。
そんな気持ちだ。

 

 

 配達途中、あまりに雨がヒドくなり、雨宿りをしていたら、
小鳥のモチーフが乗せられた柵、公道と私道をさえぎる車止めの一種か。

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これもデザインでその本質を見えなくしてはいるが、「排除型」の設備だろう。
ここに腰掛けることは出来ない。
排除される。
小鳥に罪はない。

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10~13半まで稼働し、¥6,324。

やはり雨の日はひっきりなしに注文が入る。
注文過多でパンクしているお店もあった。
雨で疲労感も増大した。

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今週はウーバーイーツで ¥30,230也。

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この収入は、月末の支払いに備えて確保しておこう。
3000円だけおろした。

 

身体が濡れ、冷え切ってしまい、このまま自転車を漕いで西成に戻る気力がない。
天満の駐輪場に自転車を預け、地下鉄で動物園前まで移動。
当然、普通の街では駐輪にはお金がかかる。
早めに引き上げなければならないだろう。

 

楽天トラベルから、また「パークイン」を予約。
金曜に出て行くまで5泊。
¥6,175也。

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やったー!

この部屋は壁にフックが多いー!

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ということで、即コインランドリーへ。
そして、三日ぶりに自分のボディも洗濯=風呂です。
汚い身体で、配達してすみませんでした。大阪市民の皆様。

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夜は、M君を誘ってメシに向かう。

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日曜は営業していない飲食店も多く、かなりそぞろ歩く。

結構な土砂降りだったので、M君には悪いことをした。
金曜日に日雇い収入を得たM君は、この土日になんやかんや金を遣い、手持ちは1000円しかないという。

ここは奢りましょう!
と又、先輩風を吹かしてしまう。ダサいね。

 

狙いをつけた店は閉まっていたり、営業終了間近だった。
普通の定食屋、でも歴史のありそうな
和洋食「日松亭」へ。

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女将さんに「歴史長そうな店ですね。どれくらいですか?」
と尋ねると、「ボチボチやね」と素っ気ない返事。
膨らまねぇな。

「オススメはありますか?」

「デミグラスソースは自慢やね」

というわけで、ビフカツ定食を。
M君は、ハンバーグ定食を頼んだ。

大変にみみっちい話だが、誰かに奢ってもらうときに、奢り手の頼む一品の金額を超えないようなモノを頼むという不文律がある、と思う。
まさにM君は僕の「ビフカツ定食」をオーバーしないように「ハンバーグ定食」にしてくれた。そんな不文律を解しているのならば、僕の方が思いっきり“高め”の料理を頼み、奢られ手の意識を柔らかくすべきであった。

余裕があれば、な。
というか僕は金をたんまり持っていても、誰にも奢らないタチの人間である。
そんな器だから、ダメなのよね。

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途中、入店してきたオッチャンは定食に、瓶ビールを二本頼んでいた。
それが正しい。


M君と、「お互い肉体労働した後、豪勢に焼肉行こう!」と約束する。
その時には、M君が奢るべきだ!と本気で思っている46歳であった。

すっかりM君に追い越される

メシを食いながら話していると、
M君は、どうやら金曜日の現場に6月頃まで継続して入れるそうだ。

ホラ!あっという間に、追い抜かれたーーー!

もう6時過ぎに、あいりん地区近辺のコンビニに行けば迎えが来るそうだ。
3時起き、回避!
選ばれし人だよ!

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上が僕の食べた、ビフカツ。

下が、「僕が奢ってやった」ハンバーグ。

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猛烈に美味いとは感じなかったが、少し甘めで粘度の低いデミグラスソースは確かに独特であった。
まともなメシ食いました。
ごちそうさまでした!

 

日松亭」の天井の蛍光灯の配置も独特であった。

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そして会計をお願いする前から、こちらが2000円を出すことを予測して、追い越し気味に400円を渡してくる速攻会計であった。それも独特。

宿に戻り、翌月曜日の活躍を期して、早めに眠る。

 

収入

30,230円

 

使った金額

貯金:25,000円
宿代:6,175円
漫画喫茶宿泊:2,220円
駐輪場代:150円
交通費:230円
コインランドリー(洗濯):200円
ビフカツ定食:800円
ハンバーグ定食:800円
たっぷりタルタルフィッシュバーガー:203円
ささみ揚げ・梅しそ:138円
豚肉と筍の春巻:95円
ガリガリ君リッチほとばしる青春の味レモンヨーグルト味:106円
食事の脂にこの1杯。プーアル茶×烏龍茶:171円
紅茶花伝ミルクテーホット:146円
烏龍茶:151円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

5,300円