暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

小便との闘い・西成あいりん地区はしょんべん臭いのか?

f:id:stolenthesun:20210507185349j:plain

大阪には十三(じゅうそう)という街に
ションベン横丁
という飲食店街があり、コク深い呑み屋やお店が軒を連ねていたらしいのですが、2014年に大規模な火災があり、その後復活を果たしてはいるのですが、往時とは変わってしまっているのかも知れません。
僕は、2014年以前に訪れたことはない。

 

ところは、西成。
この街でしょっちゅう見かける光景と言えば、立ちションするオッチャン。
(右端に見切れています)

f:id:stolenthesun:20210507191443j:plain

f:id:stolenthesun:20210512144023j:plain

 

旧あいりんセンターの軒下にはホームレスの方々が暮らしていますが、その向かい側に青いポリバケツみたいなものが等間隔で設置してある。
当初、「コレ、なんだろう」と思っていたのだが、簡易トイレなのね、コレ。
日雇い現場でも時折見かける。

f:id:stolenthesun:20210507185517j:plain

f:id:stolenthesun:20210507185532j:plain

他の地区よりも公衆便所の数は多いとは思うが、とにかくみんな昼夜を問わず酔っているから、そうすっと所構わず立ちションに及ぶんでしょうな。実際。

その辺を散策していても、突然ションベン臭い芳香が漂う局面も多い。
もう少し、ガマンということを覚えて欲しい気がする。
でも、ガマンなんかしたくないものね。THEガマン。

 

そこで、必然的にここには「小便すんな」的な看板や貼り紙が散見されることになる。
おそらく、酔いどれのオッチャンは、その看板目がけて立ちションかましたりすると思うので、効果のほどは分からない。

そこで今回は、どこで今回なのかは不明だが、西成で見かけた「小便」にまつわる注意喚起を集めてみた。
こんな記事でPV数が増えると思っている僕は完全にしょんべん野郎である。

立ち小便看板コレクション

f:id:stolenthesun:20210512144059j:plain

f:id:stolenthesun:20210512144110j:plain

 

f:id:stolenthesun:20210507191939j:plain

スタンダードだが、非常に力強い。ロシア構成主義を想起させる。

 

f:id:stolenthesun:20210507205430j:plain

f:id:stolenthesun:20210514203440j:plain

f:id:stolenthesun:20210514203452j:plain

鳥居のつるべ打ち。
神道的な抑制効果が現在どれほど有効なのか、疑問ではある。
むしろ、鳥居の目掛けて格好の的になりそうな危惧がある。

 

f:id:stolenthesun:20210507192302j:plain

非常に怒っている。
「犬とみなして水をかけるぞ!」
という恫喝に、力には力で応じるという気概が感ぜられる。

 

f:id:stolenthesun:20210507192440j:plain

ソフトな言い方で「オシッコ」と書くことで、「立ち小便」のみならず「座り小便」への警告効果も果たしている。
クレバー。

 

f:id:stolenthesun:20210507192640j:plain

歴史を感じる注意書きである。
西成vs小便は、昨日今日始まった闘いではない、という重みを感じる。

f:id:stolenthesun:20210507192805j:plainこちらは西成でよく見かけるライオットな「やるぞ!!」看板。
この看板の下に「立ち小便をやめましょう」の吊り札が取り付けられ、セットになると
「立ち小便を『やるぞ!!』」
と読解してしまいそうになるが、それは永遠の誤読である。

f:id:stolenthesun:20210507193017j:plain

 

f:id:stolenthesun:20210507193155j:plain

「大」はダメ。
「大」と「小」はセット案件であると考えてもいいが、立ちション禁止という文言には「当然大便もダメなのよ」という意が込められていることには意識的であるべきである。

 

という訳で、またしてもコレクションという程画像が豊富ではなかった。
そのことについては素直に謝罪したい。
ごめんなさい。

まとめ

結論としては、西成あいりん地区にはしょんべん臭いところも部分的にある。
それはみんなの街も同様だろう。
呑んだら、出す。
そんな人間臭い街。
人間臭さは、しょんべん臭さ、と理解したい。

 

「しょんべん」と言えば、長渕剛

「しょんべん」という単語に、“自らの拙さ”や“世間への憤り”をのせて歌った歌手と言えばどう考えてたって長渕剛になるだろう。

歌詞検索で調べたら、やはり数曲ある。

くそまみれの公衆便所
鼻をつんざくアンモニア
ジッパーおろし、たれ流しゃ
真っ赤な血のしょんべん

作詞・作曲:長渕剛
『英二』

 

 

泣きっ面にしょんべん
ひっかけられた夜

作詞・作曲:長渕剛
『しゃぼん玉』

 

眠らぬ街 東京の暗い路地裏で
ビタミン臭ぇ真っ黄黄のしょんべんたれりゃ
どっかの馬鹿っ面の男が電信柱の影から
やりきれない程悲しい瞳で俺(ひと)をみつめやがる

作詞・作曲:長渕剛
『空〜SORA〜』

 

ああ 明日の朝 ああ 国会議事堂へ行こう
ああ しょんべんひっかけて ああ 口笛吹いてお家へ帰ろう

作詞・作曲:長渕剛
『お家へ帰ろう』

 

難行苦行、浮き世に疲れたと
しょんべんたらしながら お経おっ始めた

作詞・作曲:長渕剛
『お釈迦さま』 

 

「しょんべん」という平仮名表記に、ある種の侠気や男の佗しさを感じる。
日本一、しょんべんを多用するシンガーとしても長渕剛は記憶されるべきだろう。

 

一方、ザ・ブルーハーツの永遠のアンセム
『未来は僕等の手の中』
の歌詞にも「小便」は登場する。

くだらない世の中だ ションベンかけてやろう
打ちのめされる前に 僕等打ちのめしてやろう

作詞・作曲:真島昌利

ここでの小便表記は、片仮名で「ションベン」。
何もかも振り払って、自分らしく突き進めとアジテートしてくるこの名曲。
長渕の歌う「しょんべん」の持つ湿っぽさに対して、甲本ヒロトの歌う「ションベン」の乾いた明るさは、希望と繋がっている。

今ここ、自分の現在地における「小便」は、「しょんべん」なのか?「ションベン」なのか?
そんな事に思いを馳せてみるのも悪くないだろう。

僕は何を書いているのだろう。

 

新地の今・飛田と松島〜緊急事態宣言下で

飛田新地
に初めて足を踏み入れたのは、高校生の時だった。
今のようにネットで情報を仕入れた訳でもなかろうに、その場所が「飾り窓」や「遊郭」として機能している事はどこかで聞き知っていた。

しかし、実際に夜半過ぎに訪れてみて、驚愕した。
妖しく光る提灯に、ピンクのライトに照らされ、襦袢をはだけて座るお嬢たち、通行客に声をかけるおばちゃんのダミ声。

カルチャーショックとはありふれた表現だが、まさしくそれは高校生のおぼこい自分がそれまで触れたことのなかったカルチャーとの遭遇であった。

その後も何度か飛田新地を訪れているが、2回目の時は万券を握りしめて行ったにも関わらず、当時付き合っていた女性がいたので、そこを利用することは裏切りに思え、近隣の今は閉館した「飛田東映」で映画を観て帰った。
万券どころか、500円しか使わずに。

その後はサービスを受けたこともある。
もう大人だったし、彼女いなかったし。
誰に言い訳しているのか分からないが。

松島新地

そんな新地も当然ながら、緊急事態宣言の影響を受けている。
以下は、現在の松島新地の様子。
2週間ほど前に、九条のシネ・ヌーヴォで映画を観たついでに寄ってきた。

f:id:stolenthesun:20210507202836j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202847j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202912j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202923j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202933j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202944j:plain

f:id:stolenthesun:20210507202954j:plain

通常は明るいうちから、客引きは行われているのだが、その一帯はひっそりと静まりかえっていた。

九条という街は、少し西成あいりん地区あたりと似ている。
花街が隣接しており、アーケードの商店街があり、安い飲み屋が林立し、その日暮らしっぽいおっちゃんも居る。スーパー玉出もある。

新地は撮影が困難な場所であるが、誰もいない、お嬢もいない、襖の閉じられた料亭が続く。
撮り放題ではあるが、なんの情報もない。

飛田新地

f:id:stolenthesun:20210507203621j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203631j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203706j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203716j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203725j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203836j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203846j:plain

f:id:stolenthesun:20210507203956j:plain

f:id:stolenthesun:20210507204006j:plain

f:id:stolenthesun:20210507204013j:plain

当然ながら、各料亭には明かりが灯り人の影は感じるが、営業は行われていない。

物見遊山で集まる客もまったく見当たらない。
ときおり、車がゆっくり通行しているくらいだ。

コロナ禍にあって、職を失い風俗店に「堕ちる」といったネット記事をよく見かけるが、「堕ちた」場所で生きている人たちはどこに行けばよいのだろう。

あの禍々しい喧騒がなくなった花街は寒々しく、わずかな灯りだけを灯していた。
西成の日雇いを求める労働者と手配師の光景も前時代的だが、この街の客引きの様子も異様な、そして眩しい風景。

コロナの流行を機に何かが変わるのかも知れないが、ここで生きていくと覚悟を決めた人たちは次の策を講じるだろう。
時代と疫病に流されながら、新地のありようはどう変化するのだろうか。

 

といった結局何ひとつ語っていない書きぶりでこの稿を終えたい。
オチ無し。

 

【インタビュー】「新世界国際劇場」支配人・冨岡和彦さん

新世界、通天閣のふもとに名物の手描き看板を掲げ、通常ならば毎日オールナイト興行を打ち続ける地元に根ざした3本立て上映の歴史ある映画館
新世界国際劇場

f:id:stolenthesun:20210507214857j:plain

緊急事態宣言により、オールナイト上映は中止しているが、夜半までの上映は決行中。
前回の訪問は、去年だった。
女装子の跋扈に恐怖した夜であった。

nishinari-lives.com

 

大阪の多くの映画館が休業中の現在、二番館として絶妙な番組編成で我々に映画を届けてくれている。
西成安宿から徒歩で行ける楽天地。

f:id:stolenthesun:20210507215119j:plain

2021年5月5日。

特になんのアポイントメントも取っていなかったのだが、『ガンズ・アキンボ』を鑑賞した後、売店のお兄さんに話しかけたらば、奥の事務所に招き入れてくれ、30分近くコチラの手前勝手な質問に支配人の冨岡和彦さんが気さくに答えてくださった。多謝感謝。

以下は、国際劇場の常連「この映画は国際でかかるかどうか?」を基準に映画鑑賞スケジュールを決定するOnakin@Walkerさんと共にお話を伺った覚え書きである。
(飛び込みで話を聞けると思っていなかったのでテレコを持っていっていなかったのである。自慢げに書くことでは決してないのである)

さらに特に名刺交換した訳でもないので(そも名刺持ってないし)、支配人さんの名前も検索して記入しているのである。不用意。

以下、メモを基にしたお話の全容です。

現在のコロナでの影響、経営状況

「休業要請は1000平米という基準があるし、ウチは営業短縮で対応してます。だけど、考えてるのはゲリラオールナイト!突然張り紙して、今夜決行!って(笑) やってやろうかな、てね。経営的にはギリギリですよ。コロナに関係なくね」

ゲリラオールナイト!そんな戦い方を考えてるのか!是非その時はぶっ放して欲しい。

入場料について

「これは上げたくないんですよ。消費税が10%になったけれど、今まで1000円で入っていたお客さんに対して1100円には出来ない。まったく印象が変わってしまう」

番組編成について

ー3本の組み合わせが絶妙だと思うんですけど、これはどうやって決めているんですか?

「これは色々兼ね合いがあって、言えないことも多い。番組自体は昔から決めている人がいて任せてます。やっぱり土地柄お客さんはアクション映画を求めてるからド派手なのを入れてます」

次々回のラインナップに『パブリック 図書館の奇跡』が入っているのが意外だったのだが、これも「ホームレス」「経済格差」など土地柄に即した社会問題を扱っている。そうしたシャシンも含めた3本の組み合わせはベテランの担当者の方の手によるらしい。

事務所内には、まだ発表されていない今後のラインナップが掲示されており、まだ公開前のアノ人のアレな映画も入っていた。
これは国際劇場で観るべきだ!と心に決める。

手描き看板について

ー手描き看板はこれからも続けられますか?

「正直、金もかかるし大変ではあるけれど、シネコンには絶対にないもの。映画館に合った看板という意味で、手描き看板はシネコンには合わない。ここにしかないもの。ここで見られるもの。結論から言うと、ずっと続けますよ」

「看板の設置は番組が切り替わる水曜日に向けて、火曜日の17時から18時くらいにやってる。取材したかったら、その時来てみてください」

惹句、看板のコピーについて

「あれはねぇ、僕が考えているんじゃないんです。天から降りてくるの(笑)けっこうギリギリになったりしてね」

「けっこう昔の邦画のコピーとか参考になりますよ」

今後公開予定の映画について「あれ、どんな映画なの」と聞かれたりして、「あなたたちも考えてくれたら聞きますよ。新しい風もね」と仰っていた。

いつか、あの手書き看板に連なる戦慄の惹句を提供できたら幸せだ。

映画惹句師として知られる関根忠郎氏のコピーなども参考にされているのかも知れない。
まあ、あくまで「天から降ってくる」のだけど。

www.amazon.co.jp

ハッテン場として機能していることについて

ーちょっと聞きにくいことなんですが、ハッテン場として使われていることについてはどう思ってますか?

「その土地、その場所にある映画館として特色があるのはいいじゃないですか。他のお客さんに迷惑をかけたりしなければ問題ない。『ニュー・シネマ・パラダイス』って観ました?あの映画は、映写技師と少年の触れ合いの映画だけれど、私の目から見れば自由に映画を楽しむお客さんの映画。あの映画に出てくる客は感情をむき出しにして映画を観ているでしょ。思い思いに楽しんでる。私はあの映画をそういう風に観るんですよ」

確かに『ニュー・シネマ・パラダイス』も、シチリア島の小さな村にあるその村の唯一の娯楽施設を舞台にしていた。
西成で日雇い労働をした人たちが、スカッとしたくてアクション映画を観に国際劇場に来る。
また、違った意味でスカッとしたい人もひっそりと利用する。
その全てを飲み込んだ小屋として国際劇場はある。

 

売店の背後にあるこじんまりした事務所内には、表に出せない情報がいっぱいで写真を撮ることは叶わなかったが、今度は映写室も見せてくれるかも、との言質をいただく。
嬉しいぞ。

タバコを燻らせながら、終始笑顔で突然の来訪を迎え入れてくれた支配人さんに改めて感謝である。

帰り際には入り口まで送ってくださった。
ここで一枚写真撮りゃ良かった。
スカした小屋なんて、しゃらくせーとのパンク精神に溢れた方。
映画館は、土地とそれを営む人が反映されて形作られるのだと思い知らされた時間であった。

 

同じ日のことを綴られたオナキンさんのnoteも併せてご覧ください。

note.com

f:id:stolenthesun:20210507230447j:plain



 

西成で暮らす。62日目 「猩々のような症状」

2021年5月4日。

ゴールデンウィークはウーバーイーツ三昧で稼ぎまくっぞ!

と思っていたものの、すっかり疲れた。
昨日は、早くに眠ったはずなのに、脚部をはじめとした痛みや疲れは残ってっぞ!
もう疲れたっぞ!何もかもだぞ!

f:id:stolenthesun:20210507155356j:plain

f:id:stolenthesun:20210507155406j:plain

100本ノック・経過

昼前に、街に出る。

公園なり、道端なりで佇んでいる方々にランダムで、めちゃぶつけで声をかける「100本ノック」に挑む。

酒によるものか、話が続かなかったり、ガン無視されたり、上手くいかない。
上手くいかないんです。

f:id:stolenthesun:20210507155854j:plain

f:id:stolenthesun:20210507155829j:plain

f:id:stolenthesun:20210507155749j:plain

失意のまま、動物園前商店街を歩き、シャッター商店街と化した現状をスマホで撮影していると、

f:id:stolenthesun:20210507160327j:plain

「何!何撮ってるの!」

と怒鳴られる、

「閉まってる店の様子ですかね。すみません」

「確かにねぇ、やってられないよねぇ」

 

一転、柔らかい口調に変わったオッチャン。
か、オバチャン。
ちょっと、見た目では性別が判断できない。
頭には髪を隠すようにストールを巻き、片手に黒いトートバッグ、グレーのパンツにチェク柄のジャケット、布製の手作りっぽいマスクで口元は見えないが、薄くおしろいを塗っているように見える。ストールで隠れていないもみ上げは白い。

 

「写真好きなの?日常にファンタジーは必要さ」

「そうですね、やってられない毎日ですからね」

「何、言ってるの!若いんだから。前向いて、前を」

 

ゆっくりと歩きながら、話をする。

 

「昔、原爆を落とされたでしょ?知ってる」

「はい」

「本当は大阪に落とされるはずだったんだ。知ってる?」

「いえ。初めて聞きました」

淀屋橋にね。でも、たまたま天気が悪かったから、広島に行った」

「そうなんですか。その頃から、この辺に住んでますか?」

「そーう。ずっと、今いくつかわかる?85。戦争の辛い時知ってるから、今は天国」

「だいぶ変わりましたか?この辺りも」

「どうだろう。変わらないかもね。便利にはなったけれど、みんなその日暮らしだ。私もね」

「今は何が楽しみですか?毎日」

「お金はないから。こうして、街を歩いてる。それだけ」

「今日はどこに行く予定ですか?」

「決めてない。適当に気ままに」

 

上手くすれば、その「気ままな道行き」について行こうと目論んだのだが、その後は陰謀論めいたコロナや戦争への演説にうなずくのみ。

商店街を抜け、新世界に向かう路地を去って行った。

 

「お元気で!また」

「うん。あなたも元気でいてください。もう、会うこともないだろうけど」

 

ここの人たちの二の句は「もう、会うこともない」が多い。
刹那的に生きて、暮らして、なんだか寂しい。
それがこの街のマナーだとしても。

f:id:stolenthesun:20210507161752j:plain

猩々の表情

能に「猩々(しょうじょう」)という演目がある。
酒好きの妖精である「猩々」が乱れ舞うお話。
その猩々の顔が不敵に笑っているけれど、何も考えていないような、その微笑みの源泉を一切探りようのない表情をしていて、妙に惹かれて、東京にいる頃に若松河田にある民芸品店「備後屋」でB品が安く売っているのを見つけたけれど、それでも5000円くらいして買わなかった。

能面は角度や光の照射によって、あるいは見る側の心持ちによって、その相貌を変えるとされるが、「猩々」の面の持つ虚無感みたいなものは別格の気持ち悪さ/素晴らしさがあると思う。

僕には、あいりん地区の道端でカップ酒を飲みながら虚空を眺めている人たちが「猩々」のように見えてしまう。

もちろん僕のパーソナリティや話し出しの拙さが会話を持続出来ない要因であるのだが、打っても響かない「猩々」を相手にしているように思う時がある。

下記画像は、過去のヤフオク出品画像から借りました。

f:id:stolenthesun:20210507163901p:plain

 

夜は、なだぎ武ハリウッドザコシショウの「マネーの虎」のパロディコント動画が面白すぎて、繰り返し見物し、一転すっかり疎くなった社会状況を補完するために、津田大介の「ポリタス」に会員登録し、延々と動画を見て過ごした。

youtu.be

youtu.be

毎年、ゴールデンウィークなぞ、たいした予定もなく過ごしていたのだが、今年に限ってはいよいよ僕も「猩々」のような面持ちで過ごしている。

 

使った金額

ポリタス会員登録:1190円
マウントレーニア・塩バニララテ:106円
リプトン・紅茶ラテ:95円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm:400円

 

所持金

2,158円

西成で暮らす。61日目 「いびいてしまう午前3時」

2021年5月3日。

それは午前3:20のことであった。

日曜は23時を回ってウーバーイーツの配達を終え、天満まで戻り、トランクルームに荷物を戻し、洗面道具と充電設備を持って「快活CLUB」に入り、サービスソフトクリームにデニッシュを絡めて食べ、大便をして、小便をして、歯を磨き、フラットシートルームの明度を少しでも下げん為にパソコンのモニターを消し、スマホSpotifyを立ちげ、“JapaneseBreakfast”を
リピート設定でループさせ、イヤホンを耳に挿し、翌朝7時半にアラームをセットし、1時過ぎに眠りについた。

 

ZzzzzzzzzzzzzZzzzzzzzzzzzzzZzzzzzzzzzZzz

 

…、遠くの方から微かな声がして、肩を揺すられ、薄く目を開けると、そこには快活CLUBのスタッフの女性がいた。
その時間が、午前3:20。

「他のお客様から、いびきが大きいと苦情がきています。お気をつけください」

とのこと。 

 

「気をつけろ!」
と言われても。無理だよう。

一定間隔で左右に揺れている大ギロチンを避けたり、頭上から降りてくる剣山天井の落下を停止するためのスイッチを探したり、傾斜45度の坂道から勢いよく転がってくる大石ころから逃げたりするのならば「気をつけよう」があるのだが、「いびき」は気をつけようがない。 

いびき防止のための鼻リングは嵌めていたのだが、無意味だったようだ。
そういえば、このバカみたいな鼻リングをしたまま店員さんに対応したんだな、さっき。
バカみたい。

漫画喫茶に週末泊まるようになってから、「いつか来る。きっと来る」との予感はあったのだが、ついに来た。
スゲー疲れてっから、太ってるし、睡眠時無呼吸気味だし。
弱った。でも、寝たい。もっと寝たい。ずっと眠たい。

 

スマホで「いびき 防止法」で検索して、「うつ伏せで寝ろ」というサジェスチョンを受けたので実践して、また眠った。

申し訳ない。
また、グースカいびいていたかも。
あーあ、持ち家っていいな。

 

ちなみに、「快活CLUB」のトップ画面からフロントに要望できるフォームがある。

f:id:stolenthesun:20210507132418j:plain

これでチクられたのかな。

「確かにいびきはうるさいですが、だんだん心地よくなってきました。大丈夫です!」

とメッセージしてみても良かったかも知れない。

強風のもと稼働する

天気は落ち着いたが、今日は横風がヒドい。

デブなのに、デブなりに風を受ける面積は大きいから、自転車ごと持っていかれる、そんな強風。淀川越え案件もあり、長い橋を渡るのに難儀した。

 

今日の宿は「パークイン」を楽天トラベルから予約していたので、夜までたっぷり稼働するつもりであったが、やってられないレベルの風。

なんばの自転車たちも横倒し。

f:id:stolenthesun:20210507133336j:plain

掲揚された日の丸も翩翻しがち。

f:id:stolenthesun:20210507133430j:plain

昼を回ってから、風は弱まったが一度低下したモチベーションは上がらず。
一度、トランクルームに戻り、読みかけの本を持ってきて、公園にて読書なぞ。

繁華街の商業施設は休業している所も多い。
大坂なおみを育てたテニスコートがあることで高名な西区の靱公園の芝生に寝転んで、読書する。
公園内は、フェス並みの人出であった。

f:id:stolenthesun:20210507133914j:plain

結果、9時〜16時までの稼働で、¥6,017也。
月曜とはいえ、祝日の売上としては低調であった。

f:id:stolenthesun:20210507134313j:plain

臭うのか俺は、匂うのか

西成の宿にいても、漫画喫茶にいても、ときおりムッとするようなワイルドな臭いか匂いに接することがある。

何日も汗にまみれて過ごした結果なのか、体臭なのか。

西成暮らしを始めてから、自分からもそんなワイルドが発せられていやしまいか?
という危惧を喫緊に感じる。

「自分の身体が臭い」
ということにセンシティブであろう。
とは思っているのだが、現実的にこれからの季節は難しくなってくるだろう。

今日も、ふと振り返る動きをした時に、1秒前の自分が匂った気がして、気になって仕方がなかった。
漫才ブーム時代のツービートのネタに、ウンコの匂いを防ぐ方法として、
「ウンコを自分の鼻に突っ込む」
というのがあったが、臨界点を過ぎてしまえば、とめどなく堕していくだろう。

いびきは直ぐには改善出来ないだろうが、匂いに関しては防ぐ方法はある。
仕方がないのは言い訳に過ぎない。
洗濯、洗濯、風呂、風呂、歯磨きのリズムを維持していきたい。

そして、もしも僕が臭かったなら
「お前、クセーんだけど」
と忌憚なく言ってほしい。
ものすごく落ち込んだ後、せっせと洗うから。

 

溜まっていた洗濯物をコインランドリーで処理し、夕方には西成まで自転車移動。

f:id:stolenthesun:20210507140210j:plain

「パークイン」に投宿し、気付いたら、眠ってしまっていた。
21時で風呂場が、女性用に切り替わる直前の時刻であったので慌てて風呂に入り、当座のワイルド臭を防ぐ。

とにかく眠く、直ぐにまた床に就く。
きっと盛大にいびきをかいていただろう。
申し訳ない。許してたもれ。

f:id:stolenthesun:20210507140227j:plain

f:id:stolenthesun:20210507140233j:plain

f:id:stolenthesun:20210507140244j:plain




使った金額

宿泊代:3800円
漫画喫茶宿泊代:2220円
駐輪場代:150円
コインランドリー(洗濯+乾燥):1100円
全粒粉チキンと卵:346円
スパイシーチキン:157円
牛肉たっぷり特製カレーパン:149円
豚肉と筍の春巻:190円(二個分)
からあげ棒:276円(二個分)
串フランク:212円(二個分)
ごま油香る!五目春巻:322円
関東栃木レモン蒸しケーキ:138円
黒豆せんべい醤油味:106円
プリングルス春季限定:149円
酢漬けイカ:216円(二個分)
森永・大粒ラムネ エナジードリンク:168円(二個分)
冬のくちづけビッテ:138円
グリーンダカラ:160円
烏龍茶 煌:117円
クラフトボスラテ:162円
レジ袋:3円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール12mm:400円

 

所持金

3,949円

西成で暮らす。60日目 「日本を支えてくれている人」

2021年5月2日。

日曜日になった。

毎日が日曜日と言ってしまって過言ではない日々を送っているが、世の中的にも大々的に日曜日、ゴールデンウィーク否デスウィーク真っ只中。

「パークイン」は今日まで。
日曜は、よく挨拶する掃除のお姐さんではなく、違う女性が担当されていた。
ちょうど、部屋内で歯磨きをし始めてその最中に廊下で出くわし、

「おはようございます!」

との言葉に目礼しか出来なかったので、口をゆすいでから、改めて挨拶し直す。

「すみません。おはようございます」

「あっ。どうも」

ゴールデンウィークは忙しいです?」

「いえ。そんなに変わらないですよ」

 とのこと。

 

「お世話になりました!」

「ハイ!行ってらっしゃい!」

f:id:stolenthesun:20210506185901j:plain

f:id:stolenthesun:20210506193301j:plain

週給10万

快晴の日曜日。

配達依頼殺到、という具合にはならなかったが、いつものスタイルのように配達完了後に都市部へ戻るというムーブをせずに体力温存で働いた。

それでも、日曜ならそれなりの報酬は可能。
9時半〜23時まで稼働し、インセンティブを含めて¥22,858也。 

f:id:stolenthesun:20210506190752j:plain

今週は四日間稼働して、¥71,835になった。
ウーバーイーツだけで、週給10万は可能だと思える。
やんないけれど。

f:id:stolenthesun:20210506190806j:plain

異国で稼ぐ

有名な話だと思うが、ウーバーイーツ注文可能店には「ゴーストレストラン」が複数存在する。

「現地の味わい、タピオカ専門店!」「魚介が新鮮!海鮮丼専門店」とかウーバーイーツ注文アプリでは表記されていても、実際に調理している場所はいくつものレストラン名義をかたったひとつの厨房だというケースは少なくない。
「専門店」とかいうコピーに騙されないでね、お客さん。

 

ピックアップに配達員が赴く際に「タピオカ専門店」とアプリ上で表記されていても。実際の店舗は薄汚れた雑居ビルの一角だったりし、看板すら出ていないこともある。
「ここでホントに料理なんて作っとるんかいな」
と訝しんで引き戸を開けると、その中はキッチンスペースにくわえ煙草のアンちゃんが数人というケース。

今日も、「宇都宮直送!本場の餃子専門店」と謳った店舗がゴーストレストランであった。
僕は何度かピックアップしたことのある場所だったので、すぐにわかったが、初見配達員泣かせの案件。

真新しいウーバーバッグを担いだアジア人に見える青年が、先ほどから周辺をウロウロしている。多分、レストランの場所がハッキリしないのだろう。

「どこですか?餃子?牛タン?看板ないけれど、多分ここですよ」

「合ってますか?」

青年が見せてきたスマホの画面には「焼きスパ専門店」とある。
そう、このゴーストレストランは餃子も、牛タンも、焼きスパゲッティも、その全ての専門店であるのだ。ホント、専門ってなんなんだ。

「合ってます!わかりにくいですよね」

青年は僕に一言礼を告げ、料理がまだ出来ていないと待たされる形になった。

 

「お国はどちらですか?」

「はい。ベトナムです」

「ウーバーやって間もないんですか?」

「はい。先週から、だからまだ慣れてない」

「難しいよね。こういうレストランは見つけられないです」

「ちょっとまだ漢字が苦手だから。ありがとう」

 

笑顔が爽やかで、その300分の1でも分けて欲しいくらい爽やかであった。

「今日は稼げましたか?」

「うん。そうですね、一万円は超えてます」

「スゴイね。もうベテランですよ。普段は学生さんですか?」

「いえ。『鳥貴族』で働いていたんですけど、今休業してしまったから」

「ああー。いつまでですか?」

「多分、今月は無理かも。宣言がきっと伸びますから」

「じゃあ、その間はウーバーですね。頑張りましょう」

 

一足先に料理を受け取った僕に、「ありがとうー」と何度もお辞儀してくれ、見送ってくれた。
どこに行っても、「底辺」と呼ばれる労働現場にはアジア人がいる。
彼らのおかげで日本人は日々の利便を享受している。

ケツが限界

尾骨だか、仙骨だか自転車のサドルと接する骨が痛い。

まだまだ、太もももふくらはぎも健在だが、ケツがなぁ。

夜の公園で泳いでいる鯉のぼりを眺めてから、スーパーに行き、「快活CLUB」にイン。

ゴールデンウィークってなんなんだろうなぁ、一体。

f:id:stolenthesun:20210506193816j:plain

f:id:stolenthesun:20210506193826j:plain

 

収入

41,067円

 

使った金額

貯金:30,000円
交通費:230円
駐輪場代:150円
焼きそばドッグ:200円
明太子フランス:151円
オレンジドーナツ:95円
おにぎりQ・鶏そぼろ:27円
おにぎりQ・かやくごはん:27円
菓子パン・ごくマヨ枝豆チーズ:171円
菓子パン・ガーリックバターフランス:171円
お惣菜・ウインナー&ポテト:161円
お惣菜・北海道産カレイの唐揚げ:161円
おつまみチューリップ唐揚げ:215円
チュロッキー:149円
クーリッシュ・ベルギーチョコレート:84円
森永・大粒ラムネ エナジードリンク:168円(二個分)
明治・果汁グミ マスカット:84円
明治・果汁グミ パイン:84円
瀬戸内づくしハイチュウ:108円
ジョージア香る微糖:67円
バナナラテ:106円
タバコ・アメリカンスピリットメンソール9mm・5mm:800円

 

所持金

14,628円