暮らす西成~大阪市西成区あいりん地区に潜伏する

住所不定無職。大阪市西成区のあいりん地区で働きながら生きていこうと思います。アンダーカバーか、ミイラ取りがミイラになるか。

新潟で、アートとローカルフードに出会う旅 ①

2021年8月26日,8月27日

福岡からヤンエグが、夕刻には来阪するので、その前にひと稼ぎを目論む。

「パークイン」を8時には出る。
麗しの冷蔵庫よ、さようなら、そしてありがとう。
冷えた飲料って、こんなに冷えているものなのだね。

f:id:stolenthesun:20211026194829j:plain

f:id:stolenthesun:20211026194837j:plain

ランクルームに寄り、準備をしたのち9時にはウーバーイーツ配達スタンバイ。

 

平日なので、爆裂なペースではないが、ゆるゆると配達依頼をこなす。

昼には、今夏、喉湿潤最適化固形物 ローソン100「みかんバー」を食べながら、流れた汗を人工的な果汁に置き換える。

f:id:stolenthesun:20211026200114j:plain

いつもの野宿の寝床には、常連の宿無しさんがいる。
後日、少し会話する機会を得たのだが、雨の日はやはり厄介なものだという。
そして、当然今日のような厳しい日射しもまた厄介。
そのどちらの天からの脅威にも、傘がロンギヌスの槍となる。
収まれ!酷暑。

f:id:stolenthesun:20211026200900j:plain

f:id:stolenthesun:20211026200909j:plain

文豪の面影

天神橋商店街近くのマンションに配達。

オートロックの解除をお客にしてもらい、エントランスを通過する際に、ついでに入館する輩が居るのはよくあることだが、この日も大きなカートを引きずったホームレス然としたオバチャンが一緒に入館。
客先まで配達して、退館する際に、くだんのオバチャンに話しかけられる。

「ありがたいね、クーラーってね」

「そうすね。高いマンションは、建物中冷房効いてるからスゴいすよね」

「私ね、さっきのアンタみたいなのに便乗して、色んなマンション入って涼んでるの。もう、外に居るのは限界なの」

「もう、夜も昼も暑いから。このマンションは、そこにトイレもあるし快適なんじゃないすか?」

「うん。ありがとう。もう少し涼んで、住民に怒られないように、しばらくしたら出ていくね。お仕事頑張ってね」

生きているだけで褒めてあげたい。
夏場には、いつもそう思う。
70代くらいに見える上品そうなオバチャンの笑顔を見て、実家の母親を思い出す。
暑さで死ぬなよ、コロナでも死ぬなよ、オバチャンも母ちゃんも。

 

そのマンションを裏口から出ると、

川端康成生誕の地

というモニュメントが。
なんと、アンタこの辺の人かい。
2年近くこの辺に住んでいたが、こんな碑にはついぞ気が付かなかった。
ウーバーイーツなぞやって、細かく路地を行き過ぎることで見つけられる物もある。
康成は一度も通読したことがないが、ハンマーヘッドシャークみたいな形のモニュメントである。新築マンションに呑み込まれるような形で、ようやっと存在してる。
大事にしてあげてください。ハンマーヘッド

f:id:stolenthesun:20211026202854j:plain

f:id:stolenthesun:20211026202903j:plain

喫煙可能喫茶の可能性

そこそこの稼ぎを得て、トランクルームで旅出の準備。
今晩は、貧者の味方高速バスで移動である。

f:id:stolenthesun:20211026203712j:plain

f:id:stolenthesun:20211026203717j:plain

f:id:stolenthesun:20211026203726j:plain

待ち合わせした大阪駅前第一ビル内の喫茶店「キング・オブ・キングス」へ。

f:id:stolenthesun:20211026203813j:plain

f:id:stolenthesun:20211026203821j:plain

f:id:stolenthesun:20211026203910j:plain

以前も訪れた「喫茶マヅラと内部で繋がっている、もうひとつの喫茶店
コロナによって酒類提供は控えられているが、こちらはミッドセンチュリー感とスペーシーな内装でウイスキーを一杯放り込むのが相応しい雰囲気だ。

nishinari-lives.com

f:id:stolenthesun:20211026204748j:plain

f:id:stolenthesun:20211026204757j:plain

アイスクリームソーダ(ヴァイオレット)
を注文。

500円もするー!が、やがてやって来る福岡の社長に奢ってもらうから、無問題。

f:id:stolenthesun:20211026205016j:plain

お店のママさんによれば、ピアノの生演奏もしばしば行われるという。
いい店だ!
ちょっとデザイン優先が過ぎて、椅子座りにくいけども。良い喫茶店

f:id:stolenthesun:20211026205239j:plain

f:id:stolenthesun:20211026205248j:plain

f:id:stolenthesun:20211026205257j:plain

f:id:stolenthesun:20211026205302j:plain

f:id:stolenthesun:20211026205309j:plain

f:id:stolenthesun:20211026205315j:plain

 

当然のように、待ち合わせ時間を軽視してやってこない博多の人。
だが、今晩は割と定刻通りにやってきた。
数日、日本全国を飛び回っていたようである。お疲れ様ですね。

ここに来て、もう数時間後には高速バスが発車するというのに、「他にいいルートあるんでない?」とほざき始め、新潟行きのバリエーションルートを思案するが、高速バスのキャンセル料を鑑みて収束。

何を今更感と同時に、こうやってフレキシブルに考えられる人間って良いのかもな、とも思う。
そして、何度も「この高速バス代は、俺の奢り」との言葉を奴に流し込む。
だから、その他の出費はお前に任せた!という意味であったが、馬耳東風の感。

f:id:stolenthesun:20211026210313j:plain

寂しい人通りの北新地を抜け、高速バスターミナル近くの居酒屋で晩飯。

居酒屋の荷物入れバスケットがひとつしかなかったので、奴のカバンをそこに入れて丁重に扱い、僕のバックパックは、誰がウンコを踏んだのか、誰がゲロを撒き散らしたのか不明の居酒屋の床に直置きしていたことは、触れておきたい。

普段のライクア物相飯と異なり、熱々とかキンキンといった形容が似合う居酒屋メシを、奴の奢りで食う。

f:id:stolenthesun:20211026210256j:plain

新潟へ向かう

22時前に新潟行きのバスは発車。

明日、9時前には新潟着となる。

福岡のヤンエグとMAPのリストを共有し、新潟での訪問地を決めるのだが、奴の希望訪問地の意識の高さと、僕の選ぶ希望地の食い意地の張り方が衝突して、妥協点を見出すのが難しそうである。

新潟=越後つながりで、Spotify伊平たけを聴きながら、やがて眠った。

open.spotify.com

f:id:stolenthesun:20211026212031j:plain

f:id:stolenthesun:20211026212036j:plain

バスセンターのカレー

翌朝、新潟。

早速、共有リストの中から、僕の食い意地方面のリストを埋めるべく、新潟人のソウルフードと呼ばれる 万代そば「バスセンターのカレー」を求めて歩く。

バスセンターのカレーなのに、高速バスはバスセンターには到着しなかった。
バスセンターは意外と遠かったし。

f:id:stolenthesun:20211026212607j:plain

f:id:stolenthesun:20211026212614j:plain

このスパイスカレー、サラサラカレー全盛時において、昭和の香りがドクドクするこの黄色いカレー。しかし、粉っぽい昭和の口触りは克服しており、郷愁だけでなく胃袋と味覚も存分に満たしてくれる逸品であった。

f:id:stolenthesun:20211026213423j:plain

f:id:stolenthesun:20211026213323j:plain

f:id:stolenthesun:20211026213330j:plain

f:id:stolenthesun:20211026213338j:plain

f:id:stolenthesun:20211026213346j:plain

f:id:stolenthesun:20211026213355j:plain

奴も、僕も、完全に舌がバカなのに、こういった庶民的なメニューにはうるさいという大衆メシ判定員の側面があるのだが、バスセンターのカレーは、醸し出す情緒も含めて美味かった。

駅や港、そしてこのようなバスセンターといった旅立つ場所、別れの場所でありながら、通勤通学としても使われる日常の場所で育まれた味に間違いはない。
少し、食い過ぎて、一日中カレーの芳香をたたえたゲップをかましていたが、それこそカレーの醍醐味であろう。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2021

今回の旅の大きな目的は、「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2021」を訪れること。
昨日、聞いたんですけどね。いいと思うよ。

レンタカーを借りて、新潟県南部を目指します!
僕は、一切運転はしないけど。頑張れ、社長。

 

途中、風呂を探すが時間が早過ぎて開いている銭湯が見つからない。
ゴミ焼却場に併設されているお風呂に行くが、開場まで1時間あるとのことで、断念。
Google先生はしばしば嘘をつく。

f:id:stolenthesun:20211026215016j:plain

残念ながらというと失礼なほど、整った施設であったが、全国チェーンなので旅情的には残念ながらという他ない「極楽湯」で湯浴み。

地元、塚田牛乳フルーツ牛乳で喉を潤す。

f:id:stolenthesun:20211026215408j:plain

f:id:stolenthesun:20211026215416j:plain

運転しない人のナビは…

f:id:stolenthesun:20211026215737j:plain

車内の助手席に陣取り、カーナビゲーションシステムに全てを委ねたかったのだが、まさかのカーナビ無し車両。

成り行き、僕のナビゲーションが発動するのだが、

「ああー、そこで右。いや、一本先か…」

みたいなポンコツナビゲーションを連発させてしまい、奴に怒られる。

「運転しないヤツのナビってクソなんだよなぁ。急に『そこ入って!』とか言うでしょ?運転しないからドライバーの感覚がわかってないんだよね」

いいや、違う。
僕は「運転しない」のではなくて、「運転できない」だけなのだ。普通自動車免許は所持しているのだ。
結果、同じだが。

ただ、Googleマップの表示と、実際の走行のスピード感がシンクロしない時って意外に多いですよね。だから、判断が遅くなる。でしょ?
世界中の、助手席キッズに賛同を求めたい。

道中車内では、最近僕が感銘を受けまくっている現代短歌の話などで、一方的に僕のみ盛り上がる。文学的なエクリチュールに疎い社長に、現代短歌の魅力を伝えることに必死になってしまって、何度もナビをしくじる。など。

 

お昼には、越後湯沢付近に着き、「かま炊きめしや こめ太郎」で食事。
ろくにナビゲーションも出来ないくせに、一丁前にお腹だけは空くんだなぁ、キノ。

f:id:stolenthesun:20211026221036j:plain

f:id:stolenthesun:20211026221040j:plain

f:id:stolenthesun:20211026221045j:plain

f:id:stolenthesun:20211026221053j:plain

清津峡を見る

奴の希望訪問地である「清津峡渓谷トンネル」へ。

なんだよ、トンネルかよ!
と思っていたのだが、なかなか面白い景観と作り込みであった。
渓谷美の安全な鑑賞と、その後の現代美術的装いの導入によって観光地として再生を果たしたトンネル。

ただ、いつの間にかインスタグラマーと成り果てた奴の入念で渾身のシャッターが連写されるので、待ち時間が多い。早う、撮れや。

風化してしまう遺構や、その土地に根付いてきたローカルな慣習や空気を再生させる、というのは奴が取り組んでいる仕事のひとつでもあるので、熱心に見ている。
熱心なのは大変良いことだが、インスタ映えは、もういいじゃないか。

f:id:stolenthesun:20211026222144j:plain

f:id:stolenthesun:20211026222235j:plain

f:id:stolenthesun:20211026222505j:plain

f:id:stolenthesun:20211026222553j:plain

f:id:stolenthesun:20211026222422j:plain

f:id:stolenthesun:20211026222707j:plain

観光地といえば、お土産Tシャツをチェックせなばならない。せねばならぬことなど、この世にはない。

観光地的な「いなたさ」がマブく昇華していることを希求したが、残念ながら購入するほどのエモーションは生まれなかった。

f:id:stolenthesun:20211026222947j:plain

現代美術館へ行き、重力を感じる

大地の芸術祭トリエンナーレの作品は、新潟県内の各地、各所に点在しているので、途中あらわれる看板を頼りにいくつか鑑賞。

こうして、街を里を縦横無尽に動きながら、アート作品を見つけていく宝探し的な行動が楽しい。相変わらず竹下ナビゲーションシステムには不具合が多かったが。

f:id:stolenthesun:20211026223643j:plain

f:id:stolenthesun:20211026223651j:plain

なんかカップルでアートを楽しんでいる勢もいて、チェッとなる。
アートをつまみにデートするなんざ、最低だ。
いや、最高だ。

f:id:stolenthesun:20211026223933j:plain

里山を降りて、十日町の中心部へ。

「越後妻有里山現代美術館 MonET」を訪れる。

f:id:stolenthesun:20211026224144j:plain

f:id:stolenthesun:20211026224149j:plain

建物の前景のプール状になった景観が早くも見所。

f:id:stolenthesun:20211026224347j:plain

f:id:stolenthesun:20211026224352j:plain

社長。
撮るよねー。早くしようよねー。

f:id:stolenthesun:20211026224429j:plain

内部の展示も数は限られているが楽しかった。

f:id:stolenthesun:20211026224630j:plain

f:id:stolenthesun:20211026224634j:plain

f:id:stolenthesun:20211026224638j:plain

なかでも、
名和晃平 『Force』
が楽しく。ずっと眺めてしまう。

美術館に行くとよくやってしまう行動形態であるが、一度ひと通り流して観てから、気になった作品に戻るパターンを発動させ、しばらく上から落ちてくる黒いオイルが底に溜まって馴染んでいく様子を無になって眺める。

本当に無になったような気になる。
もう、どうだっていいような気になる。
作品の前に立って、そのアート以外のことは考えられなくなる瞬間がある。
こういう気分になるために、美術館に行くような気がする。

f:id:stolenthesun:20211026225442j:plain

f:id:stolenthesun:20211026225447j:plain

f:id:stolenthesun:20211026225454j:plain

f:id:stolenthesun:20211026225741j:plain

ミュージアムショップで、名和晃平の作品集を見つけたが高価な本であったので、購入は断念し、『Force』の解説の部分だけを盗み読み。

こういうアートを無になって眺めたあとに、答え合わせをする行為をやめたい。
映画を観たあとに、ネットで他の人のレビューや解説を読んで確認するような、自己を放棄する、自分の「無」にキャプションをつけるような行為。

「さっきの、あの黒いオイルが落ちてくるヤツどういう意味だと思う?」

社長に、クイズを出すことで、自分の卑しい行為をエンタメ化する。
正解は、「重力を表現した作品」だそうだ。

知っても詮無いし、「作品の意味」とか知ろうとするくだらない意識が邪魔。
自分の味わった「無」を汚さないように自戒する。

 

館外に出て、前景の水に足を浸し、ボーッとする。

f:id:stolenthesun:20211026230713j:plain

隣接した地産を扱うお土産ショップで、

きのこ汁の缶詰

を見つけ、「これはお土産に最適!」と思ったのだが、この先どっかで買えるだろうとたかを括って、購入しなかったのが悔やまれる。新潟市内では発見出来なかった。

f:id:stolenthesun:20211026231246p:plain

※株式会社ゆのたにHPより

このローカル感、もらった人が完全に迷惑するであろうボリューム。
絶対に買うべきであった。また、生きていたら会おう。

「またぎ汁」も最高。

f:id:stolenthesun:20211026231411p:plain

※株式会社ゆのたにHPより

その後、「棚田が見てぇ」という奴の希望により、星峠へ。

山あいの曲がりくねった道を進みながら、地元ラジオの繋がりが悪くなってしまい、放送されていたスキマスイッチ全力少年』が途中で切れてしまったので、僕が引き継いで大声で歌っていたら、またナビゲーションを間違える。

棚田なぞ、僕の生まれた田舎ではありきたりな光景であったのだが、こうして全く別の土地柄で眺める棚田も良かった。

f:id:stolenthesun:20211026232239j:plain

f:id:stolenthesun:20211026232247j:plain

f:id:stolenthesun:20211026232255j:plain

人工の極みのような現代アートと、自然と人事の融合物である棚田を、間を置かずに眺めて感慨深かった。その振り幅に。

奴はまた、Instagram全力少年であった。
早く行こーよ。

f:id:stolenthesun:20211026232536j:plain

ローカルフード「イタリアン」を食う

新潟のローカルフードを検索すると、焼きそばの麺にミートソースをかけた「イタリアン」がヒットする。

今日の夕飯はこれにする。
満場一致で決定し、モールのフードコートへ向かう。

「イタリアン」には二派が存在するようで、
みかづき」という店と、「フレンド」という店があるようだ。
閉店時間を調べながら、本日間に合うのは「フレンド」であることが判明。
夜の新潟をドライブ。
イタリアンにまつわるアレコレを検索していたら、竹下ナビゲーションシステムがバグって、また道を間違えたり。したり。

f:id:stolenthesun:20211026233559j:plain

f:id:stolenthesun:20211026233607j:plain

f:id:stolenthesun:20211026233614j:plain

「フレンド」のイタリアンは餃子をくっつけて食すのが定番のようである。

ここで問題が発生、「ああ、車に財布置いてきたわ」と奴がのたまうので、仕方なく奢ってやる。一生「フレンド」を奢ったことは言い続けたい。

f:id:stolenthesun:20211026233859j:plain

変に美味かった。

「変に」というのは失礼かもしれないが、カリッと焼かれた太麺に、ミートソースというよりはトマト感の薄い化学調味料的ソースが絡まり、部活終わりに食ったら完璧な味わいである。

この「絶品!」とかではない、「いつもの」感がまさにディス・イズ・ローカルフード。
食ったそばから「また、食いたい」という感情が芽生える味であった。

明日は、もう一方の雄、「みかづき」を攻めよう。
今度はお金は出さない。

ローカルアイス「もも太郎」

長岡市内に入り、「ホテルニューグリーン長岡」に投宿。

まさかと思われるだろうが、そして僕もまさかとは思わなくもなかったのだが、宿泊費も社長持ち。あざっす!寝まっす!
とか言いながら、ホテルを出て、夜中に、隈研吾「アオーレ長岡」を見物し、地元スーパー「原信」でローカルアイスを見つけたので購入、即完食。

f:id:stolenthesun:20211026235132j:plain

f:id:stolenthesun:20211026235140j:plain

f:id:stolenthesun:20211026235148j:plain

セイヒョー「もも太郎」

大きめの氷のザラつきが食べ応えにつながり、酸っぱみのある桃の風味がほのかに漂う。
つくづく、知らない土地のスーパーマーケットはワンダーランドである。

明日もまた、大地の芸術祭トリエンナーレ2021を攻めることになった。
お疲れです、今度は本当に寝まっす。

 

収入

8260円

 

使った金額

交通費:180円
書籍代:1210円
諸経費:5470円

 

所持

18,708円

【西成のお店】しぼりたて豆乳と即席麺へのお湯。

現在の食生活に、何が不足してるか? 豆腐ではないか。
大豆よこせ。

西成に来る前には、週2ペースで牛乳1ℓパックを飲み干していた気がする。
しかもなんと贅沢なことに、パスチャライズ牛乳なぞという低温殺菌の美味しいミルクに舌鼓を打っていた。遠い過去だな、贅沢していたあの頃。パスチャライズでこさえるフルーチェとか最高だった。今年の夏は、フルチェらなかった生涯初の夏であったかも知れない。
もう一生フルーチェを囲んだ食卓で、笑顔あふれるパーティーとかしないんだろう。
そんなパーティーしたことはないが。
大豆をよこせ。

そこで、井上商店へ。

f:id:stolenthesun:20211025163835j:plain

豆乳を飲む

このお店の前を通るたびに、視界に入ってくる魅力的な文字列。
「しぼりたて豆乳」
しぼって、すぐ。もうしぼった、そばの豆の乳である。
安直なイメージとしては、乳牛の乳首にしゃぶりつく勢いであるが、豆乳とはそうしたモノではない。
ああ魅力的。

f:id:stolenthesun:20211025162016j:plain

朝の早いであろう豆腐店
昼を少し回った時間帯であるが、店内に入るとおかみさんは洗い物をしており、店じまいが近そう。

「こんにちは。豆乳ありますか?」

洗い物の手を止め前かけで濡れた手を拭い、冷蔵庫から豆乳がなみなみに詰まった容器を出してくれ、

「今、飲まれる?」

「はい、すぐ飲みます」

紙コップに注いでくれる。
100円玉をおかみさんに渡す。

f:id:stolenthesun:20211025162634j:plain

f:id:stolenthesun:20211025162642j:plain

大豆だなぁ、大豆を感じる。

ソリッドで喉越しにキレがある。
アルコールよりもよっぽど美味い。
ああ、フルーチェ食べたい。牛乳多めでゆるく作ったフルーチェをゴクゴク流しこみたい。
フルーチェよこせ。

軽くお話しを伺いたかったのだが、おかみさんは忙しそうに後片付けを進めておられる。

「美味しいですね!」

軽くうなづいたおかみさんの微笑みをもらって、退散。
今度の労働のあとには、井上商店のしぼりたて豆乳で決まりだ。
フルーチェは作りたいけれど、器が無い。器を常備する器のない男である。
ちなみに豆乳でフルーチェを作ると固まらない場合がある。気を付けてください。

f:id:stolenthesun:20211025163815j:plain

お湯をもらう

あいりん地区に戻り、昼メシを探す。

そういえば、また「しぼりたて牛乳」の貼り紙を見かけたときのような記憶が蘇る。

「ラーメン」

の文字列。

f:id:stolenthesun:20211025164327j:plain

違った。

「ラーメン室」

だった。

 

こちら、「ふるさとの家」は、ホームレスの人たちに憩いを提供してくれている。

2階には、自由に出入りできる部屋や、無料で散髪してくれるサービスもある。

f:id:stolenthesun:20211025164927j:plain

f:id:stolenthesun:20211025164934j:plain

こちらでも散髪してもらわにゃならんなぁ。
髪が伸びるスピードと、散髪してもらいたい欲求のバランスが整わない。

 

nishinari-lives.com

 

写真を撮っていると、シスターに「おっちゃんらの顔は撮らんといてな」と話しかけられる。
すみません、承知です。

 

ふるさとの家、一階の「ラーメン室」を利用するために、ラーメンを買いに行く。
ラーメン室でラーメンを食べないで、なにがラーメン室か。

商店街の「田中米穀店」にて、120円で、
AKAGI 中華そば を購入。

「お箸は5円いただくけど、どうされます?」

きっと、割り箸は「ラーメン室」にある。と思う。
5円節約成功。

f:id:stolenthesun:20211025170437j:plain

f:id:stolenthesun:20211025170445j:plain

f:id:stolenthesun:20211025170452j:plain

 

「ラーメン室」

f:id:stolenthesun:20211025170708j:plain

奥には、自由に使えるガスコンロがあるので、備え付けの鍋に水を注ぎ火を点ける。

f:id:stolenthesun:20211025170818j:plain

沸騰待ち。

と、右手を見ると、オッチャンがお湯で作るアルファ米に直接蛇口からお湯を注ぎ入れているではないか!

おお、直でお湯いけたんかい。

「そこなら、直でお湯いけるんですね」

「そうや、沸かさんでいいんや。カップ麺やろ?」

f:id:stolenthesun:20211025171046j:plain

ガス火は消して、鍋をゆすぎ戻す。
今度、ガスコンロ借りる時は、袋麺を茹でる時だ。

懸念点であった割り箸も、ある。
ありがとうございます。

f:id:stolenthesun:20211025171243j:plain

f:id:stolenthesun:20211025171312j:plain

コロナ対策のパーテーションで仕切られたスペースで黙食。
一蘭の味集中システムを思わせる趣である。

f:id:stolenthesun:20211025171708j:plain

f:id:stolenthesun:20211025171723j:plain

雨の日、疲れた日、寒い日、誰かと話したい日。
そして、ラーメンを作って食べたい日。
生きてりゃ色々ある。

こんな場所があることに感謝したい。

f:id:stolenthesun:20211025171908j:plain

f:id:stolenthesun:20211025171919j:plain

 

あいりん地区から「花畑」が消えた。

西成あいりん地区には通称
「花畑」
と呼ばれるフェンスに囲まれた緑あふれるゾーンがある。

それは、大阪メトロ堺筋線9番出口の階段を登り、右手の阪堺線高架を潜るとあらわれる三角州状の土地。

f:id:stolenthesun:20211025143429j:plain

f:id:stolenthesun:20211025143403j:plain

「花畑」
とは、菜園として色とりどりの植物を実らせた状態を指すが、同時にこの場所に花を植えている主が、ぬいぐるみやメッセージを書いた看板を飾って、いわゆる電波の香りも漂わせていることによる「お花畑」的な意味合いも含んだ呼称だろう。

f:id:stolenthesun:20211025143420j:plain

f:id:stolenthesun:20211025143440j:plain

f:id:stolenthesun:20211025143340j:plain

この画像は、昨年の夏に撮影したが、カメラを構えていると突然ミニオンやドラちゃんが動き、驚かされた。

フェンスの中を覗くと、ぬいぐるみに繋いだ「てぐす」を引っ張って、ミニオンを自在に動かすこの「花畑」の主であるオッチャンと目が合い、彼は朗らかに笑っていた。

 

あいりん地区内にあっても、カオティックこのうえないこの「花畑」は、この地を訪れた多くの人が紹介している。

ameblo.jp

blog.taisukedouga.jp

nishinari-hotel.hatenablog.com

ポン酢さんのブログ『底辺サバイバー』
には、「花畑」が住民によって守られた経緯が紹介されている。
なるほどです!

 

西成に通っている頃は、地下鉄を利用していたため「花畑」をチラ見しながらあいりん地区に進入していくルートをよく通っていたのだが、西成暮らしを始めるようになって、「花畑」の存在を物珍しく感じなくなっていた。

ので、確認していなかったのだが、この間よくよく眺めると、消えていた。
「花畑」
は消失していた!

f:id:stolenthesun:20211025150806j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150813j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150819j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150824j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150833j:plain

 

かつてこの「花畑」のカオスでファンキーな光景をコントロールしていた主はどこに行ったのか?

美しく咲いていた花々の名残りみたいな朝顔の紫はかろうじて味わえるが、コロナへ立ち向かう気概あふれた手書き看板も、壁沿いに積み上げられた空き缶も、突然動き出すキャラクターぬいぐるみも、跡形もない。

ただ、夏を経て盛大に生い茂った草花を管理する人はもういないのか。

 

花畑の向かいにある酒類自販機の奥、チューハイの缶を補充していた方に話を聞いた。

「ここって、前までぬいぐるみとか、キレイな花とか、飾ってましたよね?」

「ああー、もう半年くらい前かなぁ。市の役人が来て全部どかしてもうたんや。そないなことせんでもエエのにな」

「そうなんですね。あのオッチャンはどうしてるんでしょうね?」

「どうなんやろな、そこまでは知らんけど。とにかく、バシャーっといっぺんに捨ててしまいよったな、役人連中が。正直ありがたかったんやけどな、この辺の奴らみんな空き缶とかポイポイ捨てよるやろ?それをみんなあのオッサンが片付けてくれるし、花もなカラフルで見栄え良かったやろ」

「まあ、厳密に言えば行政の土地だから、仕方ないんですかね」

「大目に見られてきてたんやけどな、なんや知らん急にやりよったな。それぐらい許したれ!と思うわな、ホンマ」

 

かくして、あいりん地区の「花畑」はすっかり消え去った。

f:id:stolenthesun:20211025150842j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150847j:plain

f:id:stolenthesun:20211025150852j:plain

この場所は、ある種の善意が産んだお花畑であり、善意によって守られてきた景観であったはずだ。役所もなんか他にやることあるんちゃうかなぁ、とか。

街場は、いつも流動的で、ゆっくりと変わっていくものだろうが、半年も気が付かなったのか。不明を恥じる。
おそらくは、生きがいを感じながら「花畑」を形作ってきたオッチャンが、今どうしているのかはわからない。どこかで出会えたら、話を聞いてみたいひとりである。

f:id:stolenthesun:20211025153746j:plain

西成から遠隔地へ、期日前投票する。

参政権を使う

第49回衆議院総選挙の投票日が、来週10/31に近付いた。

ちなみに僕は、選挙というか開票速報をテレビ観戦するのがガキの頃から好きで、総選挙の翌月曜日は、たいてい仮病を使って学校を休み、前日の寝不足を解消したものである。
その大きさに関わらず、自分に投票権がある選挙には押し並べて参加してきたので、今回も納税義務と引き換えに、立候補者の生殺与奪権を行使できるオープンゲームに参加しないのは訳にはいかない。参加したゲームでなければ楽しめない。

毎回の投票行動は、納得した上で行使しているが、一度アントニオ猪木を擁した「スポーツ平和党」に投票してしまった事は僅かに後悔しておる。あの頃は、プロレス者の必須図書であった週刊プロレスも猪木推しだった。これにより、偏ったメディアばかりに接していてはいけないのだな、というメディアリテラシーを学んだ。ような気がする。
だだし、高田延彦を擁した「さわやか新党」には投票しなかったので、自分を褒めてあげたい。

かつては芸術分野のはしっこに居た「マンガ」。漫画家のことを「先生」と呼ぶのは、一種の自虐を含めた漫画というカテゴリーの底上げを願った慣習だったのではないか、と考えるが、プロレスというスポーツ分野にも、エンタメ業界にも属せない日陰者が次から次に「議員先生」を目指すのは、被差別ジャンルに属する卑屈さの表れなのだろうか。
猪木のように国会に卍固めしなくても、船木誠勝のように役者に憧れなくても、あなたたちプロレスラーは、プロレスラーのままで、僕らの先生だよ。

f:id:stolenthesun:20211025160150j:plain

「頑張っている」ふりをしているだけ

まだ、参政権を持ってなかった高校生の頃。
ひと月ほど、青春18きっぷで全国を野宿しながら彷徨っていた夏休みがあった。
(その30年後も、まだ野宿して、彷徨っているとはな!絶望…)

ある日、東京中野の路地裏で、ハンドマイクを片手に街宣活動している女性立候補者を見かけた。
彼女の周囲には人っ子ひとりおらず、ときおり通る通行人に訝しげな視線を投げかけられながらも、熱心さだけは伝わる語調で、未来への希望めいた演説をしていた。

選挙に出るような人は、「理想に燃えて、実直で、誠実で偉い大人」なんだろうという幻想を持っていた僕は、ただ一人の聴衆となり、彼女の演説を15分ほど立ち聞きした。
演説中は、僕と一切目を合わせなかったその立候補者は、やがて誰にも届かない感謝の言葉を述べてマイクを置いた。

「君、いくつ?」

「高2です」

「そうか。ご両親はこちらの方?」

「いや、夏休みで遊びに東京に来てるんです」

「そうか、じゃあお父さんによろしく!とも言えないね。どうだった私のお話は?」

「よく、わかりませんでしたけど、頑張ってるなぁ、とだけ思いました」

「そうね。ハッキリ言うけどね、頑張ってもいないんだよ。私らは、この選挙期間だけ2週間だけ頑張ってるフリをしてるだけ。当選するために、この期間だけ舌を出しながら、嘘の笑顔で喋ってるだけ。あなたのご両親や、あなたの方がよっぽど毎日頑張ってるんだよ、本当の意味でね。こんな事あなたに言ってもだけど…、よく憶えておいてね」

短い会話を交わしたあと、その立候補者はトラメガとスピーカーを抱えて、近くの雑居ビルに消えていった。

よく憶えている。
彼女との会話のあと、テレビに映る選挙期間中の「雨に打たれながら」「スーツ姿のまま田んぼに入る」「涙ながらに」といった扇情的な立候補者の行動は、頑張っているフリをしているんだなと思って見るようになった。
その後当選し、議席を確保して、収入を得、利権を濫用する国会議員の不祥事を目にするにつけ、彼女が言った「頑張っているフリ」という言葉の意味がよく分かるようになった。

期日前投票する

という訳で、頑張っているフリを眺めるのはどうでも良いので、実績とこれからの政策で投票しましょう。

 

西成での安宿生活を始める前に、一旦故郷へ住民票を移した。
よって、遠隔地からの不在者投票になる。

隠しているのも面倒なので、書きますと、僕の住民票は石川県金沢市にあるので、金沢市選挙管理委員会へ「不在者投票宣誓書」を記入し送付、投票用紙を請求せねばならない。
面倒だ。

この宣誓書の書式は、統一されているので、どっかのサイトからDLして、コンビニでプリントアウトする。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000107625.pdf

面倒だ。

Web上で済ませられないので面倒である。
でも、頑張っているフリをして、面倒さを乗り越えることにする。

f:id:stolenthesun:20211025012816j:plain

この「不在者投票請求書・宣誓書」に必要事項を記入し、先週土曜日に金沢市選挙管理委員会宛てに送ると、4日後には届いたので、大阪私書箱に受け取りに行った。

僕の場合は民間の私書箱と契約しているので無事に受け取れたが、ホテル住まいや居住住所が固定されていない人の場合は、郵便局留などのサービスを利用する必要があるだろう。

f:id:stolenthesun:20211025013555j:plain

f:id:stolenthesun:20211025013603j:plain

届いた封筒は「開封すんな!開封したら無効!」的な文言がサイトに記載されていたので、封筒は開けずに近くの西成区役所へ。

www.city.osaka.lg.jp

f:id:stolenthesun:20211025015121p:plain

別室で投票する

f:id:stolenthesun:20211025015243j:plain

f:id:stolenthesun:20211025015248j:plain

午後2時過ぎに西成区役所に到着。

なぜなら昼過ぎまで寝ていたから。
期日前投票ができる時間は、8時半〜20時(直前の1週間は21時まで)
区役所前では、どこぞの政党の公認候補者が、今から頑張っているフリを始めるようであった。

天王寺あたりには、岸田文雄総理が応援演説に入るような街宣もあったようだが、西成あいりん地区付近では、ほとんど候補者を見かけない。費用対効果を鑑みたら、この辺に来る価値は薄いんでしょうね。キッシーとか来るとは思えんもの。
しかし、キッシーといえば希志あいのを思い浮かべる。岸田文雄はとくに見たくないが、希志あいのが応援に来るのなら、間違いなく見には行く。投票は多分しないけど。多分だ。

f:id:stolenthesun:20211025015607j:plain

ロビーには、投票所が設けられており、遠隔地への期日前投票がしたい旨を伝える。

f:id:stolenthesun:20211025020217j:plain

「今、係りのものが来ますのでお待ちください」とのことで、どこぞに電話をかけている。西成区選挙管理委員会は同建物内にあるので、連絡してくれているのだろう。

f:id:stolenthesun:20211025020013j:plain

f:id:stolenthesun:20211025020018j:plain

3分ほどで、紺のジャンパーを羽織った選挙管理委員会の方が現れ、役所内の面談スペースのような場所へ引率される。

f:id:stolenthesun:20211025020153j:plain

このスペース内で、係りの方に封筒を手渡すと、彼が開封

中には、不在者投票の説明と投票先(個人・比例)が書かれたペライチ、に加えて透明な袋に入った投票用紙が。

「ああ、そのビニール袋を開封しないでくれ、という意味なんですね」

「ええ、そうです。封筒自体は開封してもらっても良かったんですよ」

「すみません、よくわからなかったんで」

「いえいえ」

選管の方が、透明な袋から投票用紙と投票用紙を入れる封筒(個人・比例政党・裁判官国民審査)を示してくれ、生年月日を聞かれ本人確認される。

「私は席を外しますので、コチラで記入してください」

と、例のプラスチックのボディにペン先がくっつけられたペンを渡される。
クリップペンシル」というのだね。アレ。

 

石川県は、いかんともしがたい強大な保守王国であるので、僕の一票なんざ鼻クソな訳であるが、巷間言われるように選挙とは、
「同じクソの中から、よりましなクソを選ぶ」
作業であるので、鼻クソの価値を万感込めて、クソの名前を記入する。

f:id:stolenthesun:20211025021815j:plain

投票用紙は、二重に封かんする必要があり、まずは小さい封筒にクソを入れ、

f:id:stolenthesun:20211025022002j:plain

その内封筒を、ひと回り大きい外封筒に入れ、外封筒には投票者の氏名を書き入れる。

f:id:stolenthesun:20211025022054j:plain

比例の投票用紙も同じく。

f:id:stolenthesun:20211025022142j:plain

そして、3通目。
最高裁判官国民審査も同様に。

民意によって、最高裁裁判官を罷免できるというのは名ばかりで、制度実施以降ひとりも辞めさせられていないという全く機能していないクソなシステムである。
今回は、先ごろの「夫婦別姓を認めないことに対して『合憲」としたか、『違憲』としたか」という判断基準があるので、少しは機能するやも知れないが、望み薄である。

f:id:stolenthesun:20211025022842j:plain

この各裁判官の氏名の上に設けられた欄にハッキリと
「×」
印を記入しなければならない、という所もまたクソなシステムで、「◯」を書いたら無効になり、何も書かなければ信任となる。
この記入方法を反転させて、辞めさせたくない裁判官には「◯」を書き、無記入ならば罷免希望とすれば、結果は違うような気もする。性善説クソ食らえ。
何より、「どうせ辞めさせられないもんね」とたかをくくっている裁判官が、積極的に自らの判決の正当性をアピールしなければ罷免されてしまう、という危機感を持つようなシステムの構築と広報活動に勤しんでもらいたいものである。

もちろん僕は、たくさん「×」を書いた。
頑張っているフリすら見せてくれないような裁判官はクソ・オブ・クソであろう。

ゲームを見守る準備

3通の封かんを終え、選管の方に渡し、投票終了。

「これで、自分がすることはないんですよね?」

「そうです。確かに投票用紙はお預かりして、お送りしておきますのでご安心ください。ご苦労様でした」

 

「ふさわしい候補者がいない」ということの意思表示のために、白紙投票する。
という投票行動をしていた時期もあるのだが、
「白紙投票が一定数集まれば、再選挙」
といったような制度がなければ、結果としては「投票しなかった」ことと変わらないことに気付かされたので、やめた。一応ね、鼻クソでも投じるしかない。

何らかの事情で住民票と居住地が異なる方は、上記の方法を参考にしてください。
まだギリ間に合うのでは。

まあ、面倒で即時性に欠けるシステムですが、こんなクソなシステムを変えるのも、僕らの鼻クソを集めて、でっかいクソにしてぶつけるしかないのではないか。
そんな風にクソはクソなりに思うのでした。

f:id:stolenthesun:20211025025735j:plain

 

女装さんに教わろう!「新世界国際劇場」での映画鑑賞ルール。

この世界には、「ルール」がある。

そして、そのルールには明文化されたものと、因習や慣習によった暗黙に固定されたもの、の2種類がある。
ルールを知らずにゲームに参加することは、即ゲームオーバーを意味する。

そして時に、ルールを逸脱するあるいは、その間隙を縫う者も現れる。
ここで思い出すのは、かつてビートたけしがハワイのディスコに赴いた際、その短パン姿を見咎めたバウンサーに、「くるぶしが隠れるようにしろ」と、ドレスコードを指摘され、短パンをずり下げてくるぶしを隠し、ブリーフ丸出しで「これで、どうだ!」と突破しようとした逸話である。流石。

ジャン・ルノワールの映画『ゲームの規則』には、ルールを次々に破っていく上流社会の人々の姿が描かれる。戦火にはわれ関せず、とっかえひっかえに情交する人々。恋愛はいつだってノールール。その物語が死によって閉じられるとしても、誰かが意味のない均衡を保つために作ったルールに殉じて生きるよりは、盛大に豪快に、ルールを無視して生きる方が幸福かも知れない。
でも「ルール」は知りたい。怖いんだもの。

 

そこで、相変わらずの長めの枕のあとに本題。
一見を容易に寄せつけない空気を醸し出す
大阪 「新世界国際劇場」「新世界国際地下劇場」
での過ごし方を女装さんに聞きました。

www.cinema-st.com

f:id:stolenthesun:20211022144010j:plain

コワモテに見えて、一応最低限のルールを知って接すれば、案外イイ人。
国際劇場はそんな場所かも知れない。ぞ!
映画館での過ごし方、ルールを学ぼう!

f:id:stolenthesun:20211022144152j:plain

レクチャーしてくれたのは、以前のブログでもお話を伺った女装さんのお二方。
あゆみさん
みのりさん
です。

nishinari-lives.com

nishinari-lives.com

nishinari-lives.com

地下劇場でのルール

ー映画観てて、突然襲われたりすることはないんでしょ?

「突然襲われますよ! 攻め込まれた時に、流されてしまうような人やったら、それはそれは危険な場所。言葉か行動で、しっかり拒否の意思を示さないとガンガン入ってくるし。むしろ口だけで嫌がってる、体だけで嫌がってる、そういうプレイの一環みたいな捉え方をされるので」

「地下の客席の後方のバーに掴まって立ってたら、『痴漢OK』のサイン。女装・ゲイ・プロ、で、場所ごとに棲み分けができてます。痴漢OKの場所に立っているのに、モーションかけられて断ると揉めたり。でも、そんな時は『痴漢あかんのなら、壁際の方に立っとき!」って教えてもらえますよ。みんな意外と優しくて、ルールは教えてくれます」

ー「自分は映画観ます!ハッテンしません!」って言う時は?

「映画観に来た!向こう行け!とハッキリ言うこと。それだけです」

地上国際劇場でのルール

「1階席と2階席がありますけど、基本ハッテンは2階なので。たまーに逸脱した奴は居ますけど、1階の席で観ている分には大丈夫。基本的に、2階のサイドの席、左右でゲイさんと女装さんで棲み分けてます」

ー1階席で女装さんが観ている時もありますよね?

「だから、それで声かけに行く奴は野暮なんですよ。ちゃんと映画観てる。『今、映画観てるから大人しくしとけ!』って言ったら、隣の席でジーッとコッチ見つめてる奴もいますけど、そういう意味じゃないよ!って」

ーそうか。1階にいる女装さんはハッテンする気はないんですね

「たまにね、下着姿でうろついて後ろに行列引き連れてる人もいますけど、それは例外」

ー客席の横とか後ろに立ってたり、館内を歩き回ったりしてる人いるじゃないですか?あれは物色?

「物色ですし、下に居る間は手ェ出されへんから2階に行くまでひっついて行ってる。もしくは、喫煙スペースなら、女装さんの方がOKやったら手ェ出せる、治外法権です」

ーつまり、完全拒否の姿勢で1階で観てれば、一応安全?

「そうですね。ただ、そのルールを誰が知らせるのか?っていう(笑)」

f:id:stolenthesun:20211022144252j:plain

暗闇でのルール

「あそこ、近畿一円で滅多にかからないようなB級アクションとか結構上映するじゃないですか。調べたら、『あー、国際だけかー』みたいなことありますよね(笑)」

ー面白いプログラムはあるんで、国際行ってみたいなぁという映画好きはいる。でも、女装なりゲイなりという前情報があるから二の足踏んでいる人も多いと思うんですよね

「そうですね。でも、そこを解消するにはどうするか?っていうと… こちら側としては、恐怖を振り切って行ってくれ!と。そもそも、あそこスリとかもめっちゃ怖いですからね。カバンは持って行かない方がいいし、しっかり自衛しておかないと」

ーそういう意味では、絶対安全地帯は…

「ゼロです!(笑)」

 

映画館で流れる館内放送といえば、「携帯切れ」とか「前の席蹴るな」が常套句。
新世界国際の館内放送は、少しその上をいっており、

「映画の上映中は、カバンその他の所持品に充分ご注意ください」

「スリや暴力を見かけた際は警察官まで」

とのアナウンスが流れます。
国際劇場でしか観られないような作品をしっかり凝視しつつ、たまに周囲や背後に目を配り、なるべく手ぶらで、ハッテン行為を希望しなければ声や態度で明確に示しましょう。

f:id:stolenthesun:20211022144401j:plain

f:id:stolenthesun:20211022144424j:plain

体験としての映画館

「でもね、ホントにみんな結構優しくて、1階の席で隣に座ってきて断っているのに、それでも攻め込もうとしている奴がいたら、他の人が止めてくれたりしますから。
常連女装さんと会うために、ロビーで集まって会話するだけっていう遊び方をする人も多い。まぁ、気が向いたらちょっとオッサンからかってやろうくらいの気持ちで遊びに行く女装さんもいますし。
治安的には、必ずしも安全な場所ではないけれど、それも含めて丸ごと映画と映画館を体感できる場所だと思いますよ」

 

新世界国劇場・新世界国際地下劇場
には、明確なルールはない。
しかし、ルールを知らずに入場しても、ルールを破る輩を咎めてくれる先達たちもいる。
優しい世界。新世界。

迷わず行けよ、行けばわかるさ。
少しの勇気と強固な意思を持って、新世界へ出かけてみよう。

f:id:stolenthesun:20211022144627j:plain

 

nishinari-lives.com

nishinari-lives.com

nishinari-lives.com

 

【インタビュー】「新世界東映」支配人・佐々木隆之さん

「昔はね、この新世界あたりに20軒以上映画館あったからね。今はもう串カツばっかりやからね。その串カツにも、もうみんな飽きてきたんちゃう(笑)」

f:id:stolenthesun:20211023033543j:plain

大阪市浪速区
パリとニューヨークを併せたような景観を持つ大阪の新名所とすべく誕生した「新世界」という繁華街には、1960年代の高度成長期、多くの映画館があり、活況を呈していたというが、現在残る映画館はわずか二館のみ。

以前訪れた「新世界国際劇場」に続き、
新世界東映
の支配人の方にもお話を伺うことができた。

nishinari-lives.com

「新世界東映」は、東映旧作をフィルム上映二本立て1400円で、毎日オールナイト上映。(コロナによる時短営業時を除く)
ピンク映画の「日劇シネマ」、ゲイポルノ映画の「日劇ローズ」を併設する。

2021/10/22からは、先ごろ急逝された千葉真一の追悼特集上映がスタート。

f:id:stolenthesun:20211023032314j:plain

スクリーンに生きる役者たち

ー支配人は今おいくつですか?

「言わない(笑)
この前亡くなった千葉ちゃんより下ですわ。70代でいっぱい亡くなってるもんね。健さんも、長谷川一夫も、みんなウチでかけてる映画のスターばっかり。かけてる映画に出てる役者は、ほとんど死んでおれへん。
だからどうしても『追悼上映』が増えてしもて、次から次に亡くなってね。北島三郎も、小林旭もね」

ーえっ!その二人なくなったんですか?

「いや、亡くなってませんよ!
怒られてしまいますわ、お前待ってんのか!って(笑)
健さんの時なんか大騒ぎやったんよ。普段けえへんような放送局も来よってね」

ー普段から上映してるのに

「そうよ!」

番組編成について

「ひらめきですよ。なんも考えてへん、考えたら悩んでもうて、決められへん(笑)
色々な組み合わせをね。映画が、好きやからやっとるんですわ、好きでなかったらとっくにおれへん。ただ、ネタがだんだん無くなってきとるんでね。お客とのマッチングやから、小難しい映画やってもね、太宰治とかそんなもんやっても誰も見向きせえへん。
(客層は)やっぱり年配層でしょ、酸いも甘いも噛み分けた人たちやから、ここでかけるのは1950年代60年代の映画。
やっぱり私は人間に興味があるから、昔の役者は個性があるでしょ。高度成長で人間もダラけていって、映画もダラけてしまったんですな。
ピンクやゲイのほうは、編成してません。あれも結構大変で、もうフィルムで新作つくってないんですわ。数がないんですわ。

最近の映画は観ませんけど、『鬼滅の刃』やとかね。別に毛嫌いしてる訳やないけど、あんなん私ら5分も耐えられへん、もう帰らしてもらうわ!てなもんで」

ーもしかしたら、『鬼滅の刃』をかけたら、お客さんがいっぱい来るかも…

「絶対に来ません!
怖がってきませんわ。新世界という土地柄で」

f:id:stolenthesun:20211023033643j:plain

新世界東映の歴史

「ここの支配人になってから、25年くらいかなぁ。もう支配人になった頃には、映画は斜陽でね、倒れんように食いしばってやってきましたわ。

ここは、昭和24年に芝居小屋として始まってから、映画に切り替えて、昭和27,8年に東映館になって。
さっき言ったように、この辺だけで20何軒映画館があったんです。ここは東宝、向かいが大映、洋画も入ってきて今もある「新世界国際」さんとかね。封切館もあれば、二番館三番館いわゆる名画座もあって、当時のお金で100円もせんかった70円くらいで観られたからね。給料も月10000円くらい?梅田やったら、500円。わー高いなぁ…やけど、新世界は昔から低料金ですわ」

苦肉の策のオールナイト上映で『仁義なき戦い

ー当然、最盛期よりは客の入りは減った?

「そりゃもう雲泥ですわ。東京オリンピックくらいがピークちゃいますか。私は昔は千日前の劇場におったんですけど、『ジョーズ』とか、『エクソシスト』とか、『燃えよドラゴン』はようけ入りました。その時代(1970後半)、千日前の当時の支配人は、あかんなー客入らんなーどないしょ、ってなったら『仁義なき戦い』かけとこ言うてね。5本立てやってね、そしたら1000人くらいワーって来んのよ。
封切って、アカンかったら途中で番組差し替えるんですよ。あの頃はオールナイトやってましたからね。そうしたら、主婦連が猛反発してね。そらお母さんたちも心配やわね、夜中までロクなことせえへんから(笑)
東映がオールナイト始めたら、各社も飛び乗ってね。基本的には、9時10時に上映終わっとたんですよ。でもそれより遅やって客入るんやったら、やったらええやんけ!って」

ー新世界東映が今もオールナイトを続けているのは、理由が?

「そんなもんないですよ。ただ客入れなアカンいうだけ。ただ、オールナイトやっても、入りが良ければええけどね。人件費もかかるしね、その辺の判断は難しい」

ーここで寝たりする人も?

「そらそうですよ。外より安心やからね」

nishinari-lives.com

ーここ、新世界東映で大入りだった映画は?

「やっぱ『仁義』。あれが突出しとるかなぁ。
私はまだここにおらんかったけど、健さんの『日本侠客伝』とか、バカみたいに入ったらしいですわ」

ー『仁義』は今でも入るんじゃないですか?

「そうやね、若い人も来るかな。まあ『仁義』は好評ですわ。ヤクザ映画としては出涸らしみたいなもんなんやけどね。実録モノやから。でも、まあ今でも客は来る、ホントの出涸らしやね(笑)」

f:id:stolenthesun:20211023033719j:plain

フィルム上映のこだわり

「まあ映画館を続けていくのなら、いずれデジタルにね。でもウチでかけるのは旧作ですから。正直、デジタル信用してないんですわ。4K8Kどないしたんや!って。

フィルムはネガがあって、ポジに焼くでしょ。業界用語で言うと『こする』何遍もかけるから傷んできよるでしょ。それを上手くやるのが映写技師の腕ですよ。ウチでやられてる方は長いですよ。今の若い世代はわからんからね、後継ぎが問題やわね」

ー支配人が上映作品を決めて、東映から借りる訳ですね?

「そう、問屋さんみたいなもんです、ウチは小売。
期限切って、終わったらお返しすると。だから、全部覚えとかんとね、フィルムの状態も分かってなならん。
ニュープリントなんかしてくれませんから、お金出したらしてくれますよ。でも、そんな金あれへんもんね」

これからの新世界東映

ーこの先どれくらい続けていく?

「さぁ、分からんなぁ。
明日、潰れるかもわからん。いやホンマ!冗談抜きで。
ピンクやゲイのほうにほとんど負けてますわ。もちろんピンクやゲイが悪いとかじゃないけど、本来ならコッチも入って欲しいんやけどね」

千葉真一『直撃地獄拳 大逆転』とかは結構入るんじゃないですか?

「どうかなぁ?それより主演デビュー作の『風来坊探偵 赤い谷の惨劇 』ですわ。滅多にかかりません、貴重なね。しかも、深作欣二デビュー作でもあるからね」

f:id:stolenthesun:20211023033809j:plain

数少なくなったフィルム上映館でかかる映画たちが、軒並み「追悼特集」という形であるのは、なんだか示唆的である。

それでも、すでに「斜陽」と言われた時分から25年「新世界東映」を守り続けてきた支配人の「踏ん張り」でこれからも、絶妙なプログラムを提供し続けてもらいたい!

「明日、潰れるかも知れん!」
と言うのなら今日、観に行こう!
まだきっと「タマは残っとるがよう」

f:id:stolenthesun:20211023033857j:plain